く~にゃん雑記帳

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<大和文華館> 特別企画展「朝鮮螺鈿の美」

2023年11月20日 | 美術

【修理を終えた『螺鈿葡萄文衣裳箱』など公開】

 奈良市学園南の美術館「大和文華館」で、特別企画展「朝鮮螺鈿の美」が始まった。同館所蔵の朝鮮螺鈿の優品に『螺鈿葡萄文衣裳箱』がある。ただ貝殻片の剥落や木地接合部分の亀裂などが見られたため2年がかりで修理中だった。その修理が終わったのを機に貝の輝きが美しい螺鈿作品の数々を見てもらおうと、東京国立博物館から拝借した特別出陳作なども加えて一堂に展示している。12月24日まで。

 

 展示は「螺鈿葡萄文衣裳箱とその系譜」「唐草文・葡萄唐草文の展開」「朝鮮螺鈿の文様と東アジアの美術」の3章で構成する。総展示数は螺鈿作品に同館所蔵の東アジアの陶磁器や絵画なども含め67点。螺鈿作品25点には東京国立博物館蔵6点(うち3点は重要文化財)と個人蔵1点も含まれる。

 修理後初公開の『螺鈿葡萄文衣裳箱』は朝鮮王朝時代の16~17世紀の作品で、大きさが72㎝×43㎝×高さ13㎝の被せ蓋造り。官吏の服を入れる箱として用いられた。蓋の上面ではたわわに実るブドウの枝と飛び交う蝶や蜂を螺鈿で繊細に表現され、側面には宝相華唐草文が巡る。螺鈿に使われているのはアワビ貝。X線撮影で蓋の縁に竹とみられる材を巡らせ釘で固定していることが確認された。

 

 この企画展では東京国立博物館蔵のほぼ同サイズの重文『螺鈿牡丹唐草文衣裳箱』(16世紀、ちらし写真の上半分)や『螺鈿葡萄文衣裳箱』(18~19世紀)も展示中。前者は同時に展示中の重文『螺鈿花鳥文硯箱・螺鈿花鳥文文台』の外箱と伝わっているが、螺鈿技法や文様から制作地は異なる可能性が大きい。この硯箱と文台はもともと戦国大名大内義隆が所有し、後に謀反を起こした家臣の陶氏(すえし)を経て毛利氏に渡ったといわれる。

 朝鮮螺鈿の特徴は“貝割”という技法を多用していること。夜光貝やアワビなどの貝殻から花弁や葉などの文様を切り出したうえ、それぞれをわざわざ数片に割って用いた。これは細かく割ることで貝の光彩が一層きらめく効果を得るため。展示中の螺鈿作品も多くが淡いピンクや緑色の輝きを放ち、その美しさにしばし目を奪われた。

 文様にも変遷がみられる。高麗時代(918~1392)の螺鈿作品には菊唐草文様が施された経箱が多いのに対し、朝鮮時代(1392~1910)に入ると器種が増え、文様も牡丹唐草文が目立つように。さらに朝鮮時代後期には山水文様が多く現れた。展示中の個人蔵『螺鈿山水文箱』には蓋と側面に山や岩、松や桃の木々、舟を漕ぐ人物などが螺鈿で山水画のように表現されている。

 ほかの主な展示作品に東京国立博物館蔵の『螺鈿牡丹唐草文箱』や『螺鈿葡萄栗鼠(りす)文箱』、館蔵品の『螺鈿花鳥文筆筒』、『螺鈿魚文盆』、中国・明時代の『螺鈿山水人物文座屏』『螺鈿花鳥蝶文器局』など。日本の作品では伝本阿弥光悦(1558~1637)作『沃懸地青貝金貝蒔絵群鹿文笛筒』(重文)、尾形光琳・乾山の合作品を蒔絵師原羊遊斎(1769~1845)が模造した『螺鈿蒔絵梅文合子』なども並ぶ。

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