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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経済の危機 識者は語る③ 富の再配分に活用

2020-06-13 07:26:21 | 経済・産業・中小企業対策など
経済の危機 識者は語る③ 富の再配分に活用
前駒澤大学教授 小栗崇資さん

今のようなときこそ、大企業は、国民の生活保障(雇用保障や休業補償)のために内部留保を活用すべきです。
しかし、企業が内部留保を取り崩すことができない制度上の問題があります。会社法では、内部留保(利益剰余金)は株主のものと解釈されます。株主の権利として剰余金への請求権があり、剰余金から配当が行われます。他方、非営利の組織では、剰余となった積立金を取り崩して、非営利目的の事業に使うことができます。国民が貯金を下ろして使うのと同じことが、非営利組織では可能です。
企業では、それは認められません。仮に、蓄積分の内部留保を取り崩して、増加分の収益に戻すことができても、それに利益として再び課税されます。また、毎期の業績(損益)を適正に測るという会計の原則をも崩します。現状は、いったん内部留保となったものを取り崩すのは難しいのです。



「内部留保で賃金上げろ」「新型ウイルス感染拡大から雇用と生活を守ろう」と呼びかける人たち=3月5日、東京・新宿駅前

非常時の対策
ですが、国民生活の危機には、非常時の救国策が求められます。社会的に要請される支出には、非営利組織のように、内部留保を取り崩して充てることを認めるべきです。取り崩しによる戻し益を使って、新型コロナ対策費に同額を充てることができれば、収支相応なので、企業は課税もされないし、損益計算にも響きません。正規労働者の賃金・雇用保障だけでなく、非正規の雇用に対する保障や取引先・下請けの事業支援などに、内部留保の取り崩し益をコロナ対策費として有効に使えれば、企業の社会的責任を大いに発揮します。
これは、企業のあり方を変える大きな一歩となります。株主中心の企業から、すべての利害関係者のための企業への大きな転換です。コロナ危機収束後に、再び新自由主義的な経済ではなく、国民主体の新しい経済へと変えていく方策の一つとして、内部留保の社会的活用の枠組みをつくることが重要です。

内部留保課税
企業の自発性に期待する策の他に、内部留保への課税も考えられます。コロナ禍に対する緊急支援策等には、多大な財源が必要です。コロナ禍が去った後の、所得税・法人税への特別賦課や資産課税の導入などが論議されていますが、内部留保課税も検討すべきです。
内部留保課税は、1929年大恐慌後のアメリカで、経済復興をめざすニューディール政策の一環としてつくられました。近年では、台湾や韓国でも実施されています。これらは、毎期の内部留保の増加分への課税ですが、今は非常時として内部留保の蓄積分に臨時に課税して、偏在する富を破綻寸前の雇用や経営に再配分してはどうでしょうか。
仮に、234兆円の大企業の内部留保に20%の課税をした場合、さまざまな控除や資金繰りについての考慮(分割納税等)が必要ですが、単純計算では47兆円の税収が生まれます。これに、富裕層の所得への特別課税を組み合わせれば、50兆円以上の財源を期待できます。かなりの負担ですが、富を分かち合い助け合うことができれば、国民は一致協力して新型コロナとたたかうことができるでしょう。
(この項おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年6月11日付掲載


企業は株主への責任という点で、簡単に内部留保を取り崩すことはできないんですね。
でも、非常時の対策、社会的に要請される支出として、認めるべきです。
コロナ後は、社会の仕組みが変わったと言えるように。
コメント
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