続きを。
「乳酸をどれだけ出せるか」と「乳酸が蓄積した状態でどれだけ動けるか」はロングスプリントの重要な考え方です。が、だからといって「そこだけの練習」が中心になるのは間違っていると思います。ロングスプリントに特化した練習ばかりしていると、結局はショートスプリントが走れなくなります。以前、京都に行ったときmtm先生が「マルチスプリンター」の話をされていました。100mから400mまでしっかりと走れる選手。ここに「正解」があると思っています。
ロングスプリントが中心になるとどうしても「最大スピード」よりも「耐乳酸性」の部分が大きくなります。が、「最大スピード」が上がらなければどれだけやってもロングスプリントの結果は出ません。これも「乳酸性作業閾値」の考え方になるのですが、最大スピードが高ければ高いほど「余裕をもってスピードが出せる」のだから乳酸が出にくくなります。もちろん、スピードが上がるので200m通過タイムも上がるので乳酸は蓄積しますが。200mが21秒0の男子と23秒0の男子であればどちらが余裕をもって前半走れるかが違ってきます。ロングスプリントに特化した練習ばかりやるのは間違っている。
先日kd先生と話をする中でkrk君の大学での話になりました。オリンピアンになっています。そうなるとどうしても「400mHのための練習」という形が中心になります。長い距離を走る練習が増える。が、krk君は110mHにも出場しています。13秒6で走る。いや、すごい話だと思います。ロングスプリントに特化せずに「最大スピード」が必要だというのも肌感覚で分かっているのではないかなと思います。長い距離ばかり、耐乳酸の練習ばかりではよくないなと改めて感じる話でした。
とにかく「300m」を走ればいいという気はしません。が、ここを全否定する気もありません。何を目的としてやるのか。1本だけ300mを走ったことによって「記録が伸びる」というのは考えにくいかなとは思いますが。どのように組み合わせていくのかが重要だと思っています。極端なことをいうとLTのぎりぎりのレベルで300mを走っておいてそこから150mを走るというのはありなのかもしれません。まーこれは間違いなく中距離的な練習かなとは思いますが。
そのことについて感じていたので先日から2回ほど250m×3本というのを実施しました。実は3年くらい前にkrk君が高校3年生の時に48秒台選手2人と一緒に「300m×3本」という練習をしたことがあります。一人は200mと400mのスピードタイプ。もう一人は400mと800mのミドルタイプ。これにkrkくんの3人で300mを3本。8月下旬くらいだったかなと思います。国体に向けての「耐乳酸性」のトレーニングです。今確認をしたら37秒設定で3本。4分Restでした。いや、これはなかなかの負荷だと思います。全力走ると35秒を切るくらいでは間違いなく走ると思います。1本の400mを50秒くらいで走る感じでしょうか。4分後の300mが38秒になっていたと記録しています。
この時点で「けつ割れが・・・」と言っていたようですが間違いなくスルーしています。3本目はスピード維持ができていないようでした。ひょっとしたら前段階で乳酸が蓄積していたので300mから250mくらいに切り替えたほうがよかったのかもしれないなと今では思います。ぎりぎり維持できる距離にするとよかったなと。
今の競技レベルでは「乳酸をある程度出す」というのが難しいかなと思います。分かりにくいので「250mを全力で3本」という設定にしました。Restの設定は8分だったか。厳密に計っておけばよかったなと思います。乳酸が蓄積する。いかに乳酸がたくさん出せるか(高い出力で走れるか)と乳酸が蓄積した中で足を動かせるか(耐乳酸性)の両面の意味を持たせていく必要があります。それくらいの練習はどこでもやっていると思います。300mや250mのスピードレベルがどれくらいかによって負荷も変わってくるとは思いますが。
54秒くらいの選手が1本目の250mを30秒8くらいで入ってきました。これは本人的にはベストくらいの勢いです。狙い通りの負荷がかけられたかなと。女子の61秒の選手が35秒後半だったか。動き始めからの測定なので若干のずれはあります。さらに追い風の中でやっていますから比較的タイムは出やすい。これまでは「走るだけ」となっていたのでここで「タイム測定」をすることで「質」を上げたいなと。目に見える負荷になります。2本目は32秒を切るか切らないか。女子は37秒を少し切るくらいだったと思います。ある程度維持できる。いや、もう少し休息を短くしてもよかったかなという感じですね。この時点でかなりの乳酸が蓄積。ここが狙い。3本目は34秒と38秒くらいだったか。
これまでにないくらいの乳酸が蓄積したといっていました。いや、本当はもっと蓄積できるのではないかと思いますが。乳酸が出るほどの高いパフォーマンスが発揮できるかどうかは大きいと思っていますこの手の練習は「覚悟」が必要になります。乳酸が蓄積すると「痛み」を伴います。それが分かっていて意図的にその負荷をかけるのですから。なんとなくやっている選手にはそこまでできません。表面的に「目標」を掲げて何かをしようという選手も同様。
こうやって書いていて思い出しました。ロングスプリントをやろうと思ったら「真面目」で「前向き」の選手でないと最後の負荷がかけられない。もちろん、それなりにやって強くなる選手もたくさんいます。が、突き詰めてやろうと思えば「苦しい中で動かないといけない」部分が出てきます。ここに打ち勝てる気持ちの強さも含めて重要だと思いますね。これができないと「最初から行く」というのができない。2本目以降が速いというのではこの練習の狙いが達成できません。
これは少しミドル的な乳酸の蓄積のさせ方だったかなとは思います。もう少しだけお付き合いください。このことに踏まえてもう少し実践したことがあるので。