く~にゃん雑記帳

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<東大寺ミュージアム> 特集展示「戒壇院の夏安居」

2023年06月17日 | 考古・歴史

【中世の仏事を記した『年中行事』や『鑑真和尚像』など】

 東大寺ミュージアム(奈良市)で特集展示「戒壇院の夏安居(げあんご)」が開かれている。夏安居は僧侶たちが雨期に外出しないで一カ所に集まって修行すること。東大寺では大仏殿を中心とする僧侶集団とは別に、戒壇院でも独自に安居が行われていた。今回の特集では戒壇院で行われていた夏安居の始まりの儀式「結夏(けつげ)」を中心に取り上げている。7月18日まで。

 展示中の『戒壇院年中行事』は室町時代(15世紀)の墨書で、中世にいつどんな仏事が営まれていたかを知ることができる貴重な史料。4月16日(旧暦)の条には夏安居の始まりを告げる結夏作法が詳細に記されている。それによると、釈迦を挟んで北に鑑真和尚、南に南山大師の御影が懸けられた。戒壇院では他の寺院と異なり、鑑真和尚の肖像を掲げるのが特色という。

 鎌倉時代(14世紀)作の『鑑真和尚像』(写真㊨=部分)と『南山大師像』(写真㊧=部分)は並べて展示中。鑑真像は唐招提寺の乾漆像を模して描かれたとみられる。南山大師道宣(596~667)は唐代の南山律宗の開祖。鑑真は道宣の弟子から律宗の教えを受けた。苦難の末に来日した鑑真が聖武上皇や孝謙天皇らに授戒したのは754年(天平勝宝6年)。その後、大仏殿前の戒壇を移設し戒壇堂をはじめ伽藍を築いて戒壇院を造営した。展示中の『東大寺戒壇院指図』は多くの伽藍を焼失した1446年の失火後の再建計画図とみられ、重要文化財に指定されている。

 『梵網戒本疏日珠鈔(しょにちじゅしょう)巻四十四』(東大寺凝然撰述章疏類のうち)は鎌倉時代1318年に学僧の凝然が記したもの。その中には夏安居に触れたこんな一節も。「植物にも命があり、それを踏み殺してしまうのを嫌うために夏安居を設ける」「西国の僧は多く遊行するが、虫を踏み傷つけることを嫌うために仏陀は夏安居を設けた」。『優婆離唄(ゆばりばい)』は声明用の楽譜で、中国・宋代の発音(宋音)でルビが付されているのが特徴。優婆離は釈迦の十大弟子の一人で、最も戒律に精通していたという。

 東大寺ミュージアムは南大門のすぐ北西側にある。常設展示は本尊の千手観音菩薩立像、法華堂(三月堂)伝来の日光・月光菩薩像、奈良時代の誕生釈迦仏像、金堂(大仏殿)鎮壇具など。耐震化工事中の戒壇堂の四天王立像も特別公開中(8月27日まで)。

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