夏樹静子著『女優X-伊澤蘭奢の生涯』文藝春秋、1996年。
![女優X(文芸春秋)](https://www.bk1.co.jp/bookimages/0133/013324200000.jpg)
大正から昭和にかけて、松井須磨子亡き後、華々しく新劇女優として活躍し、37歳で卒然と逝った伊沢蘭奢(新劇協会)の生涯です。
表題の『女優「X」』とは、生母(蘭奢)と幼くして生別したひとり息子の佐喜男が自分の母が女優らしいと言うだけを知っていて思慕するものの、それが誰だかわからないこと、またビュイッソン原作、サラ・ベルナール主演の「マダムX」という無声映画があり、この内容が蘭奢の経験と重なるところがあるだけでなく、実際に舞台で彼女がその演劇で演じたこと、がベースになっています。
蘭奢は女優を夢見て、夫、愛児、故郷津和野を棄て、東京に出、苦労しながら女優の道に入り、押しも押されぬ役者になったのです。
人生そのものがドラマチック、当時の新劇界の様子もきめ細かく描写されています。著者は、蘭奢の話を「別冊文藝春秋社」の高橋一清編集長から聞き、この小説の創作を思い立ったと書いています(p.291)。
そして、「処女作以来、『母と子』は私の一生のテーマと思ってきた」(p.293)とのことです。
おしまい。
![女優X(文芸春秋)](https://www.bk1.co.jp/bookimages/0133/013324200000.jpg)
大正から昭和にかけて、松井須磨子亡き後、華々しく新劇女優として活躍し、37歳で卒然と逝った伊沢蘭奢(新劇協会)の生涯です。
表題の『女優「X」』とは、生母(蘭奢)と幼くして生別したひとり息子の佐喜男が自分の母が女優らしいと言うだけを知っていて思慕するものの、それが誰だかわからないこと、またビュイッソン原作、サラ・ベルナール主演の「マダムX」という無声映画があり、この内容が蘭奢の経験と重なるところがあるだけでなく、実際に舞台で彼女がその演劇で演じたこと、がベースになっています。
蘭奢は女優を夢見て、夫、愛児、故郷津和野を棄て、東京に出、苦労しながら女優の道に入り、押しも押されぬ役者になったのです。
人生そのものがドラマチック、当時の新劇界の様子もきめ細かく描写されています。著者は、蘭奢の話を「別冊文藝春秋社」の高橋一清編集長から聞き、この小説の創作を思い立ったと書いています(p.291)。
そして、「処女作以来、『母と子』は私の一生のテーマと思ってきた」(p.293)とのことです。
おしまい。