20歳のJリーグ② 競技力向上 世界水準 カギは「質」
いま、ひとりの日本人選手の動向が欧州サッカー界で大きな注目を集めています。ドイツ1部リーグでドルトムントを2季連続優勝に導いた香川真司選手(23)です。その移籍先の候補には、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)など欧州の名門クラブの名があがっています。
香川選手はセレッソ大阪に5シーズン在籍し、Jリーグをステップにして世界へ羽ばたきました。今季はドイツリーグで13得点をあげ、欧州でプレーした日本人の最多記録をつくりました。ひと足先に欧州屈指のビッグクラブ、インテル・ミラノ(イタリア)でプレーしている長友佑都選手(25)も、FC東京に4季所属しました。
2人をふくめて現在、欧州の主要リーグに20人の日本人選手が在籍。フォワードからゴールキーパーまで、各ポジションで役割を担っています。
世界で活躍する選手が増えてきたことで、代表チームの実力も向上しています。サッカーのワールドカップ(W杯)に、日本代表は1998年フランス大会から4大会連続で出場。2002年日韓大会と10年南アフリカ大会では16強入りしました。「日本サッカーの水準向上」を理念に掲げて始動したJリーグが、世界水準に近づきつつある証しです。
プロ化によって、選手の技術や自己管理の意識が飛躍的に高まり、練習方法も進歩しました。

ドイツ1部リーグでドルトムントを2季連続優勝に導き、優勝杯を掲げる香川真司選手(AFP時事)
指導者も育つ
98年から約5年間、Jリーグ専務理事をつとめた木之本興三さんは、日本人指導者を多く育てた成果に目を向けます。
「最初は『元代表』の肩書だけで監督になれたが、いまは指導者としての知識と経験を積み、激しい競争に勝ち抜かないと監督になれない」
Jリーグ発足当初の監督10人中、元日本代表選手は6人もいましたが、今季開幕時のJリーグ1部(J1)では、18人中3人にとどまりました。Jリーグの監督資格を持つ日本サッカー協会公認のS級ライセンス保持者は350人を超えます。
しかし、こうした進歩に満足しているわけにはいきません。中国は94年、豪州は04年、カタールは08年にプロリーグを立ち上げ、力をつけています。アジアのクラブ王者を決めるアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)で、日本勢は08年のガンバ大阪を最後に優勝から遠ざかっています。
日本サッカー協会の原博実・強化担当技術委員長は「海外の有力選手が中東などのリーグにとられてしまっている」と危機感をつのらせます。
京都や山形、栃木の監督をつとめた柱谷幸一さんは、Jリーグの試合の質について注文します。
「多くの試合で、引いて守るサッカーが目立つ。夏をはさんだリーグ日程も影響しているが、監督やクラブが試合内容よりも結果にこだわりすぎているのが問題だ」
■プレーの質に見るJリーグ
試合の魅力減
昨季の平均入場者数は前年比で約14%減。東日本大震災による影響もありますが、Jリーグの調査によると、昨季観戦しなかった個人的な理由の第1位は「試合が面白くなくなった」でした。
試合の魅力を表す指標の一つである「アクチュアル・プレーイング・タイム」(実際にプレーが動いている時間)は年々減少(表参照)。ここ数年は、1試合平均で30回以上の反則行為によって試合が中断され、3枚以上の警告(イエローカード)が出る状況が常態化しています。実動時間の低下と反則の多さは、選手の技術向上にとってもマイナスです。
Jリーグは今季、フェァで魅力的な試合を提供しようと、「Jリーグ試合憲章」を定め、全選手と監督が署名しました。内容は①審判や相手を尊重する②見苦しい行為や遅延行為をしない―というものです。
「各クラブは、勝利、試合内容、フェアプレーの三つを一致させることが大切」と柱谷さん。原技術委員長は「観客の期待に、アグレッシブ(攻撃的)でひたむきなプレーでこたえる“プロの原点”に立ち返ってほしい」と語ります。
Jリーグを支える各クラブの姿勢と、選手の向上心が、今後の発展のカギを握っています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月10日付掲載
面白い試合を見せてくれる事、真剣勝負を見せてくれる事。
サッカーはプロ野球とは違ったスリリングさが楽しめます。それに応えて欲しいものですね。
いま、ひとりの日本人選手の動向が欧州サッカー界で大きな注目を集めています。ドイツ1部リーグでドルトムントを2季連続優勝に導いた香川真司選手(23)です。その移籍先の候補には、マンチェスター・ユナイテッド(イングランド)など欧州の名門クラブの名があがっています。
香川選手はセレッソ大阪に5シーズン在籍し、Jリーグをステップにして世界へ羽ばたきました。今季はドイツリーグで13得点をあげ、欧州でプレーした日本人の最多記録をつくりました。ひと足先に欧州屈指のビッグクラブ、インテル・ミラノ(イタリア)でプレーしている長友佑都選手(25)も、FC東京に4季所属しました。
2人をふくめて現在、欧州の主要リーグに20人の日本人選手が在籍。フォワードからゴールキーパーまで、各ポジションで役割を担っています。
世界で活躍する選手が増えてきたことで、代表チームの実力も向上しています。サッカーのワールドカップ(W杯)に、日本代表は1998年フランス大会から4大会連続で出場。2002年日韓大会と10年南アフリカ大会では16強入りしました。「日本サッカーの水準向上」を理念に掲げて始動したJリーグが、世界水準に近づきつつある証しです。
プロ化によって、選手の技術や自己管理の意識が飛躍的に高まり、練習方法も進歩しました。

ドイツ1部リーグでドルトムントを2季連続優勝に導き、優勝杯を掲げる香川真司選手(AFP時事)
指導者も育つ
98年から約5年間、Jリーグ専務理事をつとめた木之本興三さんは、日本人指導者を多く育てた成果に目を向けます。
「最初は『元代表』の肩書だけで監督になれたが、いまは指導者としての知識と経験を積み、激しい競争に勝ち抜かないと監督になれない」
Jリーグ発足当初の監督10人中、元日本代表選手は6人もいましたが、今季開幕時のJリーグ1部(J1)では、18人中3人にとどまりました。Jリーグの監督資格を持つ日本サッカー協会公認のS級ライセンス保持者は350人を超えます。
しかし、こうした進歩に満足しているわけにはいきません。中国は94年、豪州は04年、カタールは08年にプロリーグを立ち上げ、力をつけています。アジアのクラブ王者を決めるアジア・チャンピオンズ・リーグ(ACL)で、日本勢は08年のガンバ大阪を最後に優勝から遠ざかっています。
日本サッカー協会の原博実・強化担当技術委員長は「海外の有力選手が中東などのリーグにとられてしまっている」と危機感をつのらせます。
京都や山形、栃木の監督をつとめた柱谷幸一さんは、Jリーグの試合の質について注文します。
「多くの試合で、引いて守るサッカーが目立つ。夏をはさんだリーグ日程も影響しているが、監督やクラブが試合内容よりも結果にこだわりすぎているのが問題だ」
■プレーの質に見るJリーグ
2009年 | 2010年 | 2011年 | |
アクチュアル・プレーイング・タイム(実際のプレー時間) | 56.08分 | 54.43分 | 54.39分 |
1試合平均の反則数 | 33.9回 | 33.5回 | 31.1回 |
1試合平均の警告数 | 3.30枚 | 3.16枚 | 3.21枚 |
試合の魅力減
昨季の平均入場者数は前年比で約14%減。東日本大震災による影響もありますが、Jリーグの調査によると、昨季観戦しなかった個人的な理由の第1位は「試合が面白くなくなった」でした。
試合の魅力を表す指標の一つである「アクチュアル・プレーイング・タイム」(実際にプレーが動いている時間)は年々減少(表参照)。ここ数年は、1試合平均で30回以上の反則行為によって試合が中断され、3枚以上の警告(イエローカード)が出る状況が常態化しています。実動時間の低下と反則の多さは、選手の技術向上にとってもマイナスです。
Jリーグは今季、フェァで魅力的な試合を提供しようと、「Jリーグ試合憲章」を定め、全選手と監督が署名しました。内容は①審判や相手を尊重する②見苦しい行為や遅延行為をしない―というものです。
「各クラブは、勝利、試合内容、フェアプレーの三つを一致させることが大切」と柱谷さん。原技術委員長は「観客の期待に、アグレッシブ(攻撃的)でひたむきなプレーでこたえる“プロの原点”に立ち返ってほしい」と語ります。
Jリーグを支える各クラブの姿勢と、選手の向上心が、今後の発展のカギを握っています。(つづく)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2012年5月10日付掲載
面白い試合を見せてくれる事、真剣勝負を見せてくれる事。
サッカーはプロ野球とは違ったスリリングさが楽しめます。それに応えて欲しいものですね。