映画が中心のブログです!

中島けんです。新しい映画や舞台の感想を中心に、大映の思い出、海外旅行・地元の話題などを写真付きで書かせていただきます。

大映宣伝部・番外編の番外 (79) わがうるわしのカツライス ⑤

2015年08月31日 | 日記

  

  

     

     「わがうるわしのカツライス」④故・林 万夫(もと大映本社宣伝課長) 遺稿

 

     昭和44年7月17日。

     私は京橋の大映本社へ出社してすぐ雷蔵さんの訃報に接し、マスコミ発表の段

     取りを決め、その指揮をとった。

     その戦争騒ぎの始まる前に、私は一本の長距離電話にかかっていた。雷蔵の死

     を誰よりも悲しむはずの男が電話の向こうにいた。

     彼はもう、永田社長からの連絡でそのことを知っていた。

     「新聞や雑誌の連中が、あなたのコメントを欲しがると思いますが、なにか一言

     …」「いや、ノーコメントだ。いまはなにもいう気になれない。雷ちゃんがもうこの

     世にいないなんて、とても信じられない…」

     その男、勝新太郎の声は、私がかって何度も電話で聞いた声とは別人のように

     遠くくぐもっていた。驚くほど陰々と湿っていた。

     生涯のよきライバルを失った男は泣くだろうか。勝新太郎ほどの豪放な男でも、

     ライバルのために涙を流すのだろうか。

     旅先の宿の一室で親友の死の意味を考えている男のために、私はそのまま受

     話器を静かに置いた。

     私の心の中のカツライス時代も、その電話の途切れるかすかな音と共に終わっ

     た、と思った。(故・林万夫の遺稿連載おわり)

  

 

     私事ですが、7月の頭から腹部の筋肉痛に見舞われ、身体を少しでも動かすと

     激痛が走り、とても苦しい目にあいましたが、やっと痛みが和らぎ、身体の自

     を取り戻してきました。

     今月は映画館にもあまり行けず、こんなに苦しい思いは久しぶりでしたが、これ

     からは映画もバリバリ見ますし、海外旅行の準備も始めるつもりです。

     身体が少したどたどしいのですが、どうかこれからも宜しくお付き合いくださいま

     すようお願いいたします。 中島けん

 

 

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映画 「チャップリンの贈りもの」

2015年08月29日 | 日記

    

     喜劇王チャップリンの遺体が盗まれるという実際に起きた事件を題材に、一寸

     間抜けな2人組が巻き起こす騒動を描いた人情コメディです。「神々と男たち」

     でカンヌ国際映画祭審査員特別グランプリを受賞したグザビエ・ボーボワ監督

     が、チャップリンの遺族の全面協力を得て完成させた作品です。

 

     1978年、喜劇王チャップリンが亡くなり、スイスのレマン湖畔にある墓地に埋葬

     されたことを知った調子者の男性エディは、入院中の妻と幼い娘を抱えてどん

     底の生活を送る親友オスマンを誘い、チャップリンの棺を盗んで身代金をせし

     めようと思いつきます。しかし計画は穴だらけで、ツキにも見放された二人は

     窮地に追い込まれてしまうのですが・・・。

 

     主演は「ココ・アヴァン・シャネル」のブノワ・ポールブールドと「この愛のために

     撃て」のロシュディ・ゼム。チャップリンが晩年を過ごした邸宅や実際の墓地で

     撮影を行ない、チャップリンの息子がサーカスの支配人に、孫娘がチャップリ

     ンの未亡人役で特別出演しているのと、「シェルブールの雨傘」などの巨匠ミ

     シェル・ルグランが音楽を担当しているのが話題になっています。

 

     「モダン・タイムス」をはじめ、チャップリンの数々の作品へのオマージュが詰

     まっていて、映画ファンを喜ばせてくれるのですが、シナリオが悪いのかいま

     一つ盛り上がらないままエンドを迎えます。

     またそのエンドも肝心な説明描写が無いままですから、中途半端な出来栄え

     としか言えません。二人の主演者より、チャップリンの執事役が主人の亡くな

     った後も、あらゆる場面でチャップリンを守る姿勢を見せるのが印象的です。

     という訳で全面的にお薦めとは言えないのが残念です。

 

 

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映画 「彼は秘密の女ともだち」

2015年08月28日 | 日記

   

     「17歳」に続くフランソワ・オゾン監督の最新作で、平凡な主婦が「特別な女

     ともだち」との出会いを通して人生を見つめ直す姿を描いた内容です。

 

     子供の頃からの親友ローラを病気で亡くした主婦クレール(アナイス・ドゥーム

     スティエ)は、悲しみに暮れながらも残された親友の夫ダビッド(ロマン・デュリ

     ス)と幼い娘リュシーを守ることを誓うのでした。

 

     ある日、2人の様子を見ようと家を訪れたクレールは、そこで亡き妻の服を着

     て娘をあやすダビッドの姿を目撃します。女性の服を着たいというダビッドの

     告白に戸惑いを隠しきれないクレールでしたが、いつしか彼を女性として受け

     入れるようになり、夫ジル(ラファエル・ペルソナ)に嘘を重ね、新しい女友達の

     ビルジニアとして女性同士の秘密の時間を楽しむようになります。そしてクレ

     ールもまた、ビルジニアの影響で自分らしく生きることの素晴らしさに気づく

     のですが・・・。

 

     最初から言っておきますが、このような内容は極端に好き嫌いがあると思わ

     れますから、評価も大きく分かれると思います。私は以前の仕事の関係でニ

     ューハーフの友人が結構いて理解者のつもりですが、この作品の内容や女

     装については全くグロいと思いますし、途中で何度退場しようかと思ったくら

     い嫌いです。

     フランソワ・オゾン監督の手腕で、物語の展開や語り口が上手いだけに私と

     しては期待外れの残念作です。一つだけ余談ですが、日本車のマツダが格

     好良く使われているのは楽しいのですが・・・。

 

 

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拙著 「スタアのいた季節/わが青春の大映回顧録」 の発刊その後

2015年08月27日 | 日記

      

     私の本「スタアのいた季節/わが青春の大映回顧録」が発売されて2ヶ月が経ち

     ました。読後の感想をいただいた中で多かったのは、永田社長は「永田ラッパ」と

     言われていて、大法螺吹きだと思っていたが、本を読んで印象が随分変わった…、

     映画会社の宣伝部というセクションの面白さ…、市川雷蔵・勝新太郎・若尾文子・

     田宮二郎・渥美マリのエピソードが面白かったなどなどでした。

 

     私としては大映というユニークな映画を作っていた会社があったことを忘れない

     で欲しい…、永田社長のイメージを変えて欲しい…が基本構想だったため、それ

     は嬉しい結果だと喜んでいます。

     永田社長は福岡にもよく来ていましたが、他の社長会見と違うのは、記者連中が

     板付空港で永田社長を待ち受けるということでした。映画だけではなく、政財界

     などを含めて話すホットニュースが、取材記者を喜ばせるに値する内容だったか

     らです。

 

     最後に懇意にしていただいている池島ゆたか監督から寄せていただいた一言は、

     →映画好きならずとも、一家に一冊!貴重な昭和文化史です。

      スゴいのは、特別映画好きでなくても、今の30~40代以上なら、知ってる名前

      しか出てこないということ! ←以上でした。

 

        

 

 

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映画 「お盆の弟」

2015年08月26日 | 日記

   

     崖っぷちの売れない映画監督が再起をはかる姿を、モノクロの映像で描いたド

     ラマで、数々の作品で助監督を務め、2005年の初監督作「キャッチボール屋」

     が第16回日本映画批評家大賞新人監督賞を受賞した、大崎章監督の10年ぶり

     となる監督第2作です。

 

     40歳を前に妻子と別居中のタカシ(渋川清彦)は売れない映画監督。ガンで療

     養中の兄マサル(光石研)の看病のためと称して群馬県に帰省しています。

     いつもタカシのプロットをシナリオ化してもらう、悪友の藤村(岡田浩暉)を通し

     て知り合った女性・涼子を気に入ったタカシは、涼子のような女性が兄と付き

     合ってくれれば安心だと考え、頻繁に会う機会を作りますが、涼子はタカシに

     対して本気になってしまうのです。

     一方、妻からはついに離婚を切り出され、なんとか妻の気持ちをつなぎとめよ

     うと躍起になるタカシでしたが、映画の企画もうまくいかず絶体絶命・・・。脚本

     は「キャッチボール屋」でも大崎監督とタッグを組んだ、「百円の恋」の足立紳

     が担当しています。

 

     まず今どきはカラーが普通なのに、なんでモノクロ画面なのか、カラーは照明

     や小道具・大道具などに対していくらか費用が上乗せになるくらいで、わざと

     モノクロで撮った理由がどうしても判らないのです。貧乏たらしい物語だから

     としても、カラーで表現は可能だと思うからです。

     この作品で飛び抜けて面白いのは脚本で、後の監督・俳優・カメラ・録音など

     のスタッフ、キャストの冴えないことがおびただしく映研レベルです。折角素敵

     な作品になる筈のものを下手に扱って質を落としてしまっています。

     とはいうものの先述のように、「百円の恋」で見せたように足立紳のオリジナル

     脚本は、人間関係の面白さ、屈折した人たちの再生、最近流行りの製作費を

     かけない新しい映画作りの一端を覗かせてくれて、その点は満足させてくれた

     作品ではあります。

 

 

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