けいざい四季報2018Ⅱ ⑤ 仮想通貨 ずさん管理 法的規制が必要
①金融庁が複数の登録業者に行政処分。取引実態に即した規制の必要性が明白に
②全登録業者参加の業界団体発足。ルール作りを始めるも規制強化には後ろ向き
③業者への行政処分が相次ぎ、選別が進む。一方で巨利を求め多数が参入希望
仮想通貨をめぐっては、交換業者への立ち入り検査でずさんな管理が次々と明らかになりました。厳しい法的規制が必要です。
登録業者を処分
金融庁は22日、仮想通貨交換業最大手のビットフライヤーをはじめ、6社に業務改善命令を出しました。マネーロンダリング(資金洗浄)対策などの体制が不十分という理由です。1月の大量流失事件以降、金融庁は17社に業務停止命令を含む行政処分をしました。これまで処分は金融庁による登録を待つ「みなし業者」が中心でした。今回は登録業者が大量に処分され、業界の甘い体質と顧客資産を扱う自覚の薄さを改めて明らかにしました。
政府は仮想通貨を決済手段と位置づけ、交換業者にはマネーロンダリング対策と利用者保護を義務付けています。今回の処分で登録業者も最低限の規制すら守っていないことが明白になりました。
しかも取引の実態は価格変動を利用した投機が中心。仮想通貨取引額の8割超が業者に預けた証拠資産の何倍もの仮想通貨を運用する証拠金取引です。
「決済手段」としての規制では間尺に合いません。金融庁は有識者による研究会を設置。新たな法整備も視野に規制のあり方を検討し始めています。
【仮想通貨交換業者の現状】
▼は交換業からの撤退を表明している業者
自主団体が発足
一方、仮想通貨交換業者側は金融庁登録を受けた16社で、日本仮想通貨交換業協会を発足させました。同協会は金融庁認定の自主的規制団体を目指します。
自主的規制団体は交換業における規制ルール作りや違反者への指導・勧告を行います。現状、CM規制や証拠金取引における証拠金の額と取引額の比率(レバレッジ率) などに統一ルールがありません。利用者保護に向けて厳しいルールが求められています。しかし協会の会長に就任した奥山泰全マネーパートナーズ社長は、協会発足総会後の記者会見で、「ルールを厳しくしすぎるとだれも登録業者に入ってこなくなる。業界の健全発展ができなくなる」などと述べて、厳しいルール作りには後ろ向きです。

会見終了後、撮影に応じる仮想通貨交換業協会のメンバー
大手業者が参入
相次ぐ行政処分などにより、金融庁への登録申請を取り下げるみなし業者が現れています。コインチェックによる流失事件当時、16社あったみなし業者のうち13社までが撤退しました。2度の業務停止命令を受けたFSHO(エフショー)は金融庁から登録拒否されました。
一方で大手企業が仮想通貨交換業への参入を目指しています。インターネット証券大手のマネックスグループはコインチェックを36億円で買収し、登録業者を目指します。ネット通販などを営むヤフーも子会社を通じて登録業者に資本参加。
無料通信アプリのLINE(ライン)も参入を表明しています。金融庁によると、100社程度が新規参入の意向を示しています。
他業種からの参入が相次ぐ最大の理由は、もうかるからです。マネックスグループが明らかにしたコインチェックの18年3月期業績は売上高626億円で営業利益は537億円でした。流失事件の補償として473億円の特別損失を計上したものの、税引前利益は63億円でした。
大手業者参入の「安心感」から仮想通貨の運用を検討する人が増える可能性もあります。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月30日付掲載
コンピュータの性能がアップしたことで、暗号化された仮想通貨を大量に発行できるようになった。
決済手数料の安さが宣伝文句だが、実際は価格の乱高下で安定した決済手段ではない。
むしろ投機目的。甘い言葉にのせられて、手を出すものではない。
①金融庁が複数の登録業者に行政処分。取引実態に即した規制の必要性が明白に
②全登録業者参加の業界団体発足。ルール作りを始めるも規制強化には後ろ向き
③業者への行政処分が相次ぎ、選別が進む。一方で巨利を求め多数が参入希望
仮想通貨をめぐっては、交換業者への立ち入り検査でずさんな管理が次々と明らかになりました。厳しい法的規制が必要です。
登録業者を処分
金融庁は22日、仮想通貨交換業最大手のビットフライヤーをはじめ、6社に業務改善命令を出しました。マネーロンダリング(資金洗浄)対策などの体制が不十分という理由です。1月の大量流失事件以降、金融庁は17社に業務停止命令を含む行政処分をしました。これまで処分は金融庁による登録を待つ「みなし業者」が中心でした。今回は登録業者が大量に処分され、業界の甘い体質と顧客資産を扱う自覚の薄さを改めて明らかにしました。
政府は仮想通貨を決済手段と位置づけ、交換業者にはマネーロンダリング対策と利用者保護を義務付けています。今回の処分で登録業者も最低限の規制すら守っていないことが明白になりました。
しかも取引の実態は価格変動を利用した投機が中心。仮想通貨取引額の8割超が業者に預けた証拠資産の何倍もの仮想通貨を運用する証拠金取引です。
「決済手段」としての規制では間尺に合いません。金融庁は有識者による研究会を設置。新たな法整備も視野に規制のあり方を検討し始めています。
【仮想通貨交換業者の現状】
★登録業者 | 行政処分 | |
改善 | 停止 | |
マネーパートナーズ | ||
QUOINE | ○ | |
bitFlyer | ○ | |
ビットバンク | ○ | |
SBIバーチャル・カレンシーズ | ||
GMOコイン | ○ | |
ビットトレード | ||
BTCボックス | ○ | |
ビットポイントジャパン | ○ | |
DMM Bitcoin | ||
ビットアルゴ取引所東京 | ||
Bitgate | ||
BITOCEAN | ||
フィスコ仮想通貨取引所 | ||
テックビューロ | ○ | |
Xtheta |
★みなし業者 | 行政処分 | |
改善 | 停止 | |
みんなのビットコイン | ○ | |
▼Paiward Japan | ||
▼バイクリメンツ | ○ | |
▼CAMPFIRE | ||
▼東京ゲートウェイ | ||
LastRoots | ○ | |
▼deBit | ▼エターナルリンク | ○ |
▼FSHO | ○ | |
▼来夢 | ||
▼ビットステーション | ○ | |
▼ブルードリームジャパン | ○ | |
▼ミスターエクスチェンジ | ○ | |
▼BMEX | ||
▼bitExPress | ||
コインチェック | ○ |
自主団体が発足
一方、仮想通貨交換業者側は金融庁登録を受けた16社で、日本仮想通貨交換業協会を発足させました。同協会は金融庁認定の自主的規制団体を目指します。
自主的規制団体は交換業における規制ルール作りや違反者への指導・勧告を行います。現状、CM規制や証拠金取引における証拠金の額と取引額の比率(レバレッジ率) などに統一ルールがありません。利用者保護に向けて厳しいルールが求められています。しかし協会の会長に就任した奥山泰全マネーパートナーズ社長は、協会発足総会後の記者会見で、「ルールを厳しくしすぎるとだれも登録業者に入ってこなくなる。業界の健全発展ができなくなる」などと述べて、厳しいルール作りには後ろ向きです。

会見終了後、撮影に応じる仮想通貨交換業協会のメンバー
大手業者が参入
相次ぐ行政処分などにより、金融庁への登録申請を取り下げるみなし業者が現れています。コインチェックによる流失事件当時、16社あったみなし業者のうち13社までが撤退しました。2度の業務停止命令を受けたFSHO(エフショー)は金融庁から登録拒否されました。
一方で大手企業が仮想通貨交換業への参入を目指しています。インターネット証券大手のマネックスグループはコインチェックを36億円で買収し、登録業者を目指します。ネット通販などを営むヤフーも子会社を通じて登録業者に資本参加。
無料通信アプリのLINE(ライン)も参入を表明しています。金融庁によると、100社程度が新規参入の意向を示しています。
他業種からの参入が相次ぐ最大の理由は、もうかるからです。マネックスグループが明らかにしたコインチェックの18年3月期業績は売上高626億円で営業利益は537億円でした。流失事件の補償として473億円の特別損失を計上したものの、税引前利益は63億円でした。
大手業者参入の「安心感」から仮想通貨の運用を検討する人が増える可能性もあります。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年6月30日付掲載
コンピュータの性能がアップしたことで、暗号化された仮想通貨を大量に発行できるようになった。
決済手数料の安さが宣伝文句だが、実際は価格の乱高下で安定した決済手段ではない。
むしろ投機目的。甘い言葉にのせられて、手を出すものではない。