きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

資本主義の病巣 日本をカットした日産⑥ 「空洞化の号砲」鳴らす

2019-01-28 07:48:38 | 経済・産業・中小企業対策など
資本主義の病巣 日本をカットした日産⑥ 「空洞化の号砲」鳴らす
「マーチショック」
2010年、日産の小型車マーチの生産が国内から消えました。タイに拠点を移したためです。
「おしゃれなコンパクトカー」として人気を博した日産の主力小型車が海外からの逆輸入に切り替わるという大事件でした。
業界に衝撃が走りました。「日本の完成車メーカーはほぼ例外なく、国内で販売する自動車を日本で生産してきた。その前例を日産が先陣を切って破った」(「日経ビジネス」10年7月12日号)からです。
国内で売る自動車にまで、日産は低賃金の海外労働者を利用した低価格競争を持ち込んだのです。自動車産業「空洞化の号砲」と受け止められました。
こうした生産の海外移転こそ、ゴーン被告が得意とするコスト削減の切り札でした。
日産の国内生産台数は1983年度に247万台でした。それが2017年度には99万台にまで落ち込みました。6割もの激減です。(グラフ)
プラザ合意(1985年)後の円高に対応して日産はグローバル化戦略を採用。もともと国内生産を減らしていましたが、ゴーン流リストラでさらに3割減少させました。国内従業員(連結会社)に占める臨時雇用の割合は6%から21%に急増。国内従業員の総数は2割減りました。




最大拠点は中国
他方で海外生産台数はうなぎ登りに増えました。欧米への輸出を現地生産に置き換えたほか、日本に代わる輸出拠点としてメキシコやタイなどの低賃金国を利用したためです。
2004年以降、急伸しているのが中国です。中国での日産の生産台数は17年に118万台(フォーイン「日本自動車調査月報」)。日本を抜いて日産最大の生産拠点に躍り出ています。研究開発拠点も中国に移しつつあります。提携する中国企業に電気自動車(EV)の技術を移転。合弁会社を設立して共同開発を行っています。
日本を切り捨てる日産の姿勢は99年以降の「リバイバルプラン」に鮮明に表れました。ゴーン被告は生産の主力だった村山工場を閉鎖する一方、米国で新工場の建設を進めたのです。後日、志賀俊之元最高執行責任者(COO)が無責任な感想を吐露しています。
「国内工場を閉鎖しても、収益を見込める米市場には打って出ていくのか、と驚いた」(「産経」2014年11月24日付)



メキシコの日産工場=アグアスカリエンテス、2018年8月29日(ロイター)

部品も海外生産
近年、日産は「国内で年間100万台の生産維持に努める」と繰り返し弁明しています。しかしその内実も空洞化しています。
部品の海外生産が増えています。「海外工場の部品の現地化」を方針とし、部品の国内製造・輸出を減らしているのです。国内生産車の部品についても、4割以上を中国や韓国からの輸入に切り替える計画を進めました。
国内下請け企業の切り捨ても加速させています。共通部品の大量調達によるコスト削減を狙い、巨大外国メーカーからの調達を増やしています。17年3月には連結子会社だったカルソニックカンセイ(本社・さいたま市)を米投資ファンドに売却しました。同社は日産系列最大の部品メーカーでしたが、日産以外の取引先の開拓を余儀なくされています。
名古屋経済大学の坂本雅子名誉教授は自動車産業の空洞化を強く危ぐします。
「自動車産業は日本経済の屋台骨なのに、母国日本を最大の生産・輸出拠点にするという認識が失われています。特に日産は次世代を担うEVについても中国での開発・生産を先行させ、生産量でも技術でも国内を空洞化させています」
国内生産を減らしてきた自動車メーカーの中で、最も情け容赦なく“日本切り”を遂行したのがゴーン日産でした。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2019年1月25日付掲載


コスト削減は労働者だけではない。生産拠点や部品生産もコストの安い海外で。
それとともに、技術までが流出するという羽目に。
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