なかにし礼『赤い月(上)(下)』新潮社文庫、2005年
同僚の紹介です。上下巻788ページ。しかし、一気に読めました。
1930年頃、著者の両親がモデルと考えられる勇太郎と波子は小樽から満州に赴き,苦労し、そこに森田酒造を興隆させ,一時の栄華,繁栄にまみえます。
ところが、ソ連参戦,関東軍の後退以降,財産の全てを失って敗走し,引き揚げざるをえない状況に追い込まれます。波子の奔放な愛にも焦点をあてながら,引揚者の様子を、当時の満州の歴史状況のなかに炙り出した作品です。
冒頭の,関東軍・保安局の氷室啓介と愛人関係にあったソ連のスパイ・エレナ(主人公波子の嫉妬による告発書で発覚)が氷室自身の軍刀で処刑される場面(臨陣格殺),波子と子どもたちが難民として牡丹江からハルピンに軍用列車で逃げていく場面,ハルピンで波子が阿片で病んだ氷室を救い出し,彼の禁断症状をふたりで格闘しながら治していく場面が凄まじく印象に残りました。
「満州で経験した,非現実ともいうべき出来事のすべてを現実のものとして思いおこした」著者が、渾身になってエネルギーを傾注した壮大なドラマです。
読後、映画(降旗康男監督,常盤貴子主演)を観ました。原作に忠実であすが(かなり省略),原作者は脚本家がノイローゼになるくらい「ダメだし」をしたとのことです。
1930年頃、著者の両親がモデルと考えられる勇太郎と波子は小樽から満州に赴き,苦労し、そこに森田酒造を興隆させ,一時の栄華,繁栄にまみえます。
ところが、ソ連参戦,関東軍の後退以降,財産の全てを失って敗走し,引き揚げざるをえない状況に追い込まれます。波子の奔放な愛にも焦点をあてながら,引揚者の様子を、当時の満州の歴史状況のなかに炙り出した作品です。
冒頭の,関東軍・保安局の氷室啓介と愛人関係にあったソ連のスパイ・エレナ(主人公波子の嫉妬による告発書で発覚)が氷室自身の軍刀で処刑される場面(臨陣格殺),波子と子どもたちが難民として牡丹江からハルピンに軍用列車で逃げていく場面,ハルピンで波子が阿片で病んだ氷室を救い出し,彼の禁断症状をふたりで格闘しながら治していく場面が凄まじく印象に残りました。
「満州で経験した,非現実ともいうべき出来事のすべてを現実のものとして思いおこした」著者が、渾身になってエネルギーを傾注した壮大なドラマです。
読後、映画(降旗康男監督,常盤貴子主演)を観ました。原作に忠実であすが(かなり省略),原作者は脚本家がノイローゼになるくらい「ダメだし」をしたとのことです。