原作は、19世紀に活躍した女流作家シャーロット・ブロンテの代表作で、
今までに18回も映画化されてきた不朽の名作です。
監督は長編デビュー作「闇の列車、光の旅」('09年)が世界各国で映画賞を
受賞した34才の日系アメリカ人、キャリー・ジョージ・フクナガであることもあ
って期待して見ました。
悲惨な子供時代を過ごした孤児のジェーン・エアは、教師の資格を取って
ソーンフィールドという屋敷で住み込みの家庭教師の職を得ます。
新しい生活を手にしたジェーンを、屋敷の主人ロチェスターは気難しい男で
したが次第に好もしく思うようになり、二人は恋に落ちていくのですが、彼
には隠し続けてきた大きな秘密があったのです・・・。
原作でジェーン・エアは美しい女性というより、普通の容姿の女性として描
かれていますが、この役を演じた「アリス・ワンダーランド」のミワ・ワシコウ
スカは適役で、不幸な境遇をものともせず気高く強く生きて行く女性を上手
く演じていて、それが段々と魅力的な女性に見えてくる不思議な魅力があ
ります。
共演のマイケル・ファスベンダー、ジュディ・デンチ、ジェイミー・べルほかで
すが中々重厚です。
期待していたキャリー・ジョージ・フクナガ監督ですが、演出に新人とは思
えぬ風格があり、人物の葛藤や物語の舞台である英国ダービーシャー州
の荒涼とした景観、特にテレビでは味わえないロングショットの美しさに見
惚れます。
古色蒼然とした画面も計算されていて、時代考証・衣装・屋敷の描写は今
年のアカデミー賞で衣装デザイン賞にノミネートされたことも成程とうなずけ
ます。
ただ惜しむらくは原作が長編だから仕方がないとも言えますが、後半は省
略が過ぎてモノ足らなくなり、私は折角前半が良かったのに何故だと不満
タラタラです。
上映時間は120分ですが、後20分くらいかけて纏めれば・・・、そのあたりが
残念です。
蛇足ですが11月に私はイギリス旅行を計画していまして、このダービーシャ
ー地方の荒涼とした風景を是非写真に撮りたいと思っているのですよ。
(6/28 TOHOシネマズ天神 6日目 10:15の回 55人)