経労委報告を読む① 賃上げこそ先決
労働総研顧問 牧野富夫さん
日本経団連が21日に発表した、財界の春闘方針である「経営労働政策委員会報告」について、労働運動総合研究所(労働総研)顧問の牧野富夫さんに分析を寄せてもらいました。
経団連「経営労働政策委員会報告」(以下、「経労委報告」または「報告」)が今月21日に発表された。これは財界の「春闘方針書」といわれる重要文書で、大企業のほとんどが、この「報告」で足並みをそろえ、春闘に臨む。
逆立ちの対応
「報告」の最大の特徴=誤りは、足で立たず頭で立つ観念論に終始していることだ。今日の「デフレ不況」とよばれる経済危機の原因は、賃下げ・雇用破壊・社会保障破壊などによる「内需の冷え込み」にこそある。にもかかわらず「報告」は、経済危機を口実に、いっそうの賃金⊥屈用・社会保障などへの攻撃を強めている。逆立ちした対応なのだ。これでは経済危機を一段と深め、泥沼化させるだけだ。
経済危機の打破のためにも、そして何よりも労働者・国民の生活を守るために、いま求められているのは、賃金の引き上げ・雇用の安定化・社会保障の拡充による内需の喚起・拡大である。雇用形態などの違いを超え、すべての労働者の確たる“賃上げ”を今春闘で勝ち取ること、これが最大のポイントである。
今年度版の厚生労働省編『労働経済白書』も、つぎのように述べている。春闘に臨むに当たって「労使がふまえるべきイロハ」として紹介しておこう。「現金給与総額の推移をみると、1997年をピークに減少傾向が続いており、この間、戦後最長の景気拡大期である2002年から2008年にかけてもほとんど増加はみられなかった。この時期においては、企業の売上高、経常利益とも、これまでの最高を更新する水準にまで増加したが、人件費については、1990年代の水準を概(おおむ)ね下回る水準にとどまっていた」(332ページ)と。
そのうえで同白書は、「労働者の所得の増加が消費の増加を通じて日本経済の活性化につながるという日本経済のマクロの好循環を取り戻すことが必要」(冒頭の「骨子」部分)だと強調している。
みてのとおり「白書」は、企業の売上高、経常利益は史上最高であるのに、賃金は逆に下がり続けている。これでは日本経済がダメになる一方なので、賃上げで日本経済の好循環を取り戻す必要があると「当たり前の主張」を展開している。
だが、逆立ちした財界の立場からすれば、この当たり前の主張も「経済や企業の実態を無視したものと言わざるを得ない」(「経労委報告」71ページ)となってしまう。
財界には当たり前のイロハが通じないのだ。経営者のみなさんに言いたい。「頭で立つ」のをやめ、「足で立ってごらん」、そうすれば「真実が見えますよ」と。
春闘の課題に
また「経労委報告」は、「日本の労使関係は、世界に誇るべき、かけがえのない財産である」(77ページ)と褒め上げている。だが、その労使関係というのは、「春闘劇」を財界の“手のひら”で優雅に演じる大企業の労組幹部との「相思相愛の労使関係」なのである。
そのような「手のひら春闘」に断じて「ベア・ゼロの春闘相場」をつくらせてはならない。国民春闘共闘委員会などによる「まともな春闘」が賃上げの“相場形成力”を奪還すること、これが大きな課題である。そのためにも私たち一人ひとりが、財界やメディアなどのデマ宣伝に惑わされず、断固、イデオロギー闘争に打ち勝つことだ。
今年の「経労委報告」の“本丸”は、第3章「今次労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢」である。その伏線として、第1章「一段と厳しさを増す国内事業活動と現状打開への道」と、第2章「競争に打ち勝ち、成長を続けるための人材戦略」の二つの章が置かれている。連載2回目の次回から“本丸”を中心に果敢に攻め込むとしよう。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年1月26日付掲載
労働者の賃金を上げること、定昇はもちろんベースアップで上げることで、国民の購買力を上げて日本の経済を好循環にもっていく。その方が、企業の利益も上がっていくことにつながるのにね。
全労連などのまともな春闘を闘う労働組合が、メジャーになっていくように力をつけていかないといけませんね。
労働総研顧問 牧野富夫さん
日本経団連が21日に発表した、財界の春闘方針である「経営労働政策委員会報告」について、労働運動総合研究所(労働総研)顧問の牧野富夫さんに分析を寄せてもらいました。
経団連「経営労働政策委員会報告」(以下、「経労委報告」または「報告」)が今月21日に発表された。これは財界の「春闘方針書」といわれる重要文書で、大企業のほとんどが、この「報告」で足並みをそろえ、春闘に臨む。
逆立ちの対応
「報告」の最大の特徴=誤りは、足で立たず頭で立つ観念論に終始していることだ。今日の「デフレ不況」とよばれる経済危機の原因は、賃下げ・雇用破壊・社会保障破壊などによる「内需の冷え込み」にこそある。にもかかわらず「報告」は、経済危機を口実に、いっそうの賃金⊥屈用・社会保障などへの攻撃を強めている。逆立ちした対応なのだ。これでは経済危機を一段と深め、泥沼化させるだけだ。
経済危機の打破のためにも、そして何よりも労働者・国民の生活を守るために、いま求められているのは、賃金の引き上げ・雇用の安定化・社会保障の拡充による内需の喚起・拡大である。雇用形態などの違いを超え、すべての労働者の確たる“賃上げ”を今春闘で勝ち取ること、これが最大のポイントである。
今年度版の厚生労働省編『労働経済白書』も、つぎのように述べている。春闘に臨むに当たって「労使がふまえるべきイロハ」として紹介しておこう。「現金給与総額の推移をみると、1997年をピークに減少傾向が続いており、この間、戦後最長の景気拡大期である2002年から2008年にかけてもほとんど増加はみられなかった。この時期においては、企業の売上高、経常利益とも、これまでの最高を更新する水準にまで増加したが、人件費については、1990年代の水準を概(おおむ)ね下回る水準にとどまっていた」(332ページ)と。
そのうえで同白書は、「労働者の所得の増加が消費の増加を通じて日本経済の活性化につながるという日本経済のマクロの好循環を取り戻すことが必要」(冒頭の「骨子」部分)だと強調している。
みてのとおり「白書」は、企業の売上高、経常利益は史上最高であるのに、賃金は逆に下がり続けている。これでは日本経済がダメになる一方なので、賃上げで日本経済の好循環を取り戻す必要があると「当たり前の主張」を展開している。
だが、逆立ちした財界の立場からすれば、この当たり前の主張も「経済や企業の実態を無視したものと言わざるを得ない」(「経労委報告」71ページ)となってしまう。
財界には当たり前のイロハが通じないのだ。経営者のみなさんに言いたい。「頭で立つ」のをやめ、「足で立ってごらん」、そうすれば「真実が見えますよ」と。
春闘の課題に
また「経労委報告」は、「日本の労使関係は、世界に誇るべき、かけがえのない財産である」(77ページ)と褒め上げている。だが、その労使関係というのは、「春闘劇」を財界の“手のひら”で優雅に演じる大企業の労組幹部との「相思相愛の労使関係」なのである。
そのような「手のひら春闘」に断じて「ベア・ゼロの春闘相場」をつくらせてはならない。国民春闘共闘委員会などによる「まともな春闘」が賃上げの“相場形成力”を奪還すること、これが大きな課題である。そのためにも私たち一人ひとりが、財界やメディアなどのデマ宣伝に惑わされず、断固、イデオロギー闘争に打ち勝つことだ。
今年の「経労委報告」の“本丸”は、第3章「今次労使交渉・協議に対する経営側の基本姿勢」である。その伏線として、第1章「一段と厳しさを増す国内事業活動と現状打開への道」と、第2章「競争に打ち勝ち、成長を続けるための人材戦略」の二つの章が置かれている。連載2回目の次回から“本丸”を中心に果敢に攻め込むとしよう。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2013年1月26日付掲載
労働者の賃金を上げること、定昇はもちろんベースアップで上げることで、国民の購買力を上げて日本の経済を好循環にもっていく。その方が、企業の利益も上がっていくことにつながるのにね。
全労連などのまともな春闘を闘う労働組合が、メジャーになっていくように力をつけていかないといけませんね。