日本裁判官ネットワークブログ

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「再び猫を飼う」という話」(その2)

2014年01月22日 | ムサシ

7 子猫を引き取りに行ってくれた4歳の女の子は,その日家に帰って,やはり「私も猫を飼いたい。」と言ったそうである。両親が共働きであることから猫の世話ができないこと,鉄筋の建物に住んでおり,建物の構造から飼うことができないことを説明して,一応納得してはいるそうである。「いつか飼おうね。」ということらしい。少し離れてはいるが,事務員の実家では猫を何匹も飼っているそうで,時々猫に会えるのだそうであるし,「会いたくなったら,ミケちゃんに会いに来てね。」ということになっている。私は「ごめんね。」と心の中で女の子に詫びた。
8 子猫の名前をどうするか。孫達から募集しようかとも考えたが,長女と次女の孫達のそれぞれひとりずつ(各4歳)が案を出すと思われる。そうすると,名前を採用される孫と落選する孫がでることになり,可愛想ではないかということになって,結局夫婦で決めることになった。妻は私と顔を合わせるたびに,あれはどう,これはどうとうるさい。私が黙って聞いていると,「あなたには案はないの?」と怒る。私は「ミケがいい。」と言ったが,「ミケ猫にミケという名はどうかなあ」と直ちに却下されてしまった。結局妻が提案した正式名称は「クリ」,通称「クーちゃん」で決着した。その名を選んだ格別の意味はない。因みに以前に飼っていた猫の名は「ウリ」といった。
9 ウリが使っていた猫の用具類は全て捨ててしまっていた。そこで緊急に猫のトイレを買ってきた。そして心配していた最初の夜,トイレは無事成功した。爪研ぎがまだないので,座布団や畳の縁の布で爪を研いでいる。私が着替えをしていると,パジャマに飛びつくので着替えるのに難渋してしまうし,爪が痛い。メス猫であるせいなのか,着替え中の私の汚れた下着の上でころげまわっている。足元にまつわりつくので,うっかり歩くと踏みそうになってしまう。
10 家での仕事はかなり困難になっている。私が仕事をしている部屋に入りたがって,ドアやふすまをガリガリする。部屋に入れるとパソコンのキーの上を歩く。仕方がないので家ではできるだけ仕事をしないようにし,かといって全く家で仕事をしないわけにもいかないので,仕事中は心を鬼にして,絶対部屋には入れないことにした。
11 猫は15年は生きるだろう。20年生きるという説もある。私は猫より先には死なない決心をした。そうすると90歳が目標となる。そのためには安穏としてはいられないことになった。まず早急に肥満を解消しなければなるまい。飲酒量は名実ともに「酒を百薬の長」としなければならない。認知症などはとんでもない。脳の活性化,若返り策について本当の本気にならねばなるまい。
12 猫を飼う話は偶然起きたものではあるが,私の胸の中で以前から密かにその思いがあった。一時期犬を飼おうかと秘策を練ったこともあったが,踏み切れないでいた。妻は犬も好きだが,猫の方がもっと好きのようである。そして偶然の機会に私が瞬時に決断したことについては,私の深い深い願いが込められている。実はかねてから私が考えていたことが偶然実現したという話に過ぎないのである。
13 「妻よ。君は猫より先に死んでは困りますよ。もう15年か20年生きなくてはならないことになったのだから,そのつもりでいて貰いたい」。これが私が猫を飼おうと即断した真の理由である。(ムサシ)


「再び猫を飼う」という話(その1)

2014年01月22日 | ムサシ

1 再びわが家で猫を飼うことになり,数日前からわが家に住んでいる。野良猫を貰ったのである。夏目漱石を真似て,「名前はまだない。」と言いたいところであるが,名前は決まった。前に飼っていた猫が死んでから2年半,犬が死んでから1年半になる。2人の子供はどちらも結婚して関東地方に住んでおり,夫婦2人で忙しく,少し寂しく暮らしてきた。
2 甚だ急な話であった。女性事務員が野良猫の子猫を飼ってくれる人を探している人がいるという話をして,彼女のケイタイに送られてきた写真を見せてくれた。4匹いたが,そのうちの1匹がとても可愛いいミケ猫であった。その写真を見た瞬間,私が「この猫を飼います。」と即断したのである。その事務員はもとより,そばにいた妻もビックリ仰天し,「あなたどうしたの?」と聞いた。私はもう一度,「この猫を飼いたい。」と言った。猫好きの妻に異存はなく,話は即座に決まった。私がそのように瞬時に決断したことについては深い訳があるが,今は書かない。
3 事務員のご主人の友人の家の裏庭に,野良猫が4匹の子猫を生み,生後3か月である。その母猫が突然いなくなり,その友人の家で餌をやるなどの世話をしてきたというのである。事務員はすぐにご主人にメールを送り,子猫を貰う話は間もなく纏まった。片道1時間の所までわが家が貰いに行くと言ったのであるが,ある日曜日に臨時の仕事が入り,わが夫婦とその事務員が拘束されることになったため,事務員のご主人と4歳の女の子が2人で貰いに行ってくれることになった。ただ心配は,女の子が「私の家で飼いたい。」というのではないかということであった。
4 その日曜日に,丁度3人の仕事が終わったばかりの所に,事務員のご主人と女の子が,子猫をタオルケットを敷いた大き目のダンボールに入れて,事務所に持ってきてくれた。とても可愛いい猫で,ニャーニャーと元気な声で鳴いた。人によく慣れており,喉をゴロゴロと鳴らしている。
5 餌も持ってきてくれていたので,箱から出す前に,餌をやることになった。女の子は軽く箱を手で掴んでいたが,ふとみると泣き出しそうな表情で体をこわばらせている。猫はとても人慣つこくて,女の子が猫を恐れているとは思えない。私と妻は顔を見合わせた。もしかすると,「猫は私が飼いたい。」と言い出すのではないかと思ったのである。その女の子には,両親から「猫は自分の家で飼うのではなく,先生が飼うために連れてきてあげるんだよ。」と言い聞かせてあり,女の子も十分納得している筈であった。暫く女の子の沈黙が続いたあとで,猫を箱から出してやり,女の子の手のひらにのせた固形餌を猫に食べさせることに成功した。女の子は「食べた,食べた!」と大きな声で嬉しそうに言ってニコニコとした。猫は事務所の中を走り回ったり,応接机の椅子の下に潜り込んだりして,女の子が追いかけていた。私は何枚もデジカメで写真を写した。
6 おそらく女の子は子猫が可愛くて,家に連れて帰りたいという思いと格闘していたのではないかと思った。事務所の1階の駐車場で,私が子猫を車に乗せて帰ろうとしたとき,女の子は大きな声で,何度も何度も「さようなら,さようなら」と叫んで見送ってくれた。以前このブログの「デブの効用」という一文の中で書いた,私とお相撲を取ってくれた女の子である。かくして子猫はわが家の住人となった。(ムサシ)