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「脳トレ研究のその後」(その1)

2014年01月04日 | ムサシ

1 脳の老化ないし認知症防止は意図的な努力で可能であるかどうかというのが現在の私の問題意識である。今はまだ自分では正常だと思っているが,このままではいつかひどくボケるのではないかという不安がある。死を迎えるまで,できれば脳はかくしゃくとしていてほしい。脳の老化防止に関する本は何冊も買って読んだが,顕著に効果的な脳の老化防止策はないようである。だが努力すればある程度可能であるとも書いてある。
2 現在わが国の認知症患者は約460万人(65歳以上の15パーセント),その予備軍である軽度認知障害患者(MCI,Mild Cognitive Impairment)は約400万人だということである。認知証になると自分がボケているとか,物忘れがひどいという自覚がなくなるが,MCIの人はその自覚があるというのである。認知症の主要な原因はアミロイドβ(ベータ)蛋白質が脳に溜まる結果,脳神経細胞が破壊されることにより発症する(アルツハイマー)というのであるが,認知症は突然発症するものではないらしい。例えば80歳で認知証を発症した人であれば,40歳から50歳ころにアミロイドβが脳に蓄積し始め,認知症がじわじわと忍び寄り,75歳くらいのときに「物忘れ」として症状が出始め,約5年後に生活に支障を生ずる状態になるというのである。
3 物忘れがひどくなり,おかしいと思う期間は誰でも5年くらいはあるそうであるが,それは加齢によるものとは異なり,周囲も気付くようになるというのである。ただ加齢とは異なるという説明では甚だ分かりにくい。またアミロイドβは全ての人に蓄積するのか,遺伝的に蓄積しない人がいるのかについても,私はまだ解答を見つけていない。人はみんな年を取ると認知症になるのであろうか。百歳を超えてもかくしゃくとしている人は決して少なくないような気がする。とにかく5年くらいの間にあれよあれよという間に認知症へと進行するというのであるから,怖い話である。人の名前がすぐ出て来ないことは日常的によく経験することであり,これも記憶力の低下が原因であるが,どの程度になるとMCIということになるのであろうか。
4 脳ドックで検査を受けると,MCIの診断方法として次のようにするらしい。まず25のキーワードが含まれた物語を読み聞かせ,直後にその内容を話させるのである。その後別の話をして30分後にまた同じ物語を話させるというのである。どちらもキーワード10個以上出てくることが合格ラインだそうである。
5 基本的には脳が萎縮するのだそうであるが,脳の萎縮や血流障害はMRIなどの機械で検査できる。また別の方法でアミロイドβの蓄積について検査できるが,健康保険の適用はなく,40万円程度を要するうえ,検査できても根治できる治療法はないということなので,高額の検査料を支払って検査する意味がどの程度あるかは疑問であろう。
6 厚労省が出している認知症予防・支援マニュアルでは,認知症の主要原因として脳血管障害を挙げ,それを防止すべきであるとしており,その危険要因として,運動不足,肥満,食塩の摂取過多,飲酒,喫煙,高血圧症,高脂血症,糖尿病,心疾患などを挙げている。そうすると結局脳の老化防止の特別効果的な対策はなく,一般的な健康法の強化こそが最も効果的な対策だということになる。しかしそんなことで本当にボケない老後を過ごせるものだろうか。それでもなおボケない脳トレーニングの秘策はないものか。その秘策を考えてみようというのであるから,いささか難題のような気もする。(ムサシ)