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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

安保改定60年 第一部⑥ 第2条 経済も米の従属下

2020-01-28 12:47:13 | 平和・憲法・歴史問題について
安保改定60年 第一部⑥ 第2条 経済も米の従属下
軍事関係の条文が並ぶ日米安保条約の中で異彩を放つのが「経済条項」と呼ばれる第2条です。同条は日米間の「国際経済政策におけるくい違いを除くことに努め、また、両国の間の経済的協力を促進する」と規定。1960年の安保改定で新たに盛り込まれました。
戦後日本は、軍事だけでなく経済でも米国の従属下におかれてきました。農産物の輸入自由化やエネルギー政策の転換、規制緩和、金融自由化などを押し付けられ、国内経済はゆがめられてきました。その背景に第2条の存在があります。

米日同盟の核心
それをあからさまに示しているのがトランプ政権下における日米貿易交渉です。2019年11月20日、米下院歳入委員会の通商小委員会で開かれた公聴会。同年10月に日米両政府が署名した日米貿易協定をめぐり、議員から「不十分な協定だ」との不満が相次ぎました。米政府は同協定で米国産牛肉の大幅な関税削減を日本に譲歩させましたが、コメや乳製品など「より包括的な合意」を求めました。
そんな中、委員会に出席した米シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)上級副所長のマシュー・グッドマン氏はこう証言しました。
「注目すべきは、国際的な経済協力は米日同盟の核心であるということだ。1960年の安全保障条約の第2条に書いてある」。そのうえで同氏は第2条全文を示し、さらなる関税撤廃や米企業の日本進出を阻む障壁を取り除くよう求めました。



日米貿易協定の合意を確認した共同声明に署名する安倍晋三首相とトランプ米大統領=2019年9月25日、ニューヨーク(首相官邸HPから)

通商交渉有利に
安保条約第2条は北大西洋条約などの経済条項と共通しており、米国の要求にもとついて盛り込まれました。
1958年10月4日に岸信介首相、藤山愛一郎外相、マッカーサー駐日米大使らが日米安保条約改定交渉の初会合を開いた際の「会談録」によると、マッカーサー氏は第2条の目的について、「太平洋地域に於ける経済協力は東南アジア開発問題とも関連するし、又通商障壁の除去等は日米通商関係にも関連するものである」と説明しています。
こうした説明からは、米国は当初から第2条をテコに日本との通商交渉を有利に進め、自国の経済ルールを押し付けようという狙いを持っていたことがうかがえます。
加えて、米国は当時、アジア地域の「社会主義」化を警戒していました。57年1月に国家安全保障会議(NSC)が採択した文書は、南アジアで「非同盟」「反植民地主義」を特徴とする地域が形成されつつあると指摘。同地域は「経済援助を熱望」しており、ソ連・中国が経済援助やプロパガンダ、政治家や文化人の招待を行い、影響力を高めていると警鐘を鳴らしています。高度経済成長期にあった日本を米国の自由主義経済圏にとどめ、日米が協力して東南アジアへの「経済支援」を強める狙いがあったのです。


条約を盾に富を収奪
横浜国立大学名誉教授 萩原伸次郎さん

1950年の朝鮮戦争で日本は兵たん基地として使われ、朝鮮特需で日本産業は息を吹き返し、55年から高度経済成長が始まりました。そうした展開の中、米国は自らの経済圏に日本をとどめるために安保条約第2条を入れたのでしょう。
しかし、70~80年代にかけて米国は多国籍化で産業の空洞化が進む一方、日本は家電や自動車を大量に輸出し、日米の経済関係は悪化。安保条約第2条を活用し、米国にとって有利な要求を日本に押し付けるようになったのが、レーガン政権期の80年代です。
決定的だったのは94年から始まった年次改革要望書方式です。日米両政府は毎年、要望書を交わし、米国は多くの構造問題の要求を突き付け、日本からの要求は全て無視しました。大規模店舗の規制緩和や投機的取引の自由化、米国型の直接金融の導入など、さまざまな分野の要求を実現させました。
日米安保条約は経済関係を根本的に規定しています。そして、経済は政治の基本にあります。オバマ政権が民主党の鳩山政権降ろしを始めたのも、鳩山氏が「東アジア共同体を目指す」と演説したのがきっかけでした。米国はTPP(環太平洋連携協定)でアジア太平洋の覇権を握る方針だったからです。
最近はトランプ米大統領が「高額武器を買え」「駐留経費をもっと負担しろ」と要求しています。落ち目の米国に登場した大統領は、既存のシステムを米国に有利な方向へ壊しています。EU(欧州連合)が米国に反する経済政策を打ち出すため、「EU解体」「NATOは古い」と主張しています。
この事態の中、日本は安保条約を盾にとられて、富が収奪される危険は高い。安保条約廃棄は困難な仕事ですが、米国がいかに不当な要求をするのかを国民に知らせ、その根源にある安保条約は国民の意思でやめることができると伝えていくことが必要です。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2020年1月27日付掲載


1960年の安保条約改定で初めて導入された「経済条項」。
決定的だった94年から始まった年次改革要望書方式。アメリカは大規模店舗の規制緩和や投機的取引の自由化、米国型の直接金融の導入などを実現してきた。
軍事だけでなく、経済でもアメリカに従属させられる根拠です。

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