コスモスと紫陽花、そしてお酒が好きな窪島さんからの便りです。
信州、信濃、東信地方、上田からいい風が吹いてくるようです。
第1章では京都に住む人との縁が語られています。立命館大学の安斉育郎教授のたっての希望で「無言館」の別館が「立命館大学国際平和ミュージアム」のなかに創設されました。そこに京都在住の岡部伊都子さんの2つの文箱(ひとつはイッちゃんを思慕していた東大医学生の遺品、もうひとつにはお兄さんの遺品、ふたりとも南方で戦死)がおかれるおという話がありました。他に画家、竹内浩一、小島悠司、村山槐多にまつわる逸話もあります。
2章-4章は米国サンフランシスコの邦字新聞「北米毎日」連載の「信濃絵ごよみ」(小エッセイ)。
5章は岡部さんとの対談です。著者の飾らない人柄が出ています。41年にアウシェヴィッツのガス室に送られなくなったユダヤ人画家フェリックス・ヌスバウムのことを書いた文章(pp.204-206)、著者に「小説を書いたら?」とすすめた編集者Mさんのことを書いた文章(p.119-120)が何故か印象に残りました。
著者は父、水上勉の言葉「明日に希望をもてぬ者はもう一度過去を抱き直すしかない」という言葉に、いま、思いを深めていると書いています。(「あとがき」p.253)