経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

ポスト金融緩和の経済政策

2024年03月10日 | 経済
 この春にも日銀のマイナス金利が終わり、金融緩和を徹底すれば成長するはずという壮大な実験が終わる。「ヒモでは押せない」という古くからの経験則を再確認しただけの失敗だったが、どうすれば良かったのかは、ウヤムヤである。そこへ、教科書的なものとして、清滝先生が経済教室(3/4)で提言をしてくれた。開放経済と技術進歩による持続的成長、基礎教育と医療を通じた生活基盤の充実、働く期間の延長と消費税増税による財政持続、移民の促進による少子高齢化への対応、適切な金融政策によるインフレの安定というものだ。さて、教科書は、現実に通用するのか。

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 教科書では、低金利は設備投資を促すことになっているが、現実には、需要を見通しながらなされている。期待は需要で形成されているわけで、金利が高かろうが低かろうが関係ない。したがって、マイナス金利が改められても、変化はない。もちろん、これは不合理な行動であり、いったん低成長に嵌ったら、抜けられなくなるし、インフレ気味になると、いつまでも続く。論理的でないが、現実がそうだからしかたない。

 ゆえに、変化は、大規模な需要が外挿的に与えられたり、奪われたときになる。高度成長は、輸出向けの設備投資で始動したし、1997年の大規模な緊縮と輸出減では、ゼロ成長に転落した。金融政策や産業政策で調整などできない。低金利や補助金で設備投資を促しても、需要の枠があるので、恩恵に浴しない設備投資が減り、総量は増えない。清滝先生が低金利や補助金にネガティブなのには、まったく同感だ。

 他方、補助金が威力を発揮するのは、少子化だ。効果が薄いのは、使い方が拙いからである。例えば、高校生に児童手当を拡大しても、高校生は増えない。来年生まれる子供が高校生になったときに使えるクーポンをわたすだけでも、出生への効果は同じだから、費用対効果を高めるのは簡単である。移民で安い労働力を入れる策は、彼らに十分な教育や福祉を与えないことを前提にしないと、費用対効果が高くならないだろう。

 清滝先生が提言する生活基盤の充実は、出生という人的資本を充実する観点から、若者へ集中すべきであろう。非正規への育児休業給付の拡大は、所得制限をかけると、費用対効果は抜群になる。低所得層への社会保険料の実質的な軽減は、「壁」を除いて労働供給を増加させる。問題の数だけ手段が必要とされるが、複数の問題の根源には、財政赤字を無闇に警戒している上に、政策立案がなっておらず、再分配が機能していないところにある。

(図)


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 1月の統計局CTIマクロは、前月比-0.2で3か月連続の減であり、自動車の生産停止の影響もあり、停滞感が強い。他方、1月は、毎月勤労統計の雇用と給与が上昇しており、家計調査の勤労者世帯の可処分所得も高い。また、消費者態度や景気ウォッチャーの2月は上向きである。景気動向指数は、足踏みに下方修正されて、現状をよく表しているのだが、先行きに明るさも見える。賃上げも高そうであり、当然、税と社会保険料も膨らむ。考えるべきは、消費増税より再分配だろう。


(今日までの日経)
 日銀ETF含み益、過去最高34兆円。節電浸透、電力逼迫が一服。非正規も賃上げの大波。公取委、下請法違反で日産に勧告。


コメント
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