チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 429

2021年06月18日 08時33分25秒 | 日記
手仕事の美しさに感動
40年以上着続けた絵羽の白大島が生まれ変わってというより、更に若返って帰ってきた
誰にでもあると思うが
「これ大好き」
という着物や帯がある
それを着倒すくらいに着てもなお好き

この絵羽の白大島があるために、どんな白大島を見ても欲しいと思わない。それに勝るものがない。チャ子ちゃん先生は勝手に思う

5回くらい生き洗いをし、解き洗いを二回、縫いなおし縫いなおし着てきた
この白大島は「黎明」という名をつけたもので、もう一枚気に入っていたのがありそれと交互に来ていたのだが、いつの間にか消失
誰かが身に付けていてくれるのならそれもよし

はじめは袷だったが、当時墨ぼかしの八卦をつけたら、姑や先輩たちに「へーー」と驚嘆されいい気分だった
エッヘンみたいに思っていたけど、そのころ墨ぼかしというのは法事用につけるのが主流だったのだ
「知らないというのは怖いね」
と叔母に言われたが
「あらそうかしら、すっきりしていいわよ」
と生意気さをむき出しにしていた

その後は単衣に仕立て直し、なお出番が増えた
9月に入ると、茶系や墨色系の帯を締め、春は藍や緑、黄色の帯を合わせてよく着ていた
さてこの度の解き洗い

まず大手の解き洗いに出したら、布に穴が空いていて洗えません
それで長年の付き合いである悉皆屋さんに頼んだら、黙ってきれいに洗ってくれた

その後二軒の仕立て屋さんに頼んだら「穴が開いているので」という理由で返された
こういう手間をかけながら再生してくださっていた仕立ての方が亡くなっていて、半分あきらめていた
そうだ
塩漬け繭から引いた糸は非常に繊細で仕立てがむつかしいので、選りすぐりの仕立ての先生を紹介していただいたことが在る
まずは電話をしてみよう
「送ってくださいやってみます」
天使の声
そして出来上がった白大島を見てその手当の精密さに感動、胸が熱くなった。名医だ
あらゆる病院からもう手遅れです。と宣告されたのに、なんと前より若返って帰ってきた
「布地は全く弱っていない、素晴らしい大島ですね、小さな穴があちこちに空いていましたが、出来るだけ目立たないように布あてしました。まだまだ楽しんでお召ください。私もいい勉強をさせていただきました」
というお手紙と供に、白大島が昨日戻ってきた。早速手を通して喜々と着て歩いた

その穴の原因は絣の糸が弱ることと、単衣仕立てのために、袖口に袖浦の当て布が付かず、擦り切れる、裾も同じ。昔の人がたとえ単衣でも、袖口と裾に裏地をつけていたのは、表の布の補給だったのかとーー。それだけ布を大事にしていたのだ
蚕も喜ぶ


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