【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

入江保則『その時は、笑ってさようなら-俳優・入江保則 余命半年の生き方』ワニブックス、2011年

2016-06-23 20:49:07 | エッセイ/手記/日記/手紙/対談

        

  共感をもって読みました。

  長寿社会になり、男女とも長い人生を過ごす人が多くなりました。一般的にはそう言えますが、個人差があるのも事実です。90歳を超えても非常に元気な人もいれば、70歳ですっかり老人という人もいます。「平均」があまり意味をもちません。


 長生き人生になれば、病気に罹ることも増えます。ガンを患う人も少なくありません。かつてはガンは不治の病でしたが、医学の進歩で治療で治る人もいます。そのようなこともあって、ひと昔前は、ガンの告知は控えられていましたが、いまは簡単に「ガンです」と言われるようです。ガンとどう向き合うかは、今後、一人ひとりの課題になってきています。

 一番怖いのは、ガンと診断され、ぼやぼやしていると医者の言いなりになり、検査入院に始まってガン治療に追い込まれ、「ガンと戦わされて」苦しんで死んでいくケースです。「余命三ヶ月」を宣告され、有無をいわせず治療のラインののせられて、なくなるというのが後をたちません。医療サイドから見れば、それがお金(儲け)になるのです。


 この本はガンを宣告されたけれども、それを受け入れ、延命治療はしないで生きた人のいわば「ガン体験記」です。直腸ガンがみつかったけれども、それを受け入れ余分な治療はせず、生まれてきたからにはいつか死ぬのだから、それとつきあいながら生きていく決意をしました。そのことを公にしたことが話題になり、取材を受けたり、テレビ出演をしたり、とうとう本にまでしてしまったというわけです。「自主葬」の提言をしています。自分でテープに吹き込んだ「般若心経」を冒頭に2度ほど流して、近親者のみのお葬式です。

 著者は俳優です。苦労した甲斐があり、運がひらけて、NHKの大河ドラマに出演したりしました。2回の離婚、最後は独居老人でした。

 子どもの頃、戦争さ中で、死んだ人をたくさん見たこともあり、独特の人生観、死生観をもっているようです。諦念というのでもなく、あがくわけでもなく、事態をそのまま受け入れ、運命によりそって生きるという哲学です。それに「末期ガン」患者の目をとおして、結婚とは、死とは、いまどきの女性、いまどきの男性などと綴っています。

 また、俳優ですから、日本のいい映画(「浮雲」「七人の侍」「重森君上京す」)、外国のいい映画(「第三の男」)についても熱く語っています。末尾に「余命半年の生き方」が日記風に書かれています。

 


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