再エネの力 長崎・五島市⑤ 太陽光 電気を無駄なく地産地消

洋上風力発電を地域の基幹産業と位置付ける長崎県五島市では、同時に太陽光発電の導入も進んでいます。現在、市内の太陽光発電所は600カ所弱、発電容量は53メガワット以上。市は、さらにその約50倍の2639メガワットの潜在能力があると見込んでいます。ところが近年、原子力発電を優先する九州電力による一方的な出力抑制(出力制御)が、太陽光発電事業者に深刻な打撃を与え、太陽光発電の普及にブレーキをかけています。

出力抑制で損害を受けていると訴える堀本榮一さん=長崎県五島市
収入が引かれる
「見てください。1カ所の発電所だけで売電収入が昨年1年間で37万2453円も引かれています。計画が狂っています」
太陽光発電による収入と支出の表を示しながらそう憤るのは、福江島の市街地で写真館を営む堀本榮一さんです。市内に出力50キロワットの太陽光発電所を3カ所所有しています。銀行に勧められて2014年に設置。6000万円の借入金を15年で完済し、その後撤云までの5年間で利益を得る予定ですが、出力抑制のせいで利益が3割ほど減ってしまう見込みです。
九州では以前から、電力の供給過多を理由に再エネ発電事業者からの電気の買い取りを九電が一方的に止める出力抑制が問題になってきました。10キロワット以上100キロワット未満の発電所は対象外でしたが、国がルールを変更したため22年12月から対象となりました。その結果、堀本さんの場合、3カ所の発電所の合計で年間100万円以上の売電収入が引かれることになったのです。
「年間でトントンか、赤字になってしまうほど。うちより大規模なところは損害がもっと大きく、発電所の売却を考えている人もいます。国にだまされたと言っていますよ」
堀本さんは民主商工会の会員です。長崎県商連は九電本店への要請も行いました。しかし、九電は国の「優先給電ルール」を盾に、出力抑制を改めようとしません。
「九電は原発の稼働を優先して莫大(ばくだい)な利益をあげながら再エネを出力抑制している。私が発電事業を始める時には出力抑制の対象になるなんて一言も言ってなかったのに勝手にルールを変えるなんてふざけている。政治を変えて再エネ優先のルールに変えなくては」(堀本さん)
地域で需給調整型
一方、同市では、電力の需給を調整して、再エネで生み出された電気を無駄なく地産地消する取り組みも始まっています。
同市のゼロカーボンシティ計画では、既存建物に自家消費型の太陽光発電設備と蓄電池を導入し、発電した電力をできるだけ自家消費することを目指しています。30年までに太陽光と蓄電池を合わせて累計1460件を巨標としています。
現在、太陽光発電所の多くは九電と売電契約を結んでいます。市のゼロカーボンシティシテイ計画は、電気の地産地消を進めるため、地域新電力の五島市民電力が五島産の電気を供給・活用できるように促進、支援していくことも盛り込んでいます。
堀本さんも、今年中に売電先を九電から五島市民電力に切り替える予定です。堀本さんによると、同じように切り替えを検討する動きが出ています。
同市では昨年、発電事業者と消費者の間に立って、電力需給を調整(デマンドレスポンス)する企業=地域アグリゲータも設立されました。アグリゲータは供給が不足する時には、節電や蓄電池にためた電気の使用などを促し、逆層に供給過多になる時には電気自動車の充電や蓄電池への蓄電などの電力使用を促し、発電事業者と消費者の双方に利益をもたらします。
こうした調整によって地産地消も実現し、五島で生み出された電気ができるだけ無駄なく使われることになり、ゼロカーボンの実現につながります。同市は、このような取り組みが評価され、昨年9月、環境省の第5回脱炭素先行地域に選定されました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月10日付掲載
現在、太陽光発電所の多くは九電と売電契約を結んでいます。市のゼロカーボンシティシテイ計画は、電気の地産地消を進めるため、地域新電力の五島市民電力が五島産の電気を供給・活用できるように促進、支援していくことも盛り込んでいます。
堀本さんも、今年中に売電先を九電から五島市民電力に切り替える予定です。堀本さんによると、同じように切り替えを検討する動きが出ています。
同市では昨年、発電事業者と消費者の間に立って、電力需給を調整(デマンドレスポンス)する企業=地域アグリゲータも設立されました。アグリゲータは供給が不足する時には、節電や蓄電池にためた電気の使用などを促し、逆層に供給過多になる時には電気自動車の充電や蓄電池への蓄電などの電力使用を促し、発電事業者と消費者の双方に利益をもたらします。

洋上風力発電を地域の基幹産業と位置付ける長崎県五島市では、同時に太陽光発電の導入も進んでいます。現在、市内の太陽光発電所は600カ所弱、発電容量は53メガワット以上。市は、さらにその約50倍の2639メガワットの潜在能力があると見込んでいます。ところが近年、原子力発電を優先する九州電力による一方的な出力抑制(出力制御)が、太陽光発電事業者に深刻な打撃を与え、太陽光発電の普及にブレーキをかけています。

出力抑制で損害を受けていると訴える堀本榮一さん=長崎県五島市
収入が引かれる
「見てください。1カ所の発電所だけで売電収入が昨年1年間で37万2453円も引かれています。計画が狂っています」
太陽光発電による収入と支出の表を示しながらそう憤るのは、福江島の市街地で写真館を営む堀本榮一さんです。市内に出力50キロワットの太陽光発電所を3カ所所有しています。銀行に勧められて2014年に設置。6000万円の借入金を15年で完済し、その後撤云までの5年間で利益を得る予定ですが、出力抑制のせいで利益が3割ほど減ってしまう見込みです。
九州では以前から、電力の供給過多を理由に再エネ発電事業者からの電気の買い取りを九電が一方的に止める出力抑制が問題になってきました。10キロワット以上100キロワット未満の発電所は対象外でしたが、国がルールを変更したため22年12月から対象となりました。その結果、堀本さんの場合、3カ所の発電所の合計で年間100万円以上の売電収入が引かれることになったのです。
「年間でトントンか、赤字になってしまうほど。うちより大規模なところは損害がもっと大きく、発電所の売却を考えている人もいます。国にだまされたと言っていますよ」
堀本さんは民主商工会の会員です。長崎県商連は九電本店への要請も行いました。しかし、九電は国の「優先給電ルール」を盾に、出力抑制を改めようとしません。
「九電は原発の稼働を優先して莫大(ばくだい)な利益をあげながら再エネを出力抑制している。私が発電事業を始める時には出力抑制の対象になるなんて一言も言ってなかったのに勝手にルールを変えるなんてふざけている。政治を変えて再エネ優先のルールに変えなくては」(堀本さん)
地域で需給調整型
一方、同市では、電力の需給を調整して、再エネで生み出された電気を無駄なく地産地消する取り組みも始まっています。
同市のゼロカーボンシティ計画では、既存建物に自家消費型の太陽光発電設備と蓄電池を導入し、発電した電力をできるだけ自家消費することを目指しています。30年までに太陽光と蓄電池を合わせて累計1460件を巨標としています。
現在、太陽光発電所の多くは九電と売電契約を結んでいます。市のゼロカーボンシティシテイ計画は、電気の地産地消を進めるため、地域新電力の五島市民電力が五島産の電気を供給・活用できるように促進、支援していくことも盛り込んでいます。
堀本さんも、今年中に売電先を九電から五島市民電力に切り替える予定です。堀本さんによると、同じように切り替えを検討する動きが出ています。
同市では昨年、発電事業者と消費者の間に立って、電力需給を調整(デマンドレスポンス)する企業=地域アグリゲータも設立されました。アグリゲータは供給が不足する時には、節電や蓄電池にためた電気の使用などを促し、逆層に供給過多になる時には電気自動車の充電や蓄電池への蓄電などの電力使用を促し、発電事業者と消費者の双方に利益をもたらします。
こうした調整によって地産地消も実現し、五島で生み出された電気ができるだけ無駄なく使われることになり、ゼロカーボンの実現につながります。同市は、このような取り組みが評価され、昨年9月、環境省の第5回脱炭素先行地域に選定されました。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2025年6月10日付掲載
現在、太陽光発電所の多くは九電と売電契約を結んでいます。市のゼロカーボンシティシテイ計画は、電気の地産地消を進めるため、地域新電力の五島市民電力が五島産の電気を供給・活用できるように促進、支援していくことも盛り込んでいます。
堀本さんも、今年中に売電先を九電から五島市民電力に切り替える予定です。堀本さんによると、同じように切り替えを検討する動きが出ています。
同市では昨年、発電事業者と消費者の間に立って、電力需給を調整(デマンドレスポンス)する企業=地域アグリゲータも設立されました。アグリゲータは供給が不足する時には、節電や蓄電池にためた電気の使用などを促し、逆層に供給過多になる時には電気自動車の充電や蓄電池への蓄電などの電力使用を促し、発電事業者と消費者の双方に利益をもたらします。
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