経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

出生崩壊と野垂れ死にの予約

2024年05月26日 | 社会保障
 出生率が1.45人くらいだったら、子供のない人の老後を支えることは何とかなるが、1.15人まで落ちたら、モームリじゃないかと思う。支える子世代は、親世代の55%しかおらず、過剰負担は、倍増してしまうからだ。そうなると、子供のない人は、働けなくなったら死ぬしかないような野垂れ死にの予約をしているようなもので、そんな選択を強いる国は、間違っていると思う。

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 3月の人口動態速報の出生は前年同月比-10.3%、過去1年間の前年同月比は-5.4%だった。来月には、2023年の合計特殊出生率が1.21人と過去最低だったことが発表されるだろうが、2024年は、このペースだと1.15人まで下がる計算で、2019年に始まった、年に0.05も落ちるという急速な少子化は止まるところを知らない様相だ。出生の崩壊だが、コロナ禍が挟まったこともあって、深刻度に比して危機感は薄い。

 出生率が1.45人だと、子世代は親世代の70%だから1.43倍の負担をしないといけない。それでも、1世代30年間の年間成長率が1.2%あれば、供給力が1.43倍になるので、耐えられると思うが、出生率が1.15人になると、1.80倍と割増負担が倍増し、成長率は2.0%が必要になる。若い労働力が激減する中での成長加速は困難で、供給力が伴わなければ、子供のない人は、もう支えられなくなる。

 今の若者が子供を生まないなら、移民を連れて来れば良いと言う議論もあるが、若者から搾取して衰退する国にどれだけ来て、支えてくれるか。むしろ、日本の希少な若者が海外に逃散する事態だって考えられる。低所得の若者からも、税と社会保険料で5割近く吸い上げ、奨学金の返済を課す一方で、非正規の女性には育児休業給付を出さないという搾取ぶりを改める方が先決ではないだろうか。

(図)


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 子供を持たないというのは、人的な投資(=貯蓄)が不足している状態であり、自己の人的資本を食い潰していることになる。今の若者も、老朽して生きるヨスガがなくなったら野垂れ死になるおそれまで分かって選んでいるわげではない。なんとなく、今の延長で、社会保障を通じて、半減する他人の子が恵んでくれるような気がしているだけだ。しかし、これだけの少子化となると、経済的にも政治的にも先行きは厳しい。

 自殺の自由を尊重するなんてことは在り得ず、追い込まれる環境を改めるのが正しい社会の在り方であり、少子化だって、そうではないのか。生き永らえることを諦めるはめになる環境は間違っている。政策的に環境を変えることは、今の日本の経済力なら難しいわけでもない。間違っていることの証明に、この国が人口崩壊で潰える前に、なすべきことをやらなくてはならない。


(今日までの日経)
 認知症と予備軍、2050年に1200万人。出生率、最低見通し 民間試算 昨年1.21 コロナ響く。人口減少強まる危機感・土居丈朗。上場企業、3年連続最高益。円安、「実質金利差」が主導。

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