人気作家として注目が集まる関口尚の同名小説の映画化です。
監督は「時をかける少女」の谷口正晃で、ある事件をきっかけに、映画館
から一歩も出られなくなった映写技師の女性と、臨時でバイトをはじめた
大学生とのひと夏の恋を描いた青春ミステリとでもいう作品です。
ある地方の古びた映画館"銀映館"でバイトをすることになった大学生の恵
介(西島隆弘)は、3年前に起こしたトラブルで映画館から外に出ない女性
映写技師ルカ(三根梓)と出会います。
バイト採用の条件として支配人(井上順)から謎めいた彼女にまつわる三つ
の約束をさせられた恵介でしたが、次第に彼女に興味を持つようになって
行きます。でも彼女は心を閉ざしたまま。
そこにルカのことを探る男レイジ(高良健吾)が現われて・・・。
谷口監督は'10年にヨコハマ映画祭で新人監督賞を取った人で、この映画
はスタッフもキャストも真面目に一生懸命で撮った印象はありますが、結果
的には全体的に空回りで、悪く言えば学芸会的な作品になってしまってい
ると思います。
まず脚本をもう少し練り込む必要があったと思います。何故か何故なのかの
疑問が多過ぎるし、ご都合主義が目立って原作の味が上手く出ていません。
背景となった古い映画館をよく見つけてきたとは思いますが、私自身が昨年
1年間、依頼を受けてフイルム上映の映画館2館を預かり、経営にあたりまし
たので内情はよく知っています。
私がいた大映マークの映画を上映したりで嬉しくはあったのですが、デジタル
化に風前の灯になっている映画館の実体などが併せて描かれていないため、
この作品はどんな物語が付随しても空々しく感じます。
主演デビューの三根梓は佐賀県出身の大学生で、最近CMでよく見る子で将
来性は感じますが、この役はいくらなんでも無理でした。
西島隆弘と高良健吾の若手コンビは中々好感が持てる演技でした。
(6/14 T・ジョイ博多 6日目 14:00の回 7人)