著者には自らを『東海道中膝栗毛』の著者十返舎一九に、あわせて大店の若旦那栄太郎に、投影し、自己戯画化した小説「手鎖心中」とい小説がある(直木賞受賞)。
膨大な五十三次と十返舎一九の資料を調べて書いた小説と思われるが、この「新東海道五十三次」ではその余勢をかって、ありとあらゆる東海道中記を精読、精査し、吟味し、そこからとっておきの旬のネタを読者に提供している。
話題は豊富。古の人は東海道(江戸の日本橋から京都の三条大橋まで)を何泊何日で歩き切ったか?。富士山の名称のいわれは?。『東海道五十三次膝栗毛』は「文学」か?。江戸の人は、旅をどれくらいしたのか?。当時の東海道を往来していた人はどれぐらいだったのか?。五人組の役割は?。江戸産の童謡の特徴は(ついでに東海道以外の諸国の方言唄)?明治の頃に入ってきた西洋文化・舶来文化が方言ではなく、漢語と結びついた弊害は?
東海道にまつわる歴史、文化、言語、はてはシモネタにいたるまで、縦横無尽に、その博覧強記をいかんなく発揮した快作。山藤章二さんのイラストとマッチして愉快きわまりない。
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