道理なき消費税増税③ 「不況克服」に逆行
消費税を引き上げれば、不況はますます悪化します。安倍政権が掲げる「アベノミクス」(安倍首相の名前と経済学を示す「エコノミクス」からの造語で、安倍政権の経済政策の意味)の「三本の矢」の一つ「大胆な金融緩和」は、「デフレ不況」の克服が目的です。
貧富格差拡大
現在起きている深刻な「デフレ不況」は、国民の所得が冷え込み、購買力が落ち込んでいることが原因です。消費税増税で国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費がさらに冷え込めば、日本経済がさらに悪化することは間違いありません。
深刻なのは、貧富の格差をますます拡大することです。
今回の消費税率の引き上げと社会保障の削減による負担増は、政府の試算でも年収300万円の4人世帯(40歳以上の夫、専業主婦、小学生の子ども2人)で、年間24万1900円にものぼります。実に1カ月分以上の収入が負担増に消えます。
一方で、株式や金融資産を保持する富裕層が円高・株安による恩恵を受けています。4月15日付「日本経済新聞」(電子版)はこの5カ月あまりの間に保有株式の時価総額が100億円以上増えた株主が38人にのぼると報道。トップはソフトバンクの孫正義社長で増加額は4673億円、2位がファーストリテイリングの柳井正会長兼社長で4104億円でした。ほんの一握りの富裕層がばく大な富を手にしていることになります。
日本共産党・佐々木憲昭衆議院議員に内閣官房が提供したデータから作成
2011年度から2016年度にかけての負担増(給付減)の合計年額「共働き」は年収が夫300万円、妻200万円で子ども2人の世帯
単位は万円、端数処理のため合計額が異なる部分もある。

じっくり品調べをする買い物客=東京都内
企業格差広げ
また、消費税増税は、企業規模による格差も広げます。現在、大企業製造業は好調です。日銀の3月の短観(企業短期経済観測調査)によると、業況判断指数(「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を差し引いた値)は3期ぶりに改善して、マイナス8でした。円安傾向が続いていることや海外経済の持ち直しなどが背景にあります。自動車産業が前回比19ポイントの大幅改善となるなど、輸出関連企業の業績が改善しています。
しかし、中小・零細企業にとっては、円安による輸入原材料高が深刻に響きます。その上で消費税増税は、中小・零細企業に深刻な影響を与えます。信金中央金庫地域・中小企業研究所の調査によると、消費税率の引き上げを販売価格に「すべて反映できる」とする中小企業はわずか12・9%。「一部の反映にとどまる」と「まったく反映できない」を合わせた「反映できない」は45・1%でした(「わからない」=42・0%)。価格競争力を持つ大企業が、消費税をすべて価格に転嫁できることとは対照的です。
中小・零細企業は、いまでも消費税を転嫁できず、多数の業者が滞納しています。消費税率の引き上げはこの状況を悪化させ、業者の廃業が増加することは間違いありません。
消費税増税は格差をますます拡大し、日本経済と財政を悪化させます。庶民にとっては百害あって一利なしです。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年5月10日付掲載
消費税を増税すれば、短期的には税収は増えます。しかし、税の本来のあり方の「所得の再配分」の逆を行く税制ですので、貧富の格差が拡大します。消費税を価格に転嫁できるかどうかで、企業間格差も広がります。
長期的に見れば税収が減り、「不況克服」に逆行の愚策です。
今からでも来年4月の5%から8%への消費税増税は中止すべきです。
消費税を引き上げれば、不況はますます悪化します。安倍政権が掲げる「アベノミクス」(安倍首相の名前と経済学を示す「エコノミクス」からの造語で、安倍政権の経済政策の意味)の「三本の矢」の一つ「大胆な金融緩和」は、「デフレ不況」の克服が目的です。
貧富格差拡大
現在起きている深刻な「デフレ不況」は、国民の所得が冷え込み、購買力が落ち込んでいることが原因です。消費税増税で国内総生産(GDP)の約6割を占める個人消費がさらに冷え込めば、日本経済がさらに悪化することは間違いありません。
深刻なのは、貧富の格差をますます拡大することです。
今回の消費税率の引き上げと社会保障の削減による負担増は、政府の試算でも年収300万円の4人世帯(40歳以上の夫、専業主婦、小学生の子ども2人)で、年間24万1900円にものぼります。実に1カ月分以上の収入が負担増に消えます。
一方で、株式や金融資産を保持する富裕層が円高・株安による恩恵を受けています。4月15日付「日本経済新聞」(電子版)はこの5カ月あまりの間に保有株式の時価総額が100億円以上増えた株主が38人にのぼると報道。トップはソフトバンクの孫正義社長で増加額は4673億円、2位がファーストリテイリングの柳井正会長兼社長で4104億円でした。ほんの一握りの富裕層がばく大な富を手にしていることになります。
消費税増税などによる世帯別の負担増 | ||||
世帯構成 | サラリーマン片働き・子ども2人 | 共働き | ||
年収 | 300万円 | 500万円 | 900万円 | 500万円 |
消費税率の10%への引き上げ | 8.2 | 11.5 | 16.6 | 11.2 |
子ども手当の減額 | 3.6 | 3.6 | 3.6 | 3.6 |
住民税の年少扶養控除廃止 | 7.1 | 7.4 | 6.6 | 7.1 |
復興増税(所得税・住民税) | 0.2 | 0.4 | 1.4 | 0.4 |
厚生年金保険料の引き上げ | 2.8 | 4.4 | 6.6 | 4.6 |
医療・介護保険料の引き上げ | 2.3 | 3.9 | 7.1 | 4.0 |
合計 | 24.2 | 31.1 | 41.9 | 30.8 |
年収に占める割合(%) | 8.1 | 6.2 | 4.7 | 6.2 |
2011年度から2016年度にかけての負担増(給付減)の合計年額「共働き」は年収が夫300万円、妻200万円で子ども2人の世帯
単位は万円、端数処理のため合計額が異なる部分もある。

じっくり品調べをする買い物客=東京都内
企業格差広げ
また、消費税増税は、企業規模による格差も広げます。現在、大企業製造業は好調です。日銀の3月の短観(企業短期経済観測調査)によると、業況判断指数(「良い」と答えた企業の割合から「悪い」の割合を差し引いた値)は3期ぶりに改善して、マイナス8でした。円安傾向が続いていることや海外経済の持ち直しなどが背景にあります。自動車産業が前回比19ポイントの大幅改善となるなど、輸出関連企業の業績が改善しています。
しかし、中小・零細企業にとっては、円安による輸入原材料高が深刻に響きます。その上で消費税増税は、中小・零細企業に深刻な影響を与えます。信金中央金庫地域・中小企業研究所の調査によると、消費税率の引き上げを販売価格に「すべて反映できる」とする中小企業はわずか12・9%。「一部の反映にとどまる」と「まったく反映できない」を合わせた「反映できない」は45・1%でした(「わからない」=42・0%)。価格競争力を持つ大企業が、消費税をすべて価格に転嫁できることとは対照的です。
中小・零細企業は、いまでも消費税を転嫁できず、多数の業者が滞納しています。消費税率の引き上げはこの状況を悪化させ、業者の廃業が増加することは間違いありません。
消費税増税は格差をますます拡大し、日本経済と財政を悪化させます。庶民にとっては百害あって一利なしです。(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年5月10日付掲載
消費税を増税すれば、短期的には税収は増えます。しかし、税の本来のあり方の「所得の再配分」の逆を行く税制ですので、貧富の格差が拡大します。消費税を価格に転嫁できるかどうかで、企業間格差も広がります。
長期的に見れば税収が減り、「不況克服」に逆行の愚策です。
今からでも来年4月の5%から8%への消費税増税は中止すべきです。