仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

金木犀香る:早くも...の今日この頃

2007-10-13 09:50:51 | 生きる犬韜
いや、早くもピークである。とにかく8コマ、毎日1~2時間の睡眠で講義の準備をしている情況だ。来週も似たような忙しさなので(土曜は京都の仏教史学会で司会、そのまま夜行で秋田へ移動し、義母の四十九日の法要に出る)、秋学期開始早々ちょっと息切れ気味である。帰宅する度に甘く濃くなる境内の金木犀の香りが、少しだけ気分を爽やかにしてくれる。水曜に妻が連れていってくれた自然食バイキング「はーべすと」にも、ずいぶん心が和んだ(写真)。来週もがんばろう(休みはないが)。

講義の内容自体は、いずれも未だ「乗り切れていない」状態である。月曜の「原典講読」は、第二外国語の単位になるので、主に日本史専攻の学生が押し寄せている。東洋史や西洋史の手前、そう安易に単位を出すわけにはいかないので、写本を読んでの報告を課したが、「1時間程度は使って発表してください」といったらドンびきされてしまった。しかし、ほとんど2~3人のグループで担当することになるのだから、実質1人20分程度であろう。楽なことこのうえない気がする。
火曜のゼミは、相変わらずの堅実な報告で始まった。安心して聞いていられるのだが、もう30分くらいは議論に使いたいな~と思ってしまう。学生は嫌かも知れないが、それだけの準備をしてきてくれるわけで、頼もしい限りだ。しかしもう少し、発表者が質問に答えられるようになってくれるといいかな。みんな目一杯のプレゼンをして、底の底まで出し尽くしており、ストックの余裕がない感じである。プレゼミの場合は、まだ研究の仕方、発表の仕方自体が身に付いていないせいか、その傾向がさらに著しい。やっぱりブログを有効に使って訓練したい。報告者がその日の感想・反省などを書き込み、それへみんながコメントするというのはどうだろうか。やはり学生は嫌がるかも知れないが、面白いかも。
水曜、全学共通の「日本史」は、まだ環境史の概説に当たる "さわり" の部分。昨年度の「日本史」や「概説」でイントロに使った話題に、ちょっとずつ新しい知識を組み込んで話している。これらを重複して履修している学生も何人かいるが、その点に敏感に反応してくる子もある。今週は、いつも必ず行う里山の図解をしたが、「千代田学」のために勉強した草山・芝山の話題を組み入れた。どこまで本気で聞いてくれているか、分かったつもりでいるのか本当に理解しているのか、こういうときのリアクションを読むとよく分かるものだ。来週の「『もののけ姫』を読み解く」も、昨年度の内容は短くまとめ、新しい資料を増やしてある。この講義自体の重複履修は認められていないため、原則として二度聞きになる学生はいないはずなのだが、まったく同じ分析だとこちらが喋っていて面白くない。
今週・来週だけあるコミカレの「千代田学入門」は、「環境史からみる江戸の成り立ち」「江戸の災害」というテーマで話をすることになっている。今回は前者だが、水本邦彦さんの『草山の語る近世』、小椋純一さんの『絵図から読み解く人と景観の歴史』『植生からよむ日本人のくらし』に大変お世話になった。近世の絵図は極めて情報量が多く、植生や災害のありようまでが具体的に分かるものもある(古代の荘園絵図も、比較して考察すると何か新しい事実がみつかるかも知れない。ちょうど『日本荘園絵図聚影』釈文編1が届いたので、時間を作って眺めてみるか)。また、『江戸明治東京重ね地図』にもご登場願い、台地と開析谷が交錯する江戸の領域を限界まで使用し、庶民の過密に集住している様子をモニターへ映し出した。GoogleEarthと組み合わせれば、さらに効果がある。考えてみたら、PCを講義で使ったのは初めてだ(PowerPointが好きになれないので)。せっかくなので、今後はいろいろと使い途を考えてみよう。
豊田の地区センターの方では、『書紀』や『古事記』における夢告の分析を終えた。神の意志を知るための手順、作法、抽象性、表現形式などに注目してみてゆくと、天神の政治性/地祇のリアルが明確に浮かび上がってくる。奈良期のアマテラスは創られた神として未だ充分な神威を発現しておらず、徐々に認知の進むなかで、平安期に最高の祟り神として君臨するようになるのだろう(とはいいすぎか)。途中からは王朝女流日記の読解へ入ったが、今回は男性の日記と女流日記との形式、内容等の相違について話しているうちに時間がきてしまった。次回からは、『蜻蛉日記』の夢関係記事を最初から読んでゆく。ぜひ、愛妻にも講義をしてもらいたいところである。
日本史特講(古代史)II は、藤原仲麻呂による『家伝』叙述の背景。今回は、前提となる不比等→四子の政治的・文化的業績を解説していたら、あっという間に終了となってしまった。宇合や麻呂には多くの詩歌が残っているが、史学科の学生にはあまり馴染みがなかったらしい。大して時間はかけられないが、次回、幾つか紹介しておこうか。

さて、一週間の仕事が一段落した12日(金)夜は、同期の齋藤貴弘氏、同期でしかも同じゼミの原弘子さんと食事にいった。この日、齋藤君も上智のコミカレを受け持っているのだが、なんとその講義に原さんが出ているのだという。3人で美味しいピザを頬張りながら、近況などを話し合った。原さんとは7月以来だが、相変わらずパワフルである(卒業式の謝恩会で、二人でニカッと笑いながら肩を組んでいる写真があったのを想い出した)。齋藤君は翌日上智史学会例会の報告だったのだが、結局11時過ぎまで飲んでいた。案の定、今日はちょっとテンションが低かったみたいだが、やっぱりぼくのせいだろうか...。深淵へと続くバラトロン(重罪者を投げ込んで殺す深い穴)のイメージは、ぼくの想像力を多分に刺激してくれたのだが。
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7 Comments

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ブログ活用賛成 (いわい)
2007-10-14 13:52:14
どうも、こちらへのコメントは初ですね。
来週もお忙しいんですね。
お体には気をつけて。学生も意外と心配してますので。

ブログですが先生の意見には賛成ですよ。
報告者が自分の報告が終わってから、ブログの方にリアクションという形で書いてもらって他の学生がそれにコメントする。
報告の時間が長くて議論ができない分はブログでという形で。本当はその場で議論するのがいいのは当たり前ですが。
今度のゼミで提案してみてはどうでしょうか?
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やる気ありますね (ほうじょう)
2007-10-14 14:11:17
おお、やる気のある学生さんはいいですね。プレゼミの方でもやりますか。2年生も3年生も、お互いにコメントしてよしとすれば、さらに考察が広がるかも知れませんしね。ぼくにしても、もう演習の時間は終わりなのにコメントしたりないとか、帰宅してから話すべきことを想い出したとか、実際よくあることなのです。来週からやってみましょう。
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興味深い意見です (ながおさ)
2007-10-14 22:54:42
 原稿の校正大変だったかと思います。授業の準備と併せて本当に不眠不休でやっていらっしゃるのが、私にもよく伝わります。お体には十分に気を付けてください。
 日本史の草山・芝山のお話はとても興味深かったです。江戸時代、場合によっては高度経済成長の直前まで残っていた柴山ですが、いつ頃に成立したのか気になります。やはり、もののけ姫にあるように神殺しや自然の畏怖の軽減があったのだとすれば、里山の風景の誕生が室町期ともいえるのかもしれません。そう位置づける場合に古代の神殺し伝承とは山の開発よりは、まだ多く存在した原野の開拓と耕地化、生産力の増強を指すものであったのだろうかと個人的に思えなくもないです(最も平城京や平安京周辺は別であり、実際に木を切り出してはげ山になったことは間違いないでしょうが)。
日本史特講(古代史)II はやはり個人的には茨城県の出身なので宇合のお話は特に興味深いです。二人の詩歌などはぜひ聞いてみたいです。
ブログのお話興味深いです、今まで利用しなかったことを反省しております。もっと積極的に活用しようと思います。
長文となってしまいすみません
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!!! (はら)
2007-10-15 00:37:34
ピザ、おいしかったですね。
二人ともお忙しいのに、遅くまでお付き合いいただいて…。
次の日に発表が控えているのに齋藤君には本当に悪いことをしてしまいました。

…最近、頭を使わないので、完全にさび付いており、
高尚なお話にはついてゆけませんが、
楽しいひとときでした。

卒業式の謝恩会でそんな写真がありましたか?
既に全然記憶がありません。
ヤバイヤバイ。
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今日は盛況だなあ (ほうじょう)
2007-10-15 01:29:47
今日はコメントが盛況ですね。

>ながおさ君
そのとおり、気候温暖化と農業技術の発展のなかで、芝山が展開してゆくことになるのでしょう。刈敷が一般化し、農業にとって必要不可欠になると、それを支える芝山が増加する。稲作至上主義の産物ともいえます。木津川周辺のはげ山も、かつては古代の乱開発で云々といわれていましたが、やっぱり農業のために出現した景観だったようです。今度の水曜日、絵図でちょっと補足をしておきましょうか。

>原さん
名前出しちゃってよかったですか? 食事のとき、そんな話が出たから大丈夫かと、いきなり登場していただきました。ごめんなさい。
謝恩会の写真は、ものすごーくニカッと笑ってるのがあります。ぼくの記憶では、非常に賑やかで盛大な会だった印象があるんだけど、今年の3月、現在の謝恩会に出てみたら、とても淋しげな集まりでした...。立ち位置の違いなんでしょうかね。
今度また食事にゆきましょう。原さんが忘れないうちに...。
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はーべすと!! (さとう)
2007-10-16 00:48:54
便乗して初コメントです。

先生、はーべすとで和まれたようで。
満足していただけたようでなによりです。
今後も是非利用してあげてください。(偉そう)

…というのも、はーべすとは私がバイトしている自然食バイキング(こちらは洋食)と同じ会社がやっているんです。
和食好きの私にははーべすとの方が好みですが…。

ちょっと前の話ですが、先週のゼミの時、先生に「不機嫌な顔してる」と言われた私ですが(そんなにふてぶてしかったですか?ごめんなさい笑)、釈明させてもらうと、あれは不機嫌だった訳ではなく、緊張していたんですよ~。だから眼が据わってたんです(笑)

最近『境界』というものに大変興味を持っていて、あのときは赤堀憲雄氏の『境界の発生』というものを読んでいました。永長君の質問でそのあたりの話になったので、緊張して聞いていたんです。
私が風土記や霊異記で担当した部分も、境界という視点から考えると、もう少し違った部分も見えてきそうです。
…と、今はそんな感じで、境界なるものに興味津々状態です。

明日もゼミの演習でお世話になりますが、先生、お体には十分お気をつけて…

では、長文失礼致しました。


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はーべすとイイですね (ほうじょう)
2007-10-16 05:27:05
おお、さとうさん初登場ですね。いつも暴言吐いていてごめんなさい。

「はーべすと」、なかなか気に入りましたよ。早く講義の準備をしなければ...とちょっとイライラしていたんですが、精神的にずいぶん余裕ができました。やはり、"食"とは大事なものです。しかし、いいお店なのに、夕食時にしてはあまり混んでないなァと思っていたら、やっぱり値段が少々高い印象がありますね。1500円くらいなら、もっと盛況になる気がするんですが。

ところで赤坂憲雄、ぼくも好きですよ。ぼくが学部時代、彼の編集した「史層を掘る」というシリーズが出始めて、そのうちの1冊『方法としての境界』を購入したのが、歴史の王道から足を踏み外した原因のひとつです。『境界の発生』も、その頃読みふけった記憶があります。最近は、古代で境界論というのはあまりみませんが、卒論の題材としてはイイんじゃないでしょうか。
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