田中重雄監督『東京おにぎり娘』大映東京/カラー/91分
・脚本:長瀬喜伴
・撮影:高橋通夫
昨年の暮れから新年にかけて、「ラピュタ阿佐ヶ谷」で、若尾文子さんの登場する映画を特集で上映しています。第1回目は田中重雄監督の「東京おにぎり娘」です。
若尾さんは、わたしが高校生の時代に「くらくら日記」(坂口安吾夫妻)というテレビ番組が放映された頃から注目していた俳優さんです。
この映画、映像のなか、ミシンがあったり、火鉢があったりの雰囲気、そして人情にも昭和の香りがします。
話の筋は、以下のとおりです。
若尾さん扮する、直江まり子はテーラー(新橋のあたり)を経営する父親、鶴吉(中村鴈次郎)の娘。「大阪生まれの江戸っ子」を自認する鶴吉は昔堅気の仕立屋で腕はあるのだけれど、頑固一徹。オーダーの仕立てだけで店を続けていくだけでむずかしくなっていて、注文も減り、行く先が危うい。開店休業状態です。
周囲は、まり子の結婚問題にやきもきしています。おばさん(沢村貞子)たちはまり子を白井三郎という青年(川口浩)と結婚させようとしますが、まり子と三郎の本人どおしはいま一歩ふみきれず、仕切り直し。
まり子は一大決心をして、「テーラー直江」の一階を改造し、おにぎり屋にしてしまいます。お店を出すにあたっては、村田幸吉(川崎敬三)という新しいタイプのテーラー・ムラタを起業した青年で、まり子に気があるようす。実は幸吉は、かつて父と大喧嘩をして追い出されたという経緯があった。村田は、恩返しのつもりで出資するに及んだ様子です。
まり子のはじめた、おにぎり屋は大繁盛。ちゃきちゃきの若尾さんは綺麗で、魅力いっぱいの立ち居振る舞いです。幼馴染でまり子を「尊敬」する三平(ジェリー藤尾)も、一緒にはりっきって働いています。
ここで大変なことが発覚します。父の鶴吉にかつて女がいて、その娘・みどり(叶順子)が上京し、三郎のいる新宿の劇場で踊り子として働いているとの情報が入ります。
そうこうするうち、まり子は将来を考え、三郎との結婚を決心します。しかし、意に反して三郎はくだんの娘・みどりとの結婚を考えているとのこと。
まり子はやぶれかぶれになって酔っ払い、大トラ化し、周囲をあわてさせ、心配させます。
まり子をめぐる3人の若い男性(三郎、幸吉、三平)。そして父、おばなどの縁戚関係者の想い。昭和の下町にかつてあった人情が息づいています。
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