日本裁判官ネットワークブログ

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お久しぶりです。子鉄です。

2014年01月03日 | 

明けましておめでとうございます。久しぶりの「花」改め「子鉄」です。
先代の「花」が老衰のため彼岸に逝ってしまったため,跡目に就任した柴犬の名前が「子鉄」となりました。名前の由来は知る人ぞ知る漫画「じゃりン子チエ」の日本語をしゃべりめっぽうけんかに強い猫の名前です。
しかし,実際の「子鉄」は飼い主に似て,至って臆病,無口な性格です。どうぞよろしくお願い致します。

さて,皆さんは,黒木亮という小説家の書いた「法服の王国」(産経新聞出版)という本をすでに読まれたでしょうか。

裁判所や裁判官の実態に関心がある方にはお勧めしたい本です。

この本は,原発訴訟に関与した人々,特に弁護士,裁判官を軸に話しを進めながら,昭和43年以降現在までに,裁判所に起こった実に様々な出来事,事件,たとえば長沼ナイキ事件,平賀書簡問題,青法協問題,宮本判事補再任拒否問題,全国裁判官懇話会の活動,行政事件をめぐる担当裁判官中央協議会問題,最高裁人事局の実態,原発運転停止判決に至る過程,司法改革をめぐる最高裁内部の暗闘等を,虚実織り交ぜながら,最後まで飽きさせずに描ききっています。

私が感心するのは,法律専門家ではない作者が,いくら多量の資料(巻末の参考資料には日本裁判官ネットワークの2冊の本も含まれています。)を読み込み,多数の人から取材したとしても,よくここまで裁判所と裁判官の雰囲気を正確に書けたものだ,という点です。

部外者が内部の実態を小説にする場合には,面白くなる反面,的外れがよくあるものですが,この本にはそのような部類の記述は見当たりませんでした。

私が裁判官になったのが昭和43年で,この本の描いている時代とほとんど重なることの思い入れを差し引いても,いろいろな出来事にまつわるその当時の裁判所の雰囲気,裁判官の思いや動きなどは,私の体験に照らしてほぼ正確といえます。

これまで司法の危機や司法改革にはあまり関心を寄せなかった人からも,この本は面白かったと感想を聞くと,改めて事実の持つ重みと迫力を知らされます。

まだ読まれていない方には是非是非お勧めしたい一冊です。

付録
事実の持つ重みと迫力では,木谷明著「無罪を見抜く」(岩波書店)もなかなかのものがありますよ。