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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革① 学外者に学長超える権力

2024-04-25 07:13:24 | 政治・社会問題について
陥穽(かんせい)ファンド 危ない大学改革① 学外者に学長超える権力

10兆円の大学ファンドの支援を受ける国際卓越研究大学(卓越大)の認定が秋に迫っています。
世界と伍(ご)する大学を「異次元」の枠組みで支援するという甘い言葉の裏で、大学を国家と大企業の支配下に置く仕掛けづくりが進んでいます。巨額の支援金で大学を落とし穴へ誘い込む「陥穽(かんせい)ファンド」の姿を5回連載で追います。(佐久間亮)

「いまでも大学の意思決定に学生の声は反映されないのに、事業成長を追求する学外者の発言権ばかりが強まれば、事業成長に結びつかない学生の福利厚生は、いま以上にひどくなるのではと危倶します」
卓越大の第1次募集で唯一候補として残った東北大学の学生(4年生)は、そう語ります。世界と伍するといいながら、東北大では学生数に比べ授業数が少なく、教室から学生があふれる授業もあるといいます。キャンパスがある仙台市は昨年、真夏日が過去最高の66日を記録しましたが学生寮にはエアコンがありません。




拒否権まで付与
2004年の法人化以降、国立大学運営費交付金が約1600億円も削られたところに物価高が直撃。東北大でも寄付に頼らなければ100年間受け継がれてきた貴重な植物標本すら守れない厳しい財政状況です。
不安を強めたのが、3月に開かれた政府の総合科学技術・イノベーション会議有識者会議で文部科学省が示した卓越大の新たな認定要件です。なかでも大学関係者を驚かせたのが、学内構成員のみの賛成で学内の重要事項を決定できない仕組みの構築です。文科省は具体的に▽卓越大の最高意思決定機関である「合議体」の委員の半数以上を学外者とする▽合議体の学外委員に拒否権を与える―などの案を示しました。
政府が学外委員に想定しているのは財務戦略に知見を有する人物です。大学に愛着を持たず財務にのみ関心を持つ学外委員に権力が集中すれば、全国の国立大学で進む学生寮や職員住宅の廃止と商業施設への転用、学生や職員向けの診療所閉鎖といった事態が加速しかねません。
大学ファンドは税金など公的資金10兆円を株や債券に投資し、その運用益で大学に補助金をだす構想。補助金が支給されるのは毎年3%という極めて高い事業成長目標を政府に誓い、卓越大に認定された一握りの大学だけです。

企業の下請けに
3%の事業成長に向けた東北大の「体制強化計画案」には、大学ファンドから補助金が支給される25年間の目標として企業資金受入額11倍化、企業との共著論文6倍化などの数字が並びます。大学予算に占める企業資金の比率は現在の1割から3割に高まる計算です。
企業資金への依存が過度に強まれば、大学は「真理を探究」(教育基本法)する場から企業の下請けへと変質しかねません。
岸田政権は昨年強行した改悪国立大学法人法ですでに、学長と学内構成員を中心とした役員会が持っている大学の中期計画や予算編成などの審議・決定権を、合議体設置大学では合議体に移管すると決めています。
文科省の3月の提案はさらに、体制強化計画の議決権と同計画の執行状況の監督権を合議体に与えることを卓越大の認定要件にすると明記。学長選考に当たって「学長に求められる知識、経験、能力」の基準を示すことも合議体の役割に加えました。ときに学内の重要事項に関する拒否権を持ち、学長の資格基準まで示す。卓越大では学長を超える権力を学外委員が握ることになります。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2024年4月23日付掲載


不安を強めたのが、3月に開かれた政府の総合科学技術・イノベーション会議有識者会議で文部科学省が示した卓越大の新たな認定要件です。なかでも大学関係者を驚かせたのが、学内構成員のみの賛成で学内の重要事項を決定できない仕組みの構築。
企業資金への依存が過度に強まれば、大学は「真理を探究」(教育基本法)する場から企業の下請けへと変質しかねません。
学長選考に当たって「学長に求められる知識、経験、能力」の基準を示すことも合議体の役割に加えました。ときに学内の重要事項に関する拒否権を持ち、学長の資格基準まで示す。卓越大では学長を超える権力を学外委員が握ることに。

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