経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・今年は大拡張のち急緊縮

2022年01月02日 | 経済(主なもの)
 11月の鉱工業生産の資本財(除く輸送機械)は、停滞しているように見える。輸出主導の景気回復は頭打ちになったかもしれず、ちょっと心配である。輸出は、コロナ禍の日本経済の支えとなってきたが、いつまでも頼れるものではないから、内需主導の成長に波及させていかなければならない。当面のマクロ運営は、コロナ対策で大拡張ではあるが、その剥落後が見通せず、急緊縮へと移って行くことになろう。

………
 11月は、自動車の制約の解消によって、輸出と生産が高まったが、制約前の水準に戻ったということであり、更に伸びて、引き続き景気を牽引できるかは、また別の問題である。その点、資本財(除く輸送機械)は、11月が前月比0、12月予測が-1.4である。10-12月期は前期比-1.9とマイナスだ。1月予測は+14.8と跳ねるが、春節の時期でもあり、本当に最高水準を抜いて行くかは、慎重に見るべきだろう。

 他方、建設財は前月比-0.7、消費財は+8.7だった。10-12月期で見ると+1.4と+4.7だが、いずれも前期のマイナスを取り戻せていない。特に、11月の消費財は、これだけ戻しても2021年前半並みの水準に過ぎない。このあたりは、商業動態・小売業の動向とも整合的である。10-12月期のGDPは、前期のマイナス成長の反動で大きく伸びると見られているが、なかなか厳しい状況である。

 雇用については、11月の労働力調査の雇用者数は前月比-12万人で男女とも減り、失業率も+0.1の2.8%という芳しくない結果だった。また、有効求人倍率は1.15倍で横ばい、新規求人倍率は+0.05の2.13倍だった。求人は、2020年より一段高い水準にはあるものの、更に上積みするまでには至らず、コロナ前の2019年との差がなかなか縮められない。このあたりが打開できないと、消費も増えがたい。

(図)


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 2022年度予算は、かなりの緊縮である。まず、国は、6.7兆円の公債金の減額、すなわち赤字の圧縮を行う。地方は、3.6兆円の地方債の減額と0.5兆円の特会償還を合わせ、4.1兆円の圧縮だ。公式上でも、歳出の抑圧と過去最高の税収で、国・地方で計10.8兆円もの緊縮予算が組まれているわけである。問題は、国・地方とも税収の見積りが控えめで、予算より大きく上ブレしそうなことである。その分だけ、実際上、緊縮は強まることになる。

 税収の見積りについて、法人税は企業の経常利益の見通し、消費税と所得税は経済見通し、その他は物価上昇率を使い、2021、22年度の二段階で伸していくと、2022年度は、国が4.7兆円、地方が2.7兆円、計7.3兆円の上ブレとなる。これを公式上の緊縮に加えると18.2兆円となる。国の2021年度補正予算の公債金の増額は22.1兆円であるから、ほとんどが相殺され、拡張は、補正の困窮支援+子給付に相当する3.9兆円まで小さくなってしまう。

 こうしたことから、補正予算が消化されているうちは良いものの、それが剥落していくにつれ、急速に緊縮が強まってくることが分かる。それは、2023年度にプライマリーバランスまで一気に達するほどの激しさである。もろに18.9兆円の緊縮がかかってくる前に、せめて所得税と消費税の増収分を還元する数兆円クラスの再分配の制度を設計しておかないと、財政の崖によって、成長は失速してしまうだろう。

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 アベノミクスの失敗が回復期の緊縮であったように、「新しい資本主義」も緊縮に墜するのかもしれない。それでいて、「どうして、消費も物価も賃金も上がらず、内需が不振なのか」と、首を傾げ続けるだろう。二十五年一日、そうだったゆえ、迎えた2022年も変わりはあるまい。財政破綻を口にする人はいても、税収動向はチェックしないという、不思議な国だからだ。日本は、負債を清くしようとして、この間にすっかり貧しくなり、人口を減らしながら、清貧主義の国になろうしている。なるほど、それは地球環境に貢献する新しい資本主義ではある。それとも、今年は変化があったりするのだろうか。


(今日までの日経)
 失われた33年でいいのか。社説・資本主義を鍛え直す年にしよう。首相「資本主義の弊害に対応」。食料高騰、世界揺らす 異常気象・脱炭素で10年ぶり高値。コロナ下で世界株高。円は値動き「最弱」。RCEPが1日発効。


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