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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

映画「マルクス・エンゲルス」 若き革命家たちの姿 躍動的に

2018-04-27 16:04:35 | 働く権利・賃金・雇用問題について
映画「マルクス・エンゲルス」 若き革命家たちの姿 躍動的に

谷本 諭
たにもと・さとし1970年生まれ。党経済・社会保障政策委員会副責任者、文芸評論家。評論「『社会主義リアリズム』とは何だったのか―21世紀の目で考える」で第10回手塚英孝賞

カール・マルクス生誕200年の今年、マルクスと盟友フリードリッヒ・エンゲルス、それぞれの妻イェニーとメアリーの青年時代を描いた映画が日本でも公開となります。社会の矛盾に憤る多感な若者たちが、自らの理論を鍛え、働く人々の運動に参加し、社会変革の組織をつくりあげていく過程を骨太く描いた、力作です。



(左から)イェニー、マルクス、エンゲルス
仏、独、ベルギー合作。118分。28日から東京・岩波ホール、名古屋・名演小劇場で公開、順次全国で
©AGAT FILMS&CIE-VELVET FILM-ROHFILM-ARTEMIS PRODUCTIONS-FRANCE 3 CINEMA JOUROR 2016

人間の尊厳侵す 暴圧許さぬ信念
映画は、薄い光が差す森の中で、枯れ枝を拾い集める女性、子ども、老人たちに、騎馬の武装集団が襲いかかり、人々が撲殺されていく場面から始まります。
古くからの慣例にもとづき、自分たちが耕す農地の周辺の山林で、燃料用の枯れ枝を集める農民たちを、地主と結託した官憲が「窃盗犯」と断じて追い散らす―1842年のドイツで起こった、この「木材窃盗」事件を、当時、「ライン新聞」記者だった24歳のマルクス(アウグスト・ディール)は取材し、炎の噴き出るような論説で政府を糾弾しました。
農民たちが蹂躙(じゅうりん)されていく映像に、記事を読み上げるマルクスの声が重なる冒頭の映像には、社会の不合理に怒り、人間の尊厳を侵す暴圧を許さない、青年マルクスの情熱と信念がみなぎっています。
同じ頃、イギリスでは、22歳のエンゲルス(シュテファン・コナルスケ)が、父親の経営する紡績工場で、過重労働、労務災害、不当解雇がまかり通る現実に胸を痛め、労働者への搾取を告発する著作の準備に取りかかろうとしていました。
映画は、この2人の若きドイツ人が1844年のパリで初めて友情を交わし、ともに、たたかいの人生に足を踏み出す姿を躍動感たっぷりに描き出します。
「歴史上の偉人」を主人公とする伝記映画には、その人物の思想や理論には立ち入らず、エピソードの羅列や人間像のスケッチに終始する作品も珍しくありませんが、本作は、マルクス、エンゲルスと論敵たちとの論争場面を次々と映し出し、2人が、当時の運動の障害物だった“俗流社会主義”の諸潮流を打ち破りながら、科学的な変革の理論を練り上げ、広げていく様子を真正面から描いていきます。
監督ラウル・ペックは、「ベルリンの壁崩壊」から4半世紀がたった今だからこそ、「マルクスの科学的論文」の「原点」に立ち戻ることができると考え、伝記や解説書でなく、2人の往復書簡などの1次資料にあたりながら制作したと語っています。旧ソ連・東欧の呪縛を過去のものとし、独自の理論解釈や史実の脚色をまじえつつ、マルクスの真の姿にせまろうとする制作陣の姿勢には、21世紀の新たな時代の息吹が感じられます。

知性感じさせる女性たちの描写
もう一つ、この映画の新しさを感じさせるのが、女性の登場人物の描き方です。
3人目の主人公ともいえるイェニー・マルクス(ヴィッキー・クリープス)は、名門貴族の家に生まれながら絶対王制を嫌悪し、「古い社会と闘ってこそ幸福よ」と言い切る人物です。彼女が、マルクスと無政府主義者プルードンの議論の場に同席し、夫以上に辛辣な言葉でプルードンの論述の弱点を指摘する場面や、マルクスとエンゲルスの初の共同著作に秀逸なタイトルをつける場面など、イェニーの知性と反骨精神を感じさせる描写が、随所に挿入されています。
アイルランド出身の労働者であるエンゲルスの妻メアリー・バーンズ(ハンナ・スティール)も、工場における過重労働や賃金ピンハネを先頭に立って告発し、経営側と論戦する人物です。文筆家だったエンゲルスとマルクスが、労働運動と結びついていくルートの一つが彼女の仲介だったということも、映画では明確に描かれています。
今、私たちは、社会の矛盾の根源を見抜き、変革への展望をつかむため、マルクスの理論を大いに学び、マルクスと友達になろうと呼びかけています。この映画は、マルクスと知り合い、友情を深めるうえで力を発揮しうるものです。格差・貧困、非正規雇用、ブラック企業、高学費―過酷な現実に直面しながら、自分の生き方や将来のことを模索する、多くの若い世代に、ぜひ見てもらいたいと願っています。


「しんぶん赤旗」日刊紙 2018年4月27日付掲載


枯れ枝を拾い集める女性、子ども、老人たちに、騎馬の武装集団が襲いかかり、人々が撲殺されていく場面。
この「木材窃盗」事件を、当時、「ライン新聞」記者だった24歳のマルクス(アウグスト・ディール)は取材し、炎の噴き出るような論説で政府を糾弾。
スリリングな場面が次々と登場する。面白そうですね。


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