【極彩色壁画発見40年記念企画展、11/30まで】
奈良県明日香村のキトラ古墳壁画体験館「四神の館」で、壁画発見から40年になるのを記念した企画展「飛鳥コスモロジー~切り絵作家・望月めぐみの宝石箱より」が開かれている。
会場を飾るのは石室に描かれていた獣頭人身の「十二支」や星座の「二十八宿」を題材に制作した大きな切り絵作品。純白の切り絵の数々が天井中央に描かれた天文図を囲んで一体化し、荘厳かつ華やかな世界を作り出している。
望月さんは1978年横浜生まれ。現在は京都市に在住し、京都伝統工芸大学校和紙工芸専攻非常勤講師を務める。切り絵作家として内外で高い評価を得ており、寺院などでの大型インスタレーション作品を多く手掛けてきた。著書に『平安絵巻の素敵な切り絵』(PHP研究所)。
企画展のタイトル「コスモロジー」は直訳すると「宇宙論」。望月さんは「古代飛鳥にも大きな影響を与えた東アジア独自の世界観・コスモロジーを構成する物事に惹かれ、画題として取り組み続けている」という。
会場中央には巨大なスクリーンが4面あり、石室の壁面に描かれた四神(青龍・朱雀・白虎・玄武)の精細画像がクローズアップしながら映し出される。その真ん中、天井の天文図の真下に、ひときわ存在感を放つ小さな箱が展示されている。スポットライトを浴びた姿はまさに黄金色に輝く宝石箱。
『小宇宙(星降るキトラ)』という望月さんの立体切り絵作品だ。「古墳の壁画や出土品をモチーフに石室内部に表された宇宙観を再現した」という。約11㎝四方の立方体。これを33.6㎝四方の1枚の紙から作ったというから驚く。まさに匠の技! 上には円形の天文図が乗る。
スクリーン裏の壁面にも望月さんの作品が並ぶ。「斉明天皇のまなざし」シリーズは『雨乞い』(下の写真)、『禊ぎ』など4点。飛鳥時代に「海を越えた広い視野を持ち行動した」女帝斉明天皇に思いを馳せて制作した。霊獣の『麒麟』など中国の神話から発想した作品も展示されている。
他には壁画発見40周年を記念した『明日香村切り絵御朱印』も。初公開の作品群で、発売は来年1月20日とのこと。企画展の会期は11月30日まで。(写真はキトラ古墳の天文図を基にした切り絵御朱印の原画)