きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

通常国会182日 共闘の力と共産党① 野党共闘 改憲論議吹き飛ばす

2018-07-26 20:07:39 | 政治・社会問題について
通常国会182日 共闘の力と共産党① 野党共闘 改憲論議吹き飛ばす
改ざん、隠ぺい、ねつ造、虚偽答弁…。歴史上かつてない“異常国会”となった通常国会が22日、閉会しました。32日間の会期延長を含め182日間。国民主権と議会制民主主義を壊す安倍政権の暴走に対し、野党があらゆる場面で共闘。日本共産党の論戦が力を発揮し、安倍政権をぎりぎりまで追い詰める国会となりました。

1月22日から始まった通常国会は、安倍晋三首相の当初の思惑とは大きくかけ離れ、「数の力」におごる安倍政権の根幹を揺さぶる事態が相次ぎました。
安倍首相は1月4日の年頭会見で、「憲法のあるべき姿を国民にしっかりと提示し、憲法改正に向けた国、民的な議論をいっそう深めていく」と宣言。通常国会に自民党の改憲案を提出する意思まで示しました。
ところが、通常国会の論戦が始まると事態は一変。今国会の目玉として打ち出した「働き方改革」一括法案の柱だった「裁量労働制」「残業代ゼロ制度(高度プロフェッショナル制度)」にかかわる労働時間についての厚生労働省のデータねつ造が次々と判明しました。さらに、森友学園への国有地売却をめぐる財務省の決裁文書改ざん、加計学園の獣医学部新設でも安倍首相と加計孝太郎学園理事長の面談を記した愛媛県文書が発覚。「存在しない」と国会で答弁してきた陸上自衛隊イラク派兵部隊の「日報」が存在し、防衛省・自衛隊が1年以上にわたって隠ぺいしていた事実も明らかになりました。
どの問題も、国民主権と議会制民主主義を破壊する前例のない異常事態です。当初、安倍首相がもくろんでいた改憲スケジュールそのものが白紙に戻り、「働き方改革」一括法案からは、裁量労働制の拡大が丸ごと削除されるところまで追い込まれました。



国会共闘が発展するなかで繰り返し開かれた野党合同ヒアリング(左上)と野党合同院内集会(左下)。安倍内閣不信任案の賛成討論に立つ日本共産党の志位和夫委員長(下)

自民議員の嘆き
こうした事態に、自民党議員からは「狙いは完全に吹っ飛んだ」「もう憲法どころではない」という嘆きも。安倍首相目身も通常国会閉会直前の7月20日の党代議士会で「この国会を、政府は『働き方改革国会』と銘打ったが、大変厳しい国会となり、迷惑、苦労をかけた」と苦渋をにじませました。
安倍政権をここまで追い詰めた背景には、安倍退陣を求める市民のたたかい、野党の国会共闘の発展とともに、国会論戦をリードしてきた日本共産党の活躍があります。
森友公文書改ざん問題では、「朝日」が第1報を報じた直後の3月2日の参院予算委員会で、小池晃書記局長が、改ざんの調査をかたくなに拒む政府を追及。
日本共産党には、「国会の追及を見ていると資料を安心して託すことができる」と次々と内部告発が寄せられ、その国会論戦はメディアでも大きく報じられてきました。
他の野党が野党合同ヒアリングで、日本共産党が暴露した内部資料をもとに政府を厳しくただす場面もしばしば。こうした力が財務省に改ざんを認めさせ、改ざん前文書、森友側との交渉記録を国会に提出させる原動力となり、政府が隠し続けた真実をあばく成果をあげました。


緊密な協力体制構築
「野党の国会共闘は、画期的な前進をとげた」―。日本共産党の志位和夫委員長は20日の党議員団総会でこう述べ、野党が結束して安倍国政を動かししました。
野党の緊密な協力体制を築く足場となる野党国対委長連絡会(野国連)は、今国会から毎週水曜日に定例化され、野党間の重要な情報交換や意思統一の場となってきました。


野党合同ヒアリングの主なテーマと回数
茂木敏充経済再生相秘書らの選挙区での線香配布問題1回
「働き方改革」の虚偽データ疑惑など41回
財務省の森友学園決裁文書の改ざん問題25回
加計学園疑惑16回
イラク日報隠ぺい問題6回
文科省による前川喜平前事務次官の授業介入問題5回
財務省の福田淳一前事務次官のセクハラ問題13回
カジノ実施法案問題5回
児童虐待防止対策3回
文科省局長の受託収賄疑惑2回
古屋圭司衆院議院運営委員長のパーティー券過少申告疑惑1回



通常国会(1月22日~7月22日)での主な出来事
2月14日安倍晋三首相が労働時間データで述べた答弁を撤回・謝罪
28日安倍首相が「働き方改革」一括法案から裁量労働制拡大を全面削除すると表明
3月2日「朝日」報道で森友学園の国有地取引の決裁文書改ざん疑惑が発覚
9日財務省前理財局長の佐川宣寿国税庁長官が辞任
12日財務省が改ざんを認め、改ざん前文書を公表
16日文科省が、前川喜平前事務次官が行った中学校授業の報告を求め、圧力をかけた教育介入問題が発覚
27日衆参予算委員会で佐川氏の証人喚問
4月2日防衛省が「存在しない」としてきたイラク派兵部隊の日報が見つかったと発表
10日加計学園の獣医学部新設問題で学園、愛媛県、今治市側と面会した柳瀬唯夫元首相秘書官が「本件は、首相案件」と発言したとの愛媛県文書が判明
16日防衛省がイラク日報約1万5千ページを公表
24日財務省の福田淳一事務次官がセクハラ疑惑で辞任
5月10日衆参予算委員会で柳瀬氏の参考人質疑
21日愛媛県が参院に、安倍首相が加計学園の加計孝太郎理事長と15年2月25日に面会し、学園の獣医学部構想について「いいね」と応じていた行政文書を提出
23日財務省が森友側との交渉記録と改ざん前決裁文書全文を国会に提出
23日防衛省がイラク日報調査報告書を公表
6月4日財務省が改ざん問題での調査結果を公表
19日加計学園の加計理事長が記者会見し、安倍首相との15年2月25日の面会について「記憶にも記録にもない」と否定
20日自民、公明が32日間の会期延最を強行議決
29日自民、公明、維新が「働き方改革」一括法の成立強行
7月18日自民、公明が参院定数6増の改定公職選挙法の成立強行
20日共産、立憲民主、国民民主、無所属の会、自由、社民の6野党・会派が安倍内閣不信任決議案を共同提出(自公維が否決)。
自民、公明、維新がカジノ実施法の成立強行


大きな威力発揮
野党が合同で省庁担当者から聞き取りを行う「野党合同ヒアリング」も新しい取り組みとして定着。“第二の予算委員会”とも呼ばれ、「働き方改革」でのデータねつ造疑惑、森友決裁文書改ざん問題をはじめ11テーマで118回開催され、安倍政権を追い詰める大きな威力を発揮しました。
さらに、野党合同院内集会は、国会の節目節目で計8回開催。野党の結束が、裁量労働制の方が一般の人より労働時間が短いとした安倍首相答弁の撤回・陳謝、財務省の佐川宣寿前理財局長の証人喚問を実現する上で大きな力となりました。
政策面でも野党共闘は前進しています。
6野党・会派は、共同で2018年度予算の組み替え動議を提出。野党の共同組み替え要求は03年予算以来です。
また、被災者生活再建支援金の上限額を300万円から500万円に引き上げる被災者生活再建支援法改正案をはじめ、全原発の速やかな停止・廃炉を掲げた原発ゼロ基本法案など20本の法案を野党共同で提出。さらに、西日本を中心にこの30年間で最悪の被害をもたらした豪雨災害にたいしては、6野党・会派の党首がそろって首相官邸に行き、行政府、立法府一体で、災害対応を最優先に取り組もうと要請しました。

国民の怒り代弁
6野党・会派は通常国会の最終盤の20日にも党首会談を開催し、安倍政権への多くの国民の怒りを代弁して、安倍内閣不信任決議案を共同提出。同日の衆院本会議の賛成討論で、志位委員長はこう決意を表明しました。
「市民と野党の共闘をさらに大きく発展させ、安倍政権を倒し、憲法が生きる新しい政治をつくるために全力をあげる」
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年7月23日付掲載


一覧にしてみると野党合同ヒアリングはこんなにもあるんですね。
行政当局との法案の中身や疑惑問題で突合せ。こちらは議席による時間制限はないからね…
やられっぱなしの国会と思いきや、改ざんを認めさせたり、無いと言っていた文書が出てきたり…。与党のがわのボロがゾロゾロ出てきた国会でもありました。
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安倍政権の「水産改革」③ 財界の意 受けた政策

2018-07-23 10:15:32 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍政権の「水産改革」③ 財界の意 受けた政策
政府の「水産政策の改革について」は、養殖・沿岸漁業の海面利用制度を見直すとしています。養殖業で規模拡大や企業の新規参入を円滑にする方向です。
都道府県に養殖のための新区画を設定させ、「沖合等に養殖のための新たな区画を設定することが適当と考えられる場合は、国が都道府県に指示する」といいます。これにも大きな問題があります。
養殖のための新たな区画の設定は、管理主体である都道府県が自主的に判断すべきものです。にもかかわらず、海区漁業調整委員会の審議など都道府県内の調整を無視して、国が一方的に「指示」し、企業の新規参入を推し進めようとするのは、「世界で一番企業が活躍しやすい国」を目指すアベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の漁業版です。財界や大企業の意向にそったものです。
その上、漁民代表が都道府県(一部複数)単位で参加している海区漁業調整委員の公選制度も廃止しようとしているのです。



漁業者から要望書を受け取る日本共産党の(左から)紙、藤野、高橋、仁比、田村の各議員=6月25日、衆院第1議員会館

漁協弱体化図る
「水産政策の改革」は、水産物流通について、「成長産業化をはかるためには、輸出に力を入れ、竸争力のある流通構造を確立する」として、流通インフラの大規模産地への集約化、情報通信技術の活用などを打ち出しています。大半の漁業者に無縁な輸出のための施策であり、漁業者の所得増大や、漁村の活性化に政府が責任を果たすという観点はありません。
漁業協同組合(漁協)の位置づけも大きく変えられます。区画漁業権や共同漁業権など県が漁業権を付与する場合に、法律(漁業法)で漁協に優先権を与えていた法制項目を廃止します。漁業権を国と都道府県に集中するものです。
漁獲可能量(TAC)規制、個別割り当て(IQ)など強制的な漁業規制を強め、漁獲量の削減を押し付ける一方で、漁業者所得の向上の責任を漁協に負わせようとしています。また、漁協の役員に「販売のプロ」を選任することや、信用規模の大きい漁協に対し、全漁連監査に代えて、公認会計士監査を導入することを強制するなど、漁協の自主性を弱めようとしています。

多面的な役割を
大規模化や企業参入、規制緩和は、漁業者の要求ではありません。大型漁船による巻き網漁など大臣許可漁業における漁船のトン数規制の撤廃、区画漁業権における漁協の優先権の廃止、大規模養殖業への企業参入の促進、IQ方式の導入などは、財界の意を受けた規制改革推進会議が求めたものでした。
「水産政策の改革について」に対しては、著名な水産経済学者50人が「漁業制度改革に反対する声明」を出すなど、広範な漁業関係者から批判や懸念が表明されています。
日本の漁業には、資源の減少、漁業者の高齢化、漁村の衰退など多くの課題があることは確かです。しかし、「水産政策の改革」では、「沿岸域を総合的に活用し、公益的な多面的機能を担ってきた漁業者集団と漁協が弱体化され、漁村がもっぱら個別利害の場になるなどの弊害がさけられない」(水産経済研究者の声明)ことは明らかです。
圧倒的多数の漁業者を不安に陥れている「水産政策の改革」は、抜本的に見直すべきです。法制化はやめるべきです。
日本の漁業は、全国の沿岸、離島で多様な形態で営まれています。それらが、資源の適切な管理と持続的な漁業生産によって、国民に対する水産物の安定供給に役割を果たし、漁村の活性化や国境維持など多面的な役割を発揮できる内容に、水産政策を転換することこそ国民的な課題です。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年7月21日付掲載


効率化ということで、大規模漁業者を中心に支援するのではなく、日本の津々浦々で地域の個性ある水産物を支えている漁業者こそ支援しないといけない。
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安倍政権の「水産改革」② 大規模化へ支援集中

2018-07-21 19:05:34 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍政権の「水産改革」② 大規模化へ支援集中
政府の「水産政策の改革について」は、漁獲可能量(TAC)制度の対象にする魚種を早期に漁獲量ベースで8割まで広げるとともに、「準備の整った魚種から順次、個別割り当て(IQ)を導入する」「規模拡大と新規参入のため、漁船の譲渡と合わせた個別割り当ての(漁業者同士の)移転(譲渡)を可能に」することを打ち出しました。

競争力押し付け
これまで、漁業種類ごとに都道府県へ割り当てていたTACを、個別の漁業者へ割り当て、譲渡も可能にするというのは、国が資源評価やTACを決める権限を持ち、大規模化を推進する「構造改革」の方針に沿って、力の強い漁業者や業界に政策支援を集中しようとするものです。
魚種、漁法の種類が多い日本の沿岸漁業は、歴史的に、漁業者が共同して地先の漁場を管理・利用し、資源管理を行ってきました。漁業協同組合(漁協)や地域の漁業者による自主的な資源管理組織が1738(2008年漁業センサス)あり、資源の管理、漁場の管理、漁獲の管理を行っています。駿河湾のサクラエビ、秋田県沖のハタハタなど各地で多くの成果をあげています。
これらの条件のもとで、日本の資源管理は、あらかじめ隻数、トン数等を規制する参入規制(インプットコントロール)、小型魚などの捕獲を避ける編み目規制などによる資源維持(テクニカルコントロール)、資源の量的管理が可能な魚種に限定したTAC制度を併用し、漁業者の理解を得ながら慎重に進めてきました。
資源の減少、外国漁船との競合、漁業者の高齢化、漁船の高船齢化など、漁業をとりまく変化の下で、資源管理を強化する必要はあります。しかし、上からの漁業の成長産業化や競争力強化の押し付けは、資源管理と矛盾しています。
「水産政策の改革」が、「資源管理を適切に行わない漁業者」「生産性が著しく低い漁業者」に対して、「改善勧告・許可の取り消し」を行うとしていることは、政府が政策目標とする漁業の成長産業化、競争力強化にそぐわない漁業者を排除することにつながります。そのような方向では、沿岸・沖合の多くの地域や、漁業者が築いてきた漁場や漁業秩序を企業へ差し出すことになり、漁業・漁村に大きな困難を持ち込むことになりかねません。



サバの水揚げ=2017年11月21日、宮城県石巻市

企業参入を促進
「水産政策の改革」が、「インプットコントロール等に関する規制を抜本的に見直し、トン数規制など漁船の大型化を阻害する規制を撤廃する」としていることも重大な問題です。巻き網漁業や沖合底引き漁業などを認可する大臣許可の条件として、漁船のトン数制限を条件としていましたが、それを廃止するものだからです。
日本の漁業では、一年中、同じ魚を取っている漁船は極めてまれです。巻き網漁業や沖合底引き漁業も多種類の魚を取っています。ある漁船が漁獲の対象にしている魚種のうちの一つの魚種にIQが導入されると、その漁船は大型化を認められることになります。その結果、IQが導入された魚種以外にも、漁獲圧力が高まらざるをえません。
クロマグロの漁獲規制をめぐっては、巻き網など沖合漁業と沿岸漁業の間の利害対立が顕著になりました。水産庁が開いた説明会でも、「沿岸漁業者は、沖合での巻き網漁の乱獲に歯ぎしりしている」と厳しい意見が出されました。多くの魚種で、全国各地の漁業者間の対立を激化させる要因になりかねません。(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年7月20日付掲載


「資源管理を適切に行わない漁業者」「生産性が著しく低い漁業者」に対して、「改善勧告・許可の取り消し」を行うとしていることは、政府が政策目標とする漁業の成長産業化、競争力強化にそぐわない漁業者を排除することにつながります。
「漁協による共同管理」ではなく、大規模運営で、中小の漁業者を締め出していいものか。
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安倍政権の「水産改革」① 資源管理を大幅改変

2018-07-20 12:53:27 | 経済・産業・中小企業対策など
安倍政権の「水産改革」① 資源管理を大幅改変
政府は6月、「水産政策の改革について」を閣議決定し、その中心点を「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)に書き込みました。今後、必要な法整備を図るとしています。
(日本共産党国民運動委員会 有坂哲夫)

「水産政策の改革」は、水産資源の適切な管理と水産業の成長産業化を両立させるとして、新たな資源管理システムの構築、流通構造の改革、漁業許可・海面利用・漁業協同組合(漁協)の見直し、漁村の多面的機能の発揮などを打ち出しました。日本の漁業政策の根本に関わる内容で、漁業はもとより、国民の食生活や流通にも大きな影響を及ぼさずにはおきません。
水産庁は、6月21日の東京を皮切りに、全国6カ所で説明会を開きました。
資源管理など漁業の存亡に関わる重大な政策変更が、漁業関係者の意見を聞くことなく突然に発表されたことや、沿岸・小型漁業が軽視されていることなどへの批判が続出しています。



全国のクロマグロ漁師が詰めかけた緊急集会=6月11日、東京都内

漁獲規制の強化
「水産政策の改革」の大きな柱の一つが、資源管理システムの大幅な改変です。
これまで、日本で漁獲される魚種のうち、サンマ、スケトウダラ、マアジ、マイワシ、マサバ・ゴマサバ、スルメイカ、ズワイガニの7魚種を対象に、漁獲可能量(TAC)制度に基づく資源管理が行われてきました。調査に基づきTACを設定し、TACを漁業種類ごとに都道府県へ数量配分し、配分枠に基づいて漁獲を規制します。
「水産政策の改革」の方向は、TAC制度の対象にする魚種を順次拡大し、全漁獲量の8割をTAC制度の下に取り込むと同時に、TAC制度の対象になった全魚種を、準備の整ったものから順に個別割り当て(IQ)制度へ移行するというものです。IQは、TACを漁業者または漁船ごとに割り当てる方式です。IQ超過には、罰則を科すとしています。
日本の場合、魚種も、漁法も非常に多様なため、TAC実施の前提となる資源の評価と評価予測に多くの人手と時間、資金がかかります。それだけに、慎重に対応し、「採捕量が多く、国民生活上重要な魚種で、漁獲可能量を決定するだけの科学的知見、蓄積のある魚種」(水産庁)に限定して実施してきました。1996年の制度開始後、追加された魚種はスルメイカだけでした。
現行のTAC制度でさえ、漁獲可能量が前年実績と変わらないなど、資源評価や管理の有効性についても疑問が投げかけられています。まして、漁業者の意見も聞かず、自主的な資源管理をやめてまで、TAC対象魚種を拡大することは、現実的とはいえません。

大手企業を優遇
6月に突如発表されたクロマグロへのTAC制度の導入は、漁民が水産庁に押しかけるほど、関係者の間で大きな混乱を引き起こしました。
クロマグロのTAC設定は、大臣許可漁業(巻き網漁など大型漁船)と沿岸・小型漁業に分けて、都道府県に割り当てられました。前漁期まで政府による自主規制として行ってきた小型魚(30キロ未満)に加えて、大型魚にも罰則付きのTAC規制を実施する方針を示しました。数少ない経営体が行う巻き網漁業への配分(小型魚1500トン、大型魚3063トン)に比べ、圧倒的に数が多い沿岸小型漁船にはその半分にも満たない配分(小型魚1316トン、大型魚732トン)が押し付けられました。事前に何の説明もなく、しかも極めて不公平な配分量であったため、関係漁民の怒りの行動が起きたのです。
クロマグロをめぐる混乱は、そもそも、漁業者など関係者との協議も行わず、了解も得ずにTAC制度への移行を強行したことにあります。同時に、強制を伴うTAC制度に営利最優先の企業的な漁業を優遇する政策当局の意図が表れています。実績に基づいてTACを配分したという口実で大手水産企業や大規模漁業を優遇し、経営規模拡大を推進する政策が持ち込まれました。
日本共産党の紙智子農林・漁民局長が談話(「赤旗」7月4日付)で述べたように、「当面、小規模漁業者の経営が持続できるクロマグロ漁獲枠の設定や休業補償を国の責任で行う」など抜本的な見直しを行うべきです。
(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年7月19日付掲載


資源保護のための漁獲の枠を決めることは必要ですが、クロマグロのように大型船に恣意的に大きな配分。許されません。
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石炭火力推進の日本② 成長戦略の柱に位置づけ

2018-07-19 13:53:44 | 原子力発電・放射能汚染・自然エネルギー
石炭火力推進の日本② 成長戦略の柱に位置づけ
海外の石炭火力発電事業への公的支援については、日本など一部の国が「いかなる規制にも反対」という立場をとり続けていました。国内外の強い批判を受け、2015年11月、経済協力開発機構(OECD)の輸出信用作業部会において、「気候変動対策の観点から、高効率の石炭火力発電技術のみ公的輸出信用の付与が認められる」合意をしました。

「規制」の抜け穴
ところが、その内容には抜け穴があります。16年末までに入札が行われるものは規制対象外とする経過措置と、「低所得国、低電力化率国、島娯(とうしょ)国」向けの発電容量の小さいものについてはCO2排出の多い設備も容認するものとなっています。
今年4月、国際協力銀行(JBIC)が融資を決定したベトナムの石炭火力発電所は、「高効率」ではありませんが、日本政府は、先のOECDにおける合意の抜け穴を「活用」して、「問題ない」と開き直っています。
安倍晋三内閣は、13年5月の経協インフラ戦略会議において「インフラシステム輸出戦略」を決定し、「2020年に約30兆円(10年の実績は約10兆円)のインフラシステム受注(事業投資による収入額等含む)」を成果目標として設定しました。
16年のインフラシステム受注実績は約21兆円で、分野別では情報通信(9兆円)が最も多く、エネルギー(4・7兆円)が続きます。前年比では、エネルギー分野の増加(0・4兆円増)が寄与していると評価しています。
また、首相によるトップセールスの実施件数は、13年以降は12年と比較して毎年3倍の伸びで、閣僚も含めると17年までで実に677件にものぼり、「総理・閣僚等による強力なトップセールス」と成果を強調しています。



石炭からの離脱を求めてベルリン市内を行進するデモ=6月24日(伊藤寿庸撮影)

内外の批判必至
18年6月7日に決定した同戦略改訂版では、「先進的な低炭素技術の海外展開支援」として、高効率火力発電、原子力発電など「わが国が比較優位を有するインフラの海外展開を促進する」ため、「公的金融による支援を強化」すると明記しました。
6月15日に閣議決定した「未来投資戦略2018」でも、「海外の成長市場の取り込み」において、「日本企業の国際展開支援」として、「電気・ガス事業者等多様な主体による国際展開」など「インフラ整備促進のため公的金融支援を強化する」と位置づけています。
7月3日に閣議決定した第5次エネルギー基本計画においても、「インフラ輸出等を通じたエネルギー産業の国際展開の強化」として、高効率火力発電や原子力など「相手国のニーズに応じて、わが国の持つ優れた技術の幅広い選択肢を提案していく」としています。
未曽有の原発事故を起こした日本が、原子力を「優れた技術」として輸出するなど論外です。また、石炭火力発電は最新のものであっても、パリ協定の2度目標と整合性はありません。今年2月、外務省の「気候変動に関する有識者会合」は、「石炭火力輸出への公的支援は速やかな停止をめざす」と提言。環境省のESG(環境・社会・ガバナンス)金融懇談会でも、今年6月、「議論の整理」として、「わが国金融業界においても、世界の潮流と危機感を共有すべき」だとしています。
来年6月には、日本が議長国となって、主要国に新興国を加えた20カ国・地域(G20)の会議が開催されます。「先進的な低炭素技術」として、海外での石炭火力発電を推し進める日本政府に対し、国際社会の批判がますます厳しくなることは必至です。途上国への支援はエネルギー効率化と再生可能エネルギー開発中心へと転換していくべきです。
(おわり)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年7月18日付掲載


ドイツなどのEU諸国では脱炭素が常識になっているのに、日本は「規制」の抜け穴を利用して石炭火力の売り込みをするなんて許せませんね。
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