とことんわかる 核兵器禁止条約⑤ 禁止条項(1) 「使用の威嚇」を否定
核兵器禁止条約の「心臓部」(エレン・ホワイト議長)は、禁止する活動を定めた第1条の「禁止」です。(a)から(g)まで七つの項目があります。
「実験を」禁止
(a)は「核兵器またはその他の核爆発装置を開発し、実験し、生産し、製造し、その他の方法で取得し、保有しまたは貯蔵すること」を禁じています。議論になったのは「実験」でした。
最初に公表された草案(5月23日)では、「核兵器実験爆発または他の核爆発」を禁じるとなっていました。これは「包括的核実験禁止条約」(CTBT、1996年採択)を引用したものです。この条約は、核実験の全面禁止をもとめる世論を反映したものですが、「実験爆発」だけを禁じて、爆発がおきない実験(未臨界実験やコンピューターシミュレーションなど)の技術をもつ核大国には「抜け穴」がありました。
国連会議では、実験を全面的に禁止すべきとの意見が非同盟諸国から出され、最終的には、「爆発」に限らない文言となったのです。
(b)は核兵器やその管理を「受領者に移転すること」の禁止です。自国の核兵器を、他国に譲り渡したり、管理を任せたりすることも許されないのです。
(c)はその逆で、核兵器を受け取ったり、管理を引きうけたりすることを禁じています。
(d)は、核兵器を「使用し、または使用の威嚇を行うこと」です。最初の草案には「使用の威嚇」はありませんでした。インドネシアは「核抑止力」の違法化のために、「威嚇」の禁止が必要だと強く主張し、議論となりました。
「威嚇抜き」を支持する国もありましたが、多くの非同盟諸国がインドネシアの提案を支持する発言を行いました。ブラジルやエジプトといった核兵器禁止条約実現をめざしてきた中心グループの中からも支持が表明されました。
最終的に条約は、この多数意見を反映したものになりました。
「大きな意義」
「使用の威嚇」を禁じたことは、大きな意味があります。
核保有国が、核兵器を持ち続ける最大の理由としているのが、「核抑止力」論です。核兵器の使用をちらつかせて、相手を威嚇するのが「核抑止力」論の本質です。条約はこれを否定したのです。「核兵器による威嚇に依存した安全保障論を否定したものとして、大きな意義をもつ」(日本共産党の志位和夫委員長の声明、7月7日)ものです。
この「使用の威嚇」をめぐる議論は、誠実で、建設的な議論の積み重ねによって、合意を生みだすプロセスでもありました。民主的な集団の努力で、よりよい条約がつくられていったことを示す一つの良い例です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年9月13日付掲載
核実験も「未臨界実験」も禁止。「使用の威嚇」も禁止というのは、すごいですね。
核兵器禁止条約の「心臓部」(エレン・ホワイト議長)は、禁止する活動を定めた第1条の「禁止」です。(a)から(g)まで七つの項目があります。
「実験を」禁止
(a)は「核兵器またはその他の核爆発装置を開発し、実験し、生産し、製造し、その他の方法で取得し、保有しまたは貯蔵すること」を禁じています。議論になったのは「実験」でした。
最初に公表された草案(5月23日)では、「核兵器実験爆発または他の核爆発」を禁じるとなっていました。これは「包括的核実験禁止条約」(CTBT、1996年採択)を引用したものです。この条約は、核実験の全面禁止をもとめる世論を反映したものですが、「実験爆発」だけを禁じて、爆発がおきない実験(未臨界実験やコンピューターシミュレーションなど)の技術をもつ核大国には「抜け穴」がありました。
国連会議では、実験を全面的に禁止すべきとの意見が非同盟諸国から出され、最終的には、「爆発」に限らない文言となったのです。
(b)は核兵器やその管理を「受領者に移転すること」の禁止です。自国の核兵器を、他国に譲り渡したり、管理を任せたりすることも許されないのです。
(c)はその逆で、核兵器を受け取ったり、管理を引きうけたりすることを禁じています。
(d)は、核兵器を「使用し、または使用の威嚇を行うこと」です。最初の草案には「使用の威嚇」はありませんでした。インドネシアは「核抑止力」の違法化のために、「威嚇」の禁止が必要だと強く主張し、議論となりました。
「威嚇抜き」を支持する国もありましたが、多くの非同盟諸国がインドネシアの提案を支持する発言を行いました。ブラジルやエジプトといった核兵器禁止条約実現をめざしてきた中心グループの中からも支持が表明されました。
最終的に条約は、この多数意見を反映したものになりました。
「大きな意義」
「使用の威嚇」を禁じたことは、大きな意味があります。
核保有国が、核兵器を持ち続ける最大の理由としているのが、「核抑止力」論です。核兵器の使用をちらつかせて、相手を威嚇するのが「核抑止力」論の本質です。条約はこれを否定したのです。「核兵器による威嚇に依存した安全保障論を否定したものとして、大きな意義をもつ」(日本共産党の志位和夫委員長の声明、7月7日)ものです。
この「使用の威嚇」をめぐる議論は、誠実で、建設的な議論の積み重ねによって、合意を生みだすプロセスでもありました。民主的な集団の努力で、よりよい条約がつくられていったことを示す一つの良い例です。
(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2017年9月13日付掲載
核実験も「未臨界実験」も禁止。「使用の威嚇」も禁止というのは、すごいですね。