【火縄銃・殺陣の実演、よさこい、大道芸なども】
奈良県高取町の高取山頂(標高約584m)に築かれた高取城は備中松山城(岡山)、岩村城(岐阜)とともに日本3大山城といわれる。その旧城下町で11月23日「第35回たかとり城まつり」が開かれた。最大の呼び物は「時代行列」。過去3年はコロナ禍に加え昨年は雨天で中止になっていた。それだけに久しぶりの行列復活に城下町を貫く土佐街道は多くの観光客で溢れかえった。
メイン会場は高取城から移築した重厚な松ノ門が構える高取児童公園。ここでは午前10時すぎから和太鼓の演奏を皮切りに火縄銃の実演、南京玉すだれ、忍者ショー、殺陣の実演、よさこい踊りなど多彩なイベントが繰り広げられた。兜・陣羽織の試着記念写真コーナーもあり、そばの旧幼稚園の園庭では大骨董市も開かれていた。
時代行列が出発したのは午後1時。長い行列は石畳の緩やかな上りが続く土佐街道を練り歩いてメイン会場に向かった。先導するのは荷台に巨大な桶胴太鼓を載せた車と「大和高取城」の旗行列。高取町自治会と高取国際高校の生徒による「姫と家老」や「江戸両替商」の行列、高取土佐時代行列保存会による奴行列が続いた。
その次には「大名駕篭」。中には殿様ではなく可愛い女の子がちょこんと鎮座していた。勇ましい鎧兜姿の甲冑隊がこの後に続く。「高取甲冑隊」、紀州九度山の「手作甲冑真田隊」、「大阪城鉄砲隊」、「甲援隊」、「子ども甲冑隊」。甲冑隊はそれぞれ時折「エイエイオー」と勝どきを上げたり、勝利の舞を披露したりしていた。
この後ろに高取町社会福祉協議会の女性陣による「くノ一忍者隊」が続き、しんがりは神戸に拠点を置く日本南京玉すだれ協会の行列だった。童謡「ゾウさん」などを歌いながら見事な手さばきを披露すると、沿道の観客から大きな拍手が送られた。
この日は城まつりに合わせ、小島神社で県指定有形民俗文化財「ナモデ踊り絵馬」が一般公開された。実物の公開は2013年以来10年ぶりとのこと。絵馬は享保8年(1723年)、宝暦2年(1752年)、文政4年(1821年)の3枚あり、江戸時代の雨乞いの「ナモデ(南無手)踊り」の様子が描かれている。(写真は宝暦2年在銘絵馬=部分)
絵馬は横幅が約1.9m、高さが1.5m前後ある巨大なもの。ちょうど300年前の享保8年在銘のものは残念ながら剥落が激しく絵柄は不鮮明。しかし、残りの2枚は今も華やかな衣装や踊り子の表情までも色鮮やかに残っている。宝暦の絵馬には墨書で「諸願成就皆令満足所」、文政のものには「奉掛/雨乞願成就」と記されているそうだ。(写真は文政4年在銘絵馬=部分)
「阿波野青畝文学館」も特別開館し、青畝直筆の掛け軸や短冊などを公開した。青畝(1899~1992)は高取町出身の俳人で、昭和初期には山口誓子・高野素十・水原秋桜子とともに“ホトトギスの4S”と呼ばれた。「爪に火をともす育ちの老の春」「月下美人膾(なます)になつて了いけり」