【ヒラドツツジ系の代表的な園芸品種】
ツツジ科ツツジ属の植物は北半球に広く分布する。その中でも日本には約50種の野生種が自生するほか交配によって生まれた園芸品種も数多く、その種類は世界随一ともいわれる。栽培品種は主に霧島系、琉球系、久留米系、平戸系などに大別されるが、このオオムラサキツツジは江戸時代に長崎・平戸藩で品種改良されたヒラドツツジ約300種の中の代表的な品種。耐寒性に富み丈夫で花付きもいいことから最も広く栽培されており、今ではツツジといえばこの花を指すほど馴染みが深い。
学名は「Rhododendron pulchrum(ロードデンドロン・プルクルム) cv. Oomurasaki」。属名はギリシャ語の「バラ」と「樹木」の合成語、種小名は「美しい」「優雅な」を意味する。その後の「cv.」は栽培品種を表す。このツツジのルーツははっきりしていない。一説では沖縄のケラマツツジとリュウキュウツツジの交配によるものとされ、あるいはケラマツツジとキリシマツツジの雑種ではないかともいわれる。オオムラサキツツジは単に「オオムラサキ」とも呼ばれ、「オオムラサキリュウキュウ」「オオサカズキ」などの別名もある。
高さ1~3mほどの常緑低木で、公園や庭園、道路沿いなどで見かけることが多い。4月中旬から5月にかけて枝先に漏斗状の紅紫色の花を2~4輪ずつ付ける。花の径は大きいものなら10cm前後になり、ツツジの中では最も大きい。花冠の先は5つに深く裂け、上弁には濃い紫色の斑点模様が入る。これは昆虫に蜜のありかを知らせる目印で〝蜜標〟と呼ばれる。「吾子の瞳(め)に緋躑躅宿るむらさきに」(中村草田男)