【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

窪島誠一郎『「無言館」の坂道』平凡社、2003年

2018-03-15 23:56:24 | エッセイ/手記/日記/手紙/対談

長野県上田市の山王山の頂に建つ「無言館」は,戦没画学生の絵の美術館であす(10年ほど前の夏に赴きました)。 建設の発端は,館長の窪島さんの知り合いであるひとりの復員画家,野見山暁治さん(祈りの画集)との出会いでした。

 「無言館」の名称は画学生の全身全霊を賭した作品のまえでは,我々は無言にならざるを得ないということに由来するとのことです。

 本書はこの「無言館」に関わる出来事,著者の想いをまとまめたものです。全体を通じ,はにかみ屋の著者はこの館に対する自信の無さ,後ろめたさ,居心地の悪さを(「無言館」を反戦平和の砦のようにうたい,慰霊美術館としての意義や目的をさかんに協調しているけれども,それは絵を描いた当事者にとって本当に納得のゆくものなのだろうか。p.191)赤裸々に表明しています。

 「無言館」建設に寄せられた寄付金の総額は4700万円,それに課せられた贈与税が2千数百万円,名乗り出た税理士,池田誠氏の尽力で税金の1部が戻った話は興味深いものでした。

 また私設の美術館であるため現地に標識がほとんどなく来訪者に不便をかけていること,姉妹館である「信濃デッサン館」に納められる村山,松本,野田の絵にまつわることども,信濃浪漫大学が開設され好評を博していることなどのエピソードに著者の真摯な生き方が滲み出ていました。


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