仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

あっという間に1週間:春学期授業開始

2008-04-18 16:43:32 | 生きる犬韜
慌ただしく春学期の授業が始まり、またたく間に一周してしまった。その間、学科会議や教授会、その他各種委員会の会議があり、気づくと4月も下旬にさしかかってしまっている。3月に例会を行った方法論懇話会のケアもしなくてはいけないし(もういいのか。解散したから)、そろそろ環境/文化研究会(仮)の例会も設定しなければいけないのだが、とても時間的余裕がない。しかしこれは、ぼくが時間を使うのが下手だからなのだろう。ここ数日、妙に眠気が強く、集中力を欠いている。そろそろペースを立て直さないと、問題が次々と先送りされてしまうことになる。がんばるべし。

最初の授業は、11日(金)古代史の特講「冥界と喪葬の文化史」。『世界の中心で、愛をさけぶ』に代表される病死譚の流行を手がかりに、生者が死者と向き合うあり方について考え始めた。いきなり「皆さんの大切な人は、これからどんどん死んでゆくんだよ」と始めたものだから、とても重たい空気に包まれてテンションが下がりまくったが、リアクションをみてみるとそれなりに受け止めてくれた学生が多かったようだ。今日はこれからその続き、縄文時代の「骨」に対する意識について考える。
なお金曜は、今年度から担当することになった院ゼミがあるのだが、中世史専攻の院生が1名いるだけの上智では開店休業状態。来年度大学院を受験する予定のHさんと、学位論文執筆のため帰国中の榊佳子さんを誘い、ほとんど研究会状態で『法苑珠林』の講読を開始した。参加者募集中なので、我こそはと思う人は手を挙げてください。

続いて、14日(月)日本史概説 I「環境史からみる日本の古代III」。今年は都市論を中心に考えてゆくが、ガイダンス(環境史の視座)は、毎年共通の話題を趣向を変えながら話している。この日は江戸期農村の景観について、スクリーンに国絵図や名所図絵を映しながら説明、例の現里山非伝統論を導入として使った。80人の1年生を核に30名ほどが集まったようで、どうやら120人近い学生が聞きに来ているらしい。反応は非常によいが、来週はどれくらい残っているのかな。

15日(火)はプレゼミとゼミ。前者に集まった2年生は8人、うち5人が他のゼミとの掛け持ちだから、古代史ゼミの厳しさに嫌気が差して去ってゆく姿が目に浮かぶ。最終的にどこへ所属するにせよ、日本史を研究する技術は身につけていってほしい(ためになるので)。この日は春学期のスケジュールを話して、それぞれに自己紹介をしてもらった。なかなかしっかりした意見を持った子たちで好印象。ちゃんと育てなくてはなるまい。ゼミは15人の大所帯。そろそろ就職活動を終える学生が増えてきて(早いな)、卒論が心配になってきている様子。ゼミ旅行も出雲周辺に定めた。今年のゼミ長のI君はやる気満々なので、ぜひ昨年以上に有意義なものにしてほしい(彼はブログを始めたようだ。他にも何人かブログをしているゼミ生がいるのだが、リンクを張ると怒られるかも知れないので止めておこう)。

16日(水)は輪講「絵画資料でよむ環境文化史」。この日はガイダンスだったのでぼくが担当、環境文化史の意義、絵画資料の利用価値を概説、北原糸子さんによる広重『名所江戸百景』の新しい読みを紹介した。その美しい色彩を大画面でみせるべく、また安政大地震の被害が大きかった亀戸周辺の現在と江戸期の状態を比較すべく、PCを持ち込んだものの、なぜか調子が悪く画面に映らず。けっきょくプリントだけで講義する羽目になった。評判はよかったが、やはり残念なことこのうえない。Windowsは不具合が多いので、中村さんのようにiPodを使うようにしようかな。

17日(木)は、研究日だが会議。会議の場で英語学科のT先生と会う。お互い、「よく会いますね」と笑いあう。やっぱり仕事を担当する人は限られているのだ。合間を縫って翌日の準備をした。

そうそう、公開学習センターで、工藤さん、佐藤さん、土居さんと企画した「異界からのぞく歴史」も始まった。10人の方が登録してくださって、なんとか開講にこぎ着けることができたわけだ。初日の14日は佐藤さんの担当、プロテスタントの教会がキリストの身体に準えられていることを、境界論の概説と合わせて説明していただいた。カトリック教会は古代より人骨の集積される場所で、クトナー・ホラの全聖人教会など骸骨装飾を持つところも多い。日本古代でも天皇の大殿は屋船命の身体だし、それを受け継ぐ日本家屋も樹霊の肉体そのものだ。大工=宗教者という位置づけの共通性とともに、いろいろ生々しいイメージが浮かんだ。
また、先日吉川弘文館から『三宝絵を読む』を刊行した成城大学民俗学研究所の三宝絵研究会も、15日に打ち上げを行って無事終了。ぼくは諸々の事情があって論文を寄稿することができなかったのだが、文献目録の作成にちょっとだけ貢献したので呼んでいただいた。勝浦さん、小峯さん、増尾さん、藤井さん、藤巻さんにもにも久しぶりにお会いした(増尾さんは少々肥えたようだ)。今年度からは『藤氏家伝』の研究会が始まる予定。

...ところで、森見登美彦氏と神山健治氏が会っているらしい。神山氏といえば、いわずと知れたテレビ版『攻殻機動隊』・アニメ版『精霊の守り人』の監督である。現代日本で最も優れた映像作家のひとりといってもいい。これは、森見作品のどれかをアニメ化するということなのだろうか。硬派の神山氏が興味を持った作品とは何だろう?

※ 写真は自坊境内の八重桜。昨日からの雨でちょっと散ったかな。
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