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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

経済の迷宮③ 回り道、ぬれ手であわ

2016-10-08 11:09:10 | 予算・税金・消費税・社会保障など
経済の迷宮③ 回り道、ぬれ手であわ

「2010年に日本企業が一気にシンガポールに出て行ったとき、話題になっていたのがそういう方法です」
大手銀行の広々とした応接室でA氏はよどみなく話します。「そういう方法」とは、三菱東京UFJ銀行のリポート(14年3月20日、4月3日)が勧める節税の手法のことです。
シンガポールに地域統括会社を設立すると、どういうしかけでグループ企業全体の税負担を軽くできるか。リポートは懇切丁寧に説明しているのです。いささか込み入っていますが、せっかく明かしている手の内です。のぞいてみましょう。
大原則は、シンガポールに最大限の利益を移転することです。
「シンガポールの法人税率は、日本と比較して大幅に低いことから、シンガポールにいかにして利益を集約するかが、地域統括会社構築の一つのポイントとなる」




低税率利用して
利益の移転には二つの経路があります。
一つはアジア各国のグループ会社(被統括会社)から利益を移す経路です。もう一つは日本の親会社から利益を移す経路です。
第一の経路で利益移転に使えるのは「配当、利子、使用料」などだとリポートは指摘します。例えば利子と使用料について、次のように解説しています。
「利子、使用料等はシンガポールにおける課税対象となるが、シンガポールの法人税率が日本の法人税率よりもはるかに低いことから、日本本社が直接受け取り、日本の法人税の課税対象となるよりも有利なことが多い」
利子は融資への報酬。使用料は特許などの知的財産の使用を許可することへの対価です。これらを受け取ると、企業の所得となって法人税がかかります。同じ額の利子や使用料を受け取るのなら、税率の低いシンガポールで受け取る方がお得ですよ、というわけです。
実際、16年度の税率を比べると、日本の法人税の実効税率(国・地方の合計)は29・97%。シンガポールの税率は17%である上、要件を満たす地域統括会社に対しては5~15%に軽減する優遇措置があります。シンガポールで納税すれば、はるかに大きな利益が残るのです。
さらに、こうして残った利益を「配当の形」で「日本本社に送金することも考えられる」とリポートは助言します。配当にかかる税金はごくわずかだからです。シンガポールでは、企業が外国株主へ配当金を払っても非課税。日本でも、外国子会社からの受取配当は総額の5%しか課税対象になりません。
つまり、アジアへの投資の見返りを日本で直接受け取るのをやめ、いったんシンガポールで受け取って納税してから日本に送る回り道をつくるだけで、ぬれ手であわの大もうけができるのです。

アジアも税収減
こうした節税工作で日本が税収を失うのは明白です。一方、アジア各国の税収も大きく減っているはずだと語るのは『〈税金逃れ〉の衝撃』の著書がある深見公認会計士事務所の深見浩一郎代表です。
利益移転には別の方法もあると深見氏は指摘します。シンガポールの地域統括会社に業務を委託する対価として、アジアのグループ会社が業務委託料を支払うことです。
「業務委託料を支払う会社の課税所得は減り、受け取る地域統括会社の所得として課税されることになります。アジア各国の法人税率は20~30%なので、はるかに低税率のシンガポールで課税されれば、節税効果は大きい」
グループ会社の所得がシンガポールに移される分、アジア各国は税収を失うのです。実際、シンガポールの地域統括会社は収入の多くを業務委託料に依存しています。
ジェトロ・シンガポールの15年調査では、地域統括会社90社のうち独自の事業収入を得ているのは28社だけでした。多くの企業が域内グループ会社からの業務委託料(31社)、同配当(27社)、同使用料(9社)、同利息(8社)を収入源としていました。
利益移転を裏付けるデータです。(つづく)


「しんぶん赤旗」日刊紙 2016年10月7日付掲載


シンガポールの地域統括会社に利益を移すっていっても、利益がそこにとどまったままでは意味がない。
より税率が少なくなる方法で本社に利益を集中する仕組みってわけですね。
コメント
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