【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

是枝裕和「そして父になる」(2013年)

2018-06-19 21:21:01 | 映画
        

 「万引き家族」を観た後、偶然にテレビで「そして父になる」が放映されました。是枝監督はここでも複雑な家族の事情をあつかっています。「そして父になる」を観るのは、2回目です。最初に観たときにあまり意識していなかった場面、セリフが印象に残りました。野々宮家の夫・良多が育った家族がそもそも複雑な事情をかかえていたこと。良多が異動を命じられた宇都宮の支所(?)で、そこの所員とのセミの一生をめぐる会話など。

 この映画は2つの家族の間での、赤ちゃん取り違えがわかり、そこにおこった人間ドラマがテーマである。

 野々宮良多(福山雅治)は建築会社のエリート社員、みどり(尾野真千子)との間に慶多という男の子いる。慶多は一人子でピアノをならい、めぐまれた環境で育ってる。自宅はスカイツリーの見える高級マンション。

 斉木家は高崎線沿線の電気屋さん。雄大(リリー・フランキー)とゆかり(真木よう子)夫婦のもとに一番上の男の子琉晴と弟と妹がいる。にぎやかで、兄弟みんなでめいっぱい泥んこになってあそぶ毎日。

 ある日慶多が産まれた病院から野々宮家に電話がかかってくる。話を聞きに行くと、二人の男の子が出産後、取り違えられたというのだ。DNA鑑定でそれがわかったという。5-6年もたち慶多も琉晴もすっかり、野々宮家と斉木家で育ったのに。愕然とする良多。

 選択の道は少ない。このまま黙ってそれぞれなかったことにするか。良多が琉晴も引き取るか。慶多と琉晴をもとに戻すか?

 実はこの取り違えは、看護婦が意図的に行ったことだった。再婚して夫との関係がうまくいっていなかった看護婦が野々宮家の幸せをねたんで、わざとしたことだった。

 野々宮夫妻と斉木夫妻は、弁護士立ち合いで話し合う。そして試しに慶多と琉晴とを互いに入れ替えてお泊り会などを行う。さて、この顛末は・・。

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是枝裕和監督「万引き家族」(2018年)

2018-06-18 21:16:23 | 映画
    

 本年度のカンヌ映画祭・パルムドール賞を受賞した是枝監督の話題作。

 「万引き家族」は7人。父親・柴田治(リリー・フランキー)と母親・信代(安藤サクラ)は今では夫婦だが、二人は信代の前の夫を殺し、治にはその前科があるようである。この父親と母親のもとに、信代の妹・亜紀と本当の子ではないがわけありで一緒に暮らしている2人の子どもがいる(それぞれ別々の家族の子)。生活の糧は、老婆(樹木希林)の年金である。この家族の話が「万引き家族」である。

 子どもたちは堅苦しい親のもとから逃げてきた少女、子育てに無関心な親の元をはなれた男の子。一番小さいさい女の子は仲の悪い無責任な親のところで食事もろくにあたえられず、それをかわいそうにおもった治がなかば誘拐してつれてきた子である。彼らは貧しいながら、それなりに人間くさい生活をしている。しかし、経済基盤は悲惨で、治は日雇労働者、女親は洗濯屋でアルバイトでわずかの収入を得ている。少女は怪しげなJKサロンで金を稼いでいる。そして常習化している治と子どもたちの「万引き」。
  
  映画の半分以上はこの家族のいろいろなエピソードを挟んで、是枝監督一流のたんたんとしたカメラワークで進んでいきます。そして、後半3-40分ぐらいから急に「展開」します。

 このような家族を生みだした日本社会の体質の脆弱さ(声高に主張するのではなく、それをじわっと感じさせる手法)で、心に涙のダムができました。




Latin (神田錦町3-28:神田学士会館内)

2018-06-05 21:06:46 | グルメ
 先日、岩波ホールに映画を観に行った帰り、近くの神田学士会館内にある洋食のレストラン「Latin」で夕食をとりました。久しぶりです。学士会館のなかなので、このレストランはあまり知られていないようで、お客は少ないです。 

 レトロなレストランです。料理は一級です。下のようなコースを注文しました。自宅ではつくれませんね。季節の食材をつかったフレンチを愉しみました


            

「マルクス・エンゲルス」(岩波ホール)

2018-06-02 10:56:39 | 映画
          

 岩波ホールで「マルクス・エンゲルス」を観ました。原題は「Le jeune Karl Marx(若きマルクス)」です。マルクス生誕200年を記念して製作されました。そして、岩波ホールは久しぶりです。

 映画はその過激な言動により妻と共にドイツ政府から国を追われる26歳のカール・マルクス(1843年)から、『共産党宣言』(1848年)が出版されるまでです。原題にあるとおり若きマルクスの思想、行動が描かれています。20代後半のマルクスです。

 映画では、イギリス・マンチェスターの「紡績工場」の工場長の息子で、労働者の働く現場の実態に関心をもち、「イギリスにおける労働者階級の状態」を著したエンゲルスの姿、そのエンゲルスとマルクスとのパリでの邂逅、ヘーゲル左派との論戦、プルードン、バクーニンとの交流と理論闘争などが生き生きと描かれています。「哲学者は世界を解釈してきただけだ。必要なのはそれを変えることである」という有名なフォイエルバッハテーゼ、「あらゆる歴史は階級闘争の歴史である」という史的唯物論(「共産党宣言」)の命題も出てきます。