真珠の耳飾りの少女(Girl With A Pearl Earring)英,2003年 100分
![真珠の耳飾りの少女 通常版](https://ec2.images-amazon.com/images/I/41ERQ2DHQFL._AA240_.jpg)
17世紀に生きたフェルメール(1632-1675)は,日本人に非常に人気のある画家です。現存する彼の絵はわずかに37点(36点という説あるいは真作は34点という説もあります),しかもそれらは,世界中の美術館に点在しています。そして、彼の生涯はほとんど知られていません。
この映画は「真珠の耳飾の少女」として知られる一枚の有名な絵画をめぐるエピソードがベース。トレイシー・シュヴァリエの原作を映画化した作品です。 絵画そのものをおもわせる色調と構図,また1665年頃のデルフト(オランダ)の美しく落ち着いたたたずまい,ストーリーにあった印象的なメロディーも含めて,イギリス映画らしい気品が漂います。
開巻は少女グリート(スカーレット・ヨハンソン)の貧しい家庭。台所で彼女が鮮やかな色のたまねぎ,ビーツ,ニンジン,キャベツを包丁で切るシーンで始まります。
フォン・ライファンはフェルメールに絵を注文するパトロンでした。しかし,ヨハネス(以下、フェルメールをヨハネスと呼ぶことにします)自身は,注文で画を描くことに関心がありません。妻のカタリーナは,夫に不満がありました。生活が汲々としているのに、なかなか絵を完成させないからです。
画を売って生活をたてることに頓着のないヨハネス。あるとき、ヨハネスは窓から差し込む光線の美しさのなかで窓掃除をしていたグリートに気づきました。これがグリートをモデルに新しい作品(水差しを持つ女)を描くきっかけになりました。彼は,グリートに顔料の調合を手伝わせたり,カメラ・オブスクラを覗かせて絵の世界を教えます。
ヨハネスの創作意欲をかきたてたグリートの存在は,やがてヨハネス夫妻に嫉妬という亀裂を生み出すことになりました。ヨハネスの絵のモデルとなったグリートは,頻繁にアトリエに出入りするようになります。
ヨハネスは,グリートをモデルに再び新しい絵を描きはじめました。ヨハネスは構図に必要と,妻の真珠の首飾りをつけるようグリートに頼みます。ヨハネスの申し出に躊躇し,「心まで描くの?」とそれを断わるグリート。パトロンにとにかく絵を買ってもらいたい義母は,妻の外出中に白い真珠の耳飾りをグリートに渡します。 ヨハネスはこれを彼女の耳につけます。
ヨハネスが彼女の耳たぶにピアスの穴を開けるシーンがあります。痛かったのでしょうか,この時に流れたグリートの涙は何とも官能的です。ヨハネスは,大きな瞳と紅い中開きの厚い唇,透きとおるような肌の少女,青いターバンを頭に巻き,振り返りのポーズをとるグリートの絵を完成させます。
事の次第を知った妻のカタリーナはヨハネスに完成した絵を見せるように迫ります。彼がキャンバスを覆っていた布切れを取ると,そこに現れたのはカタリーナの真珠の耳飾りを着けたグリートのポートレートでした。「汚らしい」と金切り声をあげ,泣き崩れる妻。 グリートにはもう居場所はありません。
ラストは,フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」の絵がアップ。原作と異なるところは多々ありますが、映画は映画として完結しています。いい映画を観たという気持ちになれます。
今から340年ほど前に描かれたこの作品は,現在,オランダのハーグにあるマウリッツハイス美術館に展示されています。
監督: ピーター・ウェーバー,原作: トレイシー・シュヴァリエ,脚本: オリヴィア・ヘトリード,撮影: エドゥアルド・セラ,美術: ベン・ヴァン・オズ,音楽: アレクサンドル・デプラ 出演: スカーレット・ヨハンソン,コリン・ファース,トム・ウィルキンソン,キリアン・マーフィ,エシー・デイヴィス,ジュディ・パーフィット |