goo blog サービス終了のお知らせ 

引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

引頭佐知(いんどうさち)の料理ブログ

心に残るだしとり教室の思い出NO.1 成人病のデパートなんです。

2012年03月11日 | 出汁教室エピソード

Img_1518

拙著発行を記念して、かつてのだし取り教室を

ふたたびアップします。

2004年,2回目の教室です。

だしを取って料理する教室

「だし」の味を1人でも多くの方に、広めたい

そのだしでつくった料理がどんなにおいしいか、

あじわっていただきたい、

そんな思いから、教室を催しました。

昆布と削りかつおの一番だし。

昆布の旨みは、グルタミン酸、

削りかつおは、イノシン酸

それぞれに旨味はありますが、

両方合わせて出汁をとったとき、

なんと旨味は7~8倍となります。

このだしを一度でも味わえば、

もう一度味わいたくなるし、

料理に興味がわき、料理がおいしくかわり、

暮しが変わるはず、と思ったからでした。

.

さて、わたしは、どんな教室にうかがっても、

よほど強制されない限り、

いわゆる高い壇には登らず、

生徒さんと同じフロアに立ち、料理をします。

その土地土地の普段の暮らしぶりが聞けるからです。

.

心に残る、だしを取って料理する教室のエピソードVo.1

仙台から10数分の、東北本線岩沼での教室。

生徒さんは、12~3人くらいの女性に混じって、

サラリーマン風の男性お1人。

女性のみなさんは、毎月その会場が主催している料理教室に

参加されている方達で、「だしを取って料理する」というのは、

はじめてなので、申し込まれたとのことでした。

<献立>は、

きゅうりの生姜酢、

若竹煮

筍の炊き込みごはん、

筍の絹皮の吸物。

*絹皮ーー筍の上部のやわらかい部分。

.

「センセ、もっと醤油!醤油!」、

だし取りをしているときは、みなさん静かでしたが、

調理がはじまると、

女性のみなさん、わたしの調味料の量にご不満。

そのご不満の最高潮は、筍ごはんのときでした。

「あららーー、そんなもん?」

「あららららら、そんなちょっとの醤油?」

「あーー、だめだぁーー、父さんも息子も箸つけね」

「なーー」

「あーー、食わね、な」

「センセ、もっと醤油入れて茶色にしたら?」

もう、文句タラタラ。

「こら、うまぐね、な」と、

1人の女性は、退室されました。

.

しかし、渋々ながらも、いざ、食べはじめたら、

「・・・・・・うめィ、な」

「うん、うめィ、なんでこんなに色が薄いのにうめィんだ」

「だしでねぇが」

「だしでうめィんだな」と。

全員の方からおいしい、と言っていただけました。

食べ終るころは、

「センセイ、今度いつ来る?

次は、漬物もって来っから」と、和気あいあい,

喜んでいただけました。

.

終了後、前述の男性が残ってらして、

「今日は本当にありがとうございました」と改めて

ご挨拶いただき、

「いえいえ、お疲れさまでした」と顔を合わせたら、

眼に涙が浮かんでいます。

.

「成人病のデパートなんです」

「ちょっとお礼を言いたくて、残りました。

わたしは、今50を過ぎたばかりの00と申します。

若くして妻を亡くし、寂しさを紛らわすために、

乱暴な食生活をしまして、わたしの身体は、

40過ぎから高血圧をはじめ、いろんな成人病の

デパートなんです。

外食は、塩分が多いので、

いい加減な料理ですが、なるべく自炊してます。

医者からは、塩を減らせ、醤油を減らせといつも

言われています。

でも、塩と醤油を減らしたら、ちっともうまくなくて、

食事の楽しみがまったくありません。

仕事もありますし、料理のことだけを考えている

わけにもいかず、

なにかいい方法はないか、なにかあるんじゃないか、

とさがし続けていました。

.

「塩と醤油をへらせ」としか言わない医者と栄養士。

検診のたびに、医者は

「もっと塩と醤油を減らせ」としか言ってくれません。

先日は、

「まだ減らしてないじゃないか、このままいくと死ぬぞ、

死んでも知らなねぇぞ」と言われました・・・・・・。

なにか、糸口はないものか、

「どんなことでもやるから」と、

必至になって医者に相談しても、同じことしか言ってくれません。

「塩と醤油を減らせ」こればっかりです。

病院の栄養士もそうでした。

.

ほんとうに、もう、精神的にも行き詰まってしまって、

情けないことを言うようですが、

最近は家に帰っても1人ぼっちという実感が強くなり、

さびしくて、不安で、

もう、毎日に希望がもてなくなってました。

.

「おふくろは、煮干でだし,とってたな」

そんなとき、センセイの広告をみつけたんです。

タイトルの<だしを取って料理をする>。

だしは、インスタントのダシ××××を使ってますが、

昆布とかつおで取る<だし>なんて考えたこともなかったんです。

タイトルをじーーっと見ながら、

そういえば、料理には「だし」を使うものだったな、

おふくろが煮干しで取ってたな、うまかった、と思い出し、

教室に出席すれば、なにか、ヒントがもらえるかもしれないと、

今日は参加しました。

.

「だしをつかえば、調味料も少なくてすむんですよ」

あんなに少しの醤油で炊いた筍ごはん、吸い物、

煮物、初めて食べました。

出汁がうまいから、塩も醤油も少しでいいんですね。

筍の煮物も、吸物もぜんぜん物足りなくなかったです。

ほんとにおいしかったです。

インスタントのだしとは全然ちがってました。

食べながら、ドキドキして、ほんとに嬉しくなりました。

答えがみつかりました。

ありがとうございました」

顔をくしゃくしゃにして、涙が落ちそうな眼で、

にっこり笑って退室されました。

.

見送るわたしも、

後姿のその方の青いストライプのシャツが

よろけて太く見えました。

そしてそのとき、

だしは、ほんとうに必要とされている、と確信したのでした。

.,

.

.

コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする