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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

資本主義の病巣 日本をカットした日産⑦ 「技術の日産」掘り崩す

2019-01-30 11:34:31 | 経済・産業・中小企業対策など
資本主義の病巣 日本をカットした日産⑦ 「技術の日産」掘り崩す
「日産は日本的要素と文化を持つ会社だが、正確には日本企業と言い切ることはできない」
「カリスマ経営者」と持ち上げられていた2001年に、カルロス・ゴーン被告は自伝「ルネッサンス」を出版しました。その中で、日産自動車と日本の関係に触れた冒頭の一文に続き、次のように断定しました。
「世界的にその名を知られ、各国の自動車市場に進出している日産に、どこの国の企業かと問うたところで何の意味もない」

産業空洞化予言
日本の労働者や日本経済への影響を無視して“日本切り”を強行した経営者らしい発想です。ゴーン被告の片腕と呼ばれた志賀俊之最高執行責任者(COO=当時)も言い放ちました。
「日本国内で投資を続けることへの経済合理的な説明がつかない」「たとえば6年後には、国内生産が、がさっと減っているおそれがある」(「週刊東洋経済」11年9月24日)当時、志賀氏は日本自動車工業会の会長でした。日本の自動車産業全体を考える要職にありながら、その産業の空洞化を予言したのです。実際、日産は11年度から6年間で国内生産台数を21万台も減らしました。
志賀氏が“国内投資に経済合理性がない”と言い募る口実にしたのは「超円高」でした。しかし、日産が相も変わらず国内生産を減らしていた13年以降、為替椙場は円安に振れていました。
志賀氏がマーチの逆輸入を決断した07年も1ドル=110円台で推移。歴史的円高とはいえない水準でした。「超円高のためにやむを得ずなされた決断ではない」と名古屋経済大学の坂本雅子名誉教授は指摘します。
他方、中国には日産などの外国資本が殺到。自動車生産能力は国内需要を上回って過剰となり、輸出圧力が強まっています。自動車の日本国内生産は風前のともしびだ、と坂本さんは心配します。
「中国からの逆輸入が本格化すれば、そのときこそ、とてつもない産業空洞化が日本を襲うでしょう。企業が生産を海外に移転するのはやむを得ないという思い込みを改めて、新たなレベルでグローバル企業の規制を考えるべき時期です」



検査不正を発表した会見で頭を下げる日産自動車の役員=2018年9月26日、横浜市

技術員が消えた
“日本切り”は「技術の日産」の存立基盤をも掘り崩しています。日産の検査不正を調査した西村あさひ法律事務所の報告書(18年9月)に衝撃的な事態が記されています。
「抜取検査の専門的知見を有する技術員が車両製造工場からいなくなった」
03年以降、日産は技術者などの総人員を増やさずに海外工場を新設する方針をとりました。技術者が海外に移っても国内では補充しませんでした。
さらに07年以降、自動車1台の生産・販売にかかる総コスト(TdC)を判断基準の中心に据えて生産工場を決めました。マーチの生産を追浜工場(神奈川県横須賀市)からタイに移した際にもこの基準を使いました。国内工場はTdC削減競争に駆り立てられ、人員を適切に配置できなくなりました。
報告書はこう結論付けています。
「経営の力点が、効率性の重視、コストの削減に置かれるようになった」「本来であれば切り捨ててはいけないものまで切り捨てる状況に至った」
元全日本金属情報機器労働組合(JMIU)日産自動車支部委員長の坂ノ下征稔さんは話します。
「ものづくりの技術が揺らぎ、信頼が揺らいでいます。日産が進んできた海外生産拡大の道は良い道ではありませんでした。日産が再建する上でも、労働者が誇りを持って働ける職場にすることが何よりも重要です」
(おわり)(斎藤和紀、杉本恒如が担当しました)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年1月26日付掲載


日産の不正検査のまんえん。その背景に専門的知見を有する技術者が減っていること。
本来切り捨ててはいけない人材も削減した結果だ。
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