日本の宗教の歴史を24の事件で追いながら一気に解説した本です。スタートはもちろん仏教伝来、ゴールは「お一人様化」した真如苑。
著者は宗教とは相当にスキャンダラスで(「まえがき」)、かなり危険なものである(「あとがき」)と書いています。スキャンダラスで危険なその中身が本書の全編に詰め込まれています。
24の事件ということですが、古くは蘇我氏と物部氏との相克、大仏開眼供養会、鑑真和尚の本望、空海と最澄との宗教的闘い、日蓮の宗教がめざしたもの、法然・親鸞・蓮如の関係、栄西・道元の禅宗、織田信長の蛮行、キリシタンの果たした役割、人を神として祀るということ(道長、秀吉、家康)、宗教バブルとしてのお蔭参り、廃物希釈に飲み込まれた大寺院(内山永久寺)、戦前の天理教と天皇制、靖国神社問題、新興宗教の実体、天皇の人間宣言の意味、明治神宮に関わるエピソード、現代の皇室の在り方などなどと言った感じで進んでいきます。
啓蒙書ですが、知らない世界なので、読みながらわかりにくいところ、疑問が次々でてきました。
密教とは何? 天台宗、真言宗、日蓮宗などそれらの教義のどこがいったい違うのか? 法華経とは?
その点、本書は駆け足での説明なのでこれらの疑問にきちんと答える叙述を見つけるのが難しいです。ないものねだりになってしまうのです。
日本の思想史、文化史を正確に理解するには宗教の分野の歴史的展開をおさえておかないと不十分なものになってしまいます。そのことを読後、強く感した次第です。