何故、この本を読んだかというと、先日(26日)のブログで紹介した田村秀『自治体格差が国を滅ぼす』で活性化が図られている自治体の好例として上勝町がとりあげられ、この本がその参考文献にあげられていたからです。
上勝町は1981年2月の寒波でミカンが全滅し、村としての存続が危うくなりました。お年寄りは全く元気がなくなってしまいました。限界村落とまで言われました。
著者はその2年前にそこの農協の営農指導員として就職。寒波による激甚災害を前に、この村の農業再生のために奔走します。
最初は「夏ワケギ」「分葱」の植え付けあたりから始めました。次いで、葉っぱを売る「葉っぱビジネス」を思いつきます。「がんこ寿司」でたまたま居合わせた女の子が「つま」に使われていたモミジに感嘆していたのを見かけたのがヒントになりました。
最初は数名のおばあちゃんによびかけ、葉っぱを商品にし、売り出します。「(株)いろどり」をたちあげ、著者の奮闘によって参加者が増え、売上もめきめき上昇(商品は南天、ウラジロ、笹、青モミジ、ハランなど約320種類)。現在は売上高2億6000万円。驚異的な数字です。
もちろんそこにはモノ凄い努力がありました。著者は給料のほとんどを注ぎ込んで「料亭」にでかけ、「つま」の周辺の文化を学び、年間4000時間から4500時間の労働をいとわず、夢中に仕事にとりくみました。
またそこには工夫がなければならず、人と人の絆を大切にしなければなりません。前者にかんして、著者は「場面をつくる」ことの重要性を説いています。「場面」→「価値」→「情報」→「仕組み」の「渦をつくっていくのだ(p.175)」。そして、もう一つは「気」を育てること、と言っています(p.p.165-170)。
葉っぱビジネスの成功は、著者とおばあちゃんたちのなみなみならぬ努力の結晶です。著者は太りすぎ(料亭での食べ過ぎ?)と過労がたたって、痛風に苦しみ、心筋梗塞で生死の間をさまよいましたが、上勝町は見事に再生しました。
お年よりは元気よく健康的に働き、パソコンを使いこなして注文にあわせて出荷し、病気を知りません。
Uターン、Iターンが始まり、限界村落の汚名も返上。上勝町への視察者はひきもきらない状態です。
テレビでの紹介は「めざましテレビ(フジ)」「ひるどき日本列島(NHK)」「奇跡体験!アンビリーバボー(フジ)」「NHKスペシャル」「日本菜発見(テレ朝)」「遠くへ行こうよ(日テレ)」といった具合です。日本にこんな村があったのか。面白くて一気に読めました。