「セビリャの理髪師」パイジェッロ版に続いて、ロッシーニ版を観ました。こちらは登場する人間が多く、演出が色彩豊かで、いろいろ工夫があり、愉しめました。
ロッシーニは13日間でこれを作ったいわれ、その際にそれまでに作った作品のエッセンスをここに盛り込み、それだけによくまとまって構成が見事でした。
■第1幕第1場
時は18世紀。場所はセヴィリャの医師バルトロ邸。ロジーナに恋心をもったアルマヴィーヴァ伯爵は、彼女にむけてセレナーデを歌うが反応がありません。そこにフィガロがやってきて、カヴァンチーナ<俺は町のなんでも屋だよ>を歌います。伯爵はそのフィガロに報酬をはずむから、ロジーナ攻略作戦を手伝ってくれるように頼みます。
露台にロジーナがあらわれ、紙きれを一枚落とします。その紙切れには「後見人が煩わしく、外出もままなりません。お名前と御身分を教えてください」とありました。
若くして莫大な遺産を継いだロジーナの財産を目当にする後見人バルトロはそれを見て怪しみ、取りに行くが、紙切れは伯爵がひろってもうありあません。後見人は怒って外出してしまいます。伯爵はここで歌にたくして、「わたしの名前はリンドーロ、貧しい学生です」と名乗ります。ロジーナはそれに応えようとしますが、何者かに中断されます。伯爵はフィガロに仲介をたのみ、フィガロとの二重唱<不思議な力をもつ金属(お金のこと)のことを思う>を歌う。
■第1幕第2場
ロジーナはカヴァンチーナ<少し前に聞こえたあのお声は>で、リンドーロへの想いを歌います。バルトロが戻ってきます。そこに音楽教師バジーリオが現われ、伯爵がロジーナを目当てにこの町にきた、この町から追い出しましょう、とアリア<陰口とは>を歌います。しかし、バルトロはすぐに彼女と結婚するのが最良と提案します。
フィガロが現れ、ロジーナに、ある若者があなたに夢中になっていると告げます。ロジーナは恥ずかしがりながらも喜び、既に書いてあったフィガロに手紙をたくします。そこにバルトロが来て、ロジーナの指にインク跡をみとめ、怒りだします。ロジーナはいいのがれをしますが、バルトロはアリア<わたしのような経験豊かな先生に>を歌い、小娘を威嚇します。
そこに士官姿の伯爵が酩酊のふりをして闖入し、その夜の宿舎とする命令書を見せます。バルトロは家の宿舎割り当て免除証を見せますが、伯爵はそれを破り捨て、そこに現れたロジーナにこっそり手紙を手渡します。それをみてバルトロは怒り出し、伯爵は戦争ごっこをやるか、と暴れ出す。
フィガロが仲裁に入ってきますが時遅し、この家の喧騒に兵隊たちがやってきて、隊長は喧噪の張本人として士官を連行使用とすると、隊長に身分証明書を見せます。驚いた兵隊たちの前で、バルトロたちは再び罪のなすり合いを始めます。
■第2幕第1場
バジーリオの代理とそして伯爵が音楽教師になりすまして現れます。疑うバルトロに伯爵はその朝、ロジーナから受け取った手紙をみせ、それを宿屋で偶然手に入れたと言って渡すので、バルトロは彼を信用します。
歌の稽古でロジーナはアリア<真実の愛と不屈の愛が>を歌います。フィガロがヒゲをあたりにやってきて、隙をみてバルトロから露台の鍵を抜き取ります。伯爵はどさくさに紛れてロジーナに愛を打ち明けます。
そこに突然バジーリオが現れ一同驚くが、伯爵は素早く財布をつかませ追い返します。伯爵とロジーナは駆け落ちを約束しますが、二人の様子をいぶかったバルトロに変装を見破られ、伯爵は逃げ出します。バルトロはロジーナに伯爵の不実を説明し、怒った彼女はそれを信じてバルトロとの結婚を承諾します。喜んだバルトロは、公証人を呼び寄せます。
■第2幕第2場
真夜中、フィガロと伯爵が露台から忍び込んできます。ロジーナは不実者となじるが、伯爵が身分をあかし、誤解がとけます。そこにバルトロが呼んでおいた公証人がやってきたので、二人はその場で結婚していましました。伯爵はバルトロに彼女の財産をすべて与えるので、彼女を妻にくださいと言います。初めから財産目当てで、ロジーナに言い寄っていたバルトロはしぶしぶこれを承知し、幕となります。
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原作:ピエール・ギュスタン・カロン・ド・ボーマルシェの「セビリャの理髪師」
初演:1816年2月20日 アルジェンティーナ歌劇場(ローマ)
【配役】
アルマヴィーヴァ伯爵:マヌエル・ガルシア
バルトロ:バルトロメオ・ボッティチェリ
ロジーナ:ジェルトルーデ・リゲッティ・ジョルジ
フィガロ:ルイージ・サンボーニ
バジーリオ:ゼノビーオ・ヴィタレッリ
ベルタ:エリザベッタ・ロイセレト
フィオレッロ:パオロ・ビアッジェッリ
⇦ネーデルランド歌劇場のものではありませんが。