日本裁判官ネットワークブログ

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脳脊髄液減少症と線維筋痛症

2006年12月17日 | Weblog
毎日新聞で昨日、今日と続けて、交通事故との因果関係に関して報じられています。
昨日の朝刊の「論点」では、「脳脊髄液減少症」(髄液漏れ)と交通事故との因果関係について賛否両論が掲載されました。さらに偶然にも、その因果関係を認めた14日の横浜検察審査会の不起訴不当議決が社会面で報じられました。
今日の朝刊の社会面では、「線維筋痛症」と交通事故との因果関係を認めた10月の山口地裁岩国支部判決が報道されています。
さらに医学的に解明を進めてほしい問題ですが、裁判所は現時点でどう判断すべきか、難しいですね。(チェックメイト)

(今日の毎日新聞から抜粋) 
線維筋痛症「交通事故に起因」地裁が初判断
山口・岩国支部 今年10月に
 交通事故後に全身が痛むようになり、「線維筋痛(せんいきんつう)症」と診断された男性(51)が「事故が原因だ」として、加害者らを相手取って治療費など4684万円余の支払いを求めた訴訟で、山口地裁岩国支部(寺元義人裁判官)が今年10月、「一応の因果関係が認められる」と528万円余の支払いを命じたことが分かった。患者団体などによると、事故との因果関係を認めた判決が明らかになったのは初めて。判決は1審で確定した。
 交通事故と発症を巡っては、脳脊髄(せきずい)液減少症(髄液漏れ)でも、しばしば争点となり、因果関係を認める地裁判決はこれまでに少なくとも2回出ている。
 線維筋痛症の発症の仕組みは未解明で、さまざまな説があり、裁判所の判断が注目された。判決は事故後の経緯を踏まえ、「特に頚椎(けいつい)外傷を受けた患者で発症率が高いことに照らせば、事故による頚椎捻挫(ねんざ)等と無関係に生じたとは考えがたい」と述べた。
 しかし、男性にも発症や症状が悪化した原因の一部があったとし、線維筋痛症に関する損害のうち25%に限って「事故に起因する」とした。
 男性は00年7月、車を運転中に追突された。翌日から首や腰などの痛みが出て通院を続けた。事故5年後の昨年7月、初めて線維筋痛症と診断された。
 裁判で加害者側は「事故で線維筋痛症になる仕組みが明らかでない。原因としてウイルス感染や化学物質過敏など多くの説がある。因果関係が立証されていない」と主張していた。
 男性の弁護士は「裁判官は、事故と発症との関係が医学的に完全には証明できなくても、被害者保護の観点から判決を導き出してくれた」と評価している。

貸金業法の改正

2006年12月16日 | Weblog
以下朝日新聞からです。民事裁判に携わるものとしては感慨深いものがありますね。(瑞祥)


貸金業法が全会一致で成立 09年末めどに灰色金利撤廃

 貸金業の金利引き下げを盛り込んだ貸金業法(旧貸金業規制法)が13日の参院本会議で、全会一致で成立した。これを受け、貸金業の上限金利は3年後の09年末をめどに現行の年29.2%から利息制限法の上限(元本に応じ同15~20%)に下がり、グレーゾーン(灰色)金利は撤廃される。今後は、多重債務者向けの相談窓口の設置や低利融資制度などの対策が焦点となる。

 改正法は、任意の支払いなどを条件に利息制限法を超える灰色金利を有効としてきた「みなし弁済規定」を撤廃し、年20%を超える違反を刑事罰、同15~20%の違反を行政処分の対象とする。

 借り手の返済能力を超える「借りすぎ」を防ぐため、貸金業者からの借入金は原則年収の3分の1以内とし、業者には信用情報機関への登録と、貸付時に借り手の借入残高の確認を義務付ける。

 また、事業規模が小さいと、利益を得るために違法な金利で貸し付ける恐れがあるとして、約3年間で貸金業者の純資産額の登録条件を5000万円以上に引き上げる。

 改正法の一部施行後に貸金業界への規制強化への影響を検証し、必要があれば金利引き下げ時までに法律を見直す。

 貸金業の規制強化は、今年1月に最高裁が灰色金利を実質的に無効とする判決を出したことで機運が高まった。金融庁の有識者懇談会が4月に上限金利引き下げの方針を示し、与党も10月に同様の結論を出した。当初の政府・与党案には特例の高金利や利息制限法の見直しが含まれていたが、弁護士らの批判を受けて修正した結果、野党も賛成に転じた。

LIBRA「松ヶ根親方夫妻インタビュー」で

2006年12月14日 | Weblog
東京弁護士会「LIBRA」12月号から抜粋します。

-ところで3年後には裁判員制度が実施されます。本場所中の力士は裁判員を辞退することになるのでしょうね。
親方:そうですね、場所中は仮に1日であっても拘束されたら力士にとっては黒星につながりかねませんし。
-親方は辞退できませんね。
親方:そうですね。相撲一筋の私に何ができるかわかりませんが、裁判員をする場合は人の一生を決めることになるわけですから緊張感があります。
みづえ:裁判所から呼び出しがあれば必ず参加します。自分の考えで判断する制度だということですから、しっかり考えて結論を出したいと思います。

株主代表訴訟

2006年12月13日 | Weblog
読売新聞からです

投資ファンド連合の傘下で再建中のカネボウの個人株主501人が13日、カネボウの小森哲郎社長ら取締役5人を相手取り、425億円の支払いを求める株主代表訴訟を東京地裁に起こした。

 個人株主らは、経営再建の過程で切り離された日用品など中核3事業の営業譲渡代金が、カネボウに支払われておらず、会社に損害を与えたとして営業譲渡代金の支払いを求めた。

 同日記者会見した「カネボウ個人株主の権利を守る会」の山口三尊(みつたか)代表(39)は、3事業を分離した際の取締役会決議について「一般投資家の利益よりファンド連合の利益を優先させた行為」と述べ、会社法に定めた取締役の忠実義務違反に当たると主張した。一方、カネボウは「訴状の内容を把握していないので、コメントできない」としている

韓国法曹の資格デフレ

2006年12月12日 | Weblog
こんな書き込みをHP(http://anonymity.cocolog-nifty.com/blog/2006/12/post_1fa3.html)で見つけました。日本でもこうした情報が若い法曹の不安を刺激しないかと心配です。

韓国では資格取得者が就職難
 東亜日報サイトは11月23日に「国税庁の公開採用、会計・税理士ら専門職110人が志願」を掲出。

 記事は、国税庁が9級税務職公務員661人を公募したところ、かつては「高卒の職」というイメージだった9級公務員の採用試験に、公認会計士や税理士など専門職の資格所持者が110人も応募したと報じる。しかも、科目当り、5点(100点満点)ずつの加算点を受けた彼らのうち、最終合格した人は33人にすぎないとか。国税庁の昨年の7級の新人職員は、全体の90人のうち、40人が公認会計士(22人)や税理士(18人)だったとのこと。国税庁の関係者は、「4、5年前までは、公認会計士や税理士の資格所持者が7級の採用試験に合格して入ってきたら、『どうして、給料も少ない公務員になろうとしているのか』と冗談半分で言ったが、最近は9級採用試験に大勢応募していて、到底信じられない」と語ったとのこと。年間それぞれ1000人の弁護士や公認会計士、700人の税理士などの専門職資格の所持者が市場に放り出されている上、深刻な大卒の就職難まで重なり、資格証の「デフレ」現象が加速していると記事は伝える。韓国社会の最高のエリートだと思われてきた司法研修院の修了者たちも、同様に民間企業の代理級に就職することが相次いでおり、待遇も年々悪くなっているとか。三星(サムスン)グループは昨年はじめて、司法研修院出身の5人を公開採用したが、150人も志願して、競争率が30対1にまで上ったとか。彼らへの待遇は、初任の課長級だったが、三星は今年からは代理級で、司法研修院の修了者を募集しているとのこと。LG化学や(株)SKなどに就職する司法研修院出身も代理級とか。さらにウリィ銀行の今年上半期(1~6月)の新入行員の採用には公認会計士や税理士が103人も応募したが、最終合格者はわずか4人で、彼ら同士の競争率だけでも約26対1に上っているとか。その4人にはすべて第一線の支店に辞令が出たとのこと。LG化学副社長(HR部門長)は、「資格証を持っていることと、業務をうまくこなすこととは別の問題」とし、「彼らに所定の資格証手当てを支払う以外は、同じ職級の一般社員と同様の線上で業務能力を評価している」述べたと記事は伝える。


「庶民を守り続けた気骨の」判事

2006年12月10日 | Weblog
今日の新聞各紙に、明日発売の週刊ポストの広告が掲載されていますが、その中に「庶民を守り続けた気骨な大阪高裁判事はなぜ死んだのか」という見出しの記事があります。
記事の中身は読んでみなければ分かりませんが、見出しでこのように表されることからも、竹中判事の人柄が偲ばれます。(チェックメイト)

良心的な,あまりにも良心的な裁判官

2006年12月09日 | Weblog
長年の親しい友であった竹中さんが亡くなって一週間,その突然の死にまだ心の整理がつかない。奥様やご子息達のお悲しみはなおいかばかりかと思われる。
 彼には「良心的」という言葉が一番相応しい。裁判に対する誠実で一途な取り組み,身を削り心をとぎすませて判決に臨む,その完璧さを求める姿勢に緩む時はなかった。大きな判決に向かった緊張の糸は,その完璧主義の故に,言い渡し後も,心休ませないまま,何かの拍子で永遠の安らぎへと誘ってしまったのか。
 高裁裁判長は,誰もすさまじい激務の中で,文字通り身を削る毎日と聞いている。事件処理の数に追われる日常は,言わず語らず競争の中にあるのだが,決して弱音を吐かず,黙々と記録と判決に向かうばかり。その姿はまことに孤独である。
 竹中さんの近くにいる友人の一人でありながら,その心の内を聞かせて貰って緊張を解きほぐし,慰めと励ましが与えられなかった自分が悔まれてならない。
(伊東武是)

裁判を装う振り込め詐欺に御注意

2006年12月08日 | Weblog
毎日新聞の今月7日朝刊に「振り込め詐欺」の特集記事が掲載されていました。
「民事管理事務局」という公的機関を装い「民事訴訟特別通達書」と題した葉書を郵送して計100万円を振り込ませた詐欺グループが、今月6日に逮捕されたそうです。民事訴訟名目の振り込め詐欺の摘発は全国で初めてだったとのこと。
皆様ご注意下さい。不審に思われたら、本物の裁判所や弁護士会、警察署等に御相談を。(チェックメイト)

回文「裁判心配さ」

2006年12月07日 | Weblog
週刊ポストに「弘兼憲史の回文塾」というコーナーがあります。
去る10月20日号の塾長の作品に、こんなのがありました。

「長引く裁判心配さクビかな?」

私がショックを受けたのは、この回文の意味は、裁判が長引いたために依頼者から解任されそうだと心配をしている弁護士の独り言だとして、解説とイラストが掲載されていた事です。
最近はそんな理由で弁護士が解任される例が珍しくなくなったのでしょうか。確かに、理由不明の辞任が目立って来た印象は受けていますが。そうだとすると、弁護士も厳しくなりましたね。(チェックメイト)

竹中氏へのお悔やみなど

2006年12月06日 | Weblog
 ブログに初めて投稿します。竹中氏の自殺には本当に驚きました。ちょうど3日の日曜日に青山学院大学で行われた模擬裁判員裁判の裁判長役を終え,やれやれと思いながら新幹線でうつらうつらしていたところ,電光板ニュースで流れびっくりして眠気も一気に醒めてしまいました。まじめで暖かい人柄であるだけでなく明るい性格の方と思っていましただけに思わず「なぜなんだ」と叫んでしまいました。大判決のあとは虚脱感とともに充実感がみなぎるというような体験が私にはあっただけに,なんとも信じられないというのが正直なところです。今となっては,彼がいつも太陽のように周囲に明るい光を投げかけ続けたご業績を偲びつつ,心からご冥福を祈るばかりです。
 
 模擬裁判ですが,日本評論社がその様子を来年5月ころに発行予定のブックレットに載せるとのことですから,詳しくはそれをご覧いただきたいのですが,若干の感想を申し上げます。
最近よく話題になる危険運転致死事件について,危険運転の成否と量刑が争われたケースでした。供述調書は一切使わず,合意書面で争いのない経緯を出し,争点は証人と被告人質問で明らかにする審理でしたから,裁判員には非常に分かりやすかったと思います。そのため評議もなかなか活発でした。一部の人に発言が偏らないように,論点ごとに時間をとって白紙のメモ用紙に自分の意見をまとめてもらう(自分の手元に置いておく)というような工夫 もしてみました。両陪席はいずれも弁護士の方でしたが,抑制の利いた発言を適切にしてもらい,裁判長として助かりました。私は最終的に懲役5年の意見を述べましたが,多数決で破れ懲役4年の判決となりました。 あとから考えると4年の判決もなかなか妥当なものではなかったかと思いました。やはりいろいろな見方が出ることは良い裁判につながるといえるのでないでしょうか。
それにしても評議の主宰は大変で疲れました。評議の在り方について今後ますます精緻な議論が必要と感じた次第です。  絶壁