チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

日本振袖始

2012年02月21日 10時26分50秒 | 日記
近松門左衛門原作の古事記の話
スサノウノミコトが疫病退治に出かけ「十握の剣」を
悪鬼の術中に陥って奪われてしまい
その剣を奪い返すために八岐大蛇を退治するお話で

その八岐大蛇の化身が岩長姫
人身御供になった美しい稲田姫を妬みの心で餌食に
そこへスサノウノミコトが現れ八岐大蛇を退治する

昨夜千秋楽の文楽でその舞台を見た

日本振袖始というタイトルは
稲田姫が熱病に罹ったとき両袖を切って熱を逃して命が助かった
というところからきているらしいが
古事記の時代は振り袖というより「ヒレ」のことを言っているのではないか
などめんどくさい時代考証は必要なく

稲田姫は綾織りの白振り袖に黒繻子の丸帯
八岐大蛇の化身岩長姫は黒繻子に金の鱗形の模様も美しい振り袖
赤い丸帯紅色の抱え帯もいい

岩長姫は
天孫降臨のニニギノミコトが美しい木花咲くや姫に目を奪われ
一緒にいた醜女の岩長姫を父親の元に返したという話もある姫
この話は更に人の命の話に展開されていくが其れはまた次ぎに

この岩長姫の人形を遣ったのが桐竹勘十郎さん
もう
「見事!」
というしかない
情緒の吉田簑助、生きて輝く桐竹勘十郎という感じ

勘十郎さん袴も鱗文様で気合いが入っていた
最近動きの激しい立て役も多いが
こういう岩長姫の役はそうそう出来る人がいないもっと見せてほしいなあ

もっとも太三味線鶴沢精治さんの補曲がいいすっきっとした音曲

さて最近の文楽の人形遣い手
右手を人形の袖口からにょきっと出す人が多い
あの美しい人形の手がいきなり大きな手に変化するのは見苦しい

さすがに
簑助さんも勘十郎さんも其れがない

昨夜は最後に登場したスサノウノミコト遣い手は
右腕がはじめから肩からすっぽり出ていてびっくり
最近はこういう演出なのだろうか
美しさを追求する人形劇にとって
何か違うと思うのはチャコちゃん先生だけかな

最後にスサノウノミコトが八岐大蛇を退治し

八州の浪も治まりて
日の本の威を振り袖の長くぞ続く君が代の直ぐなる道ぞ久しけれ

と振り袖のように長く平和な世が始まる

なるほど振り袖の役目はそういうこと
コメント
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