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 いわゆる「パートタイム裁判官」(弁護士が特定の日だけ裁判官を務める制度)は、私が弁護士になった16年前に、日弁連の司法改革の議論の中で出てはいたが、夢幻の制度に近い感覚であった。しかし、司法改革の動きの中で、民事調停官・家事調停官として実現し、既に相当数の弁護士が活躍していて、そのエピソードは「自由と正義」の「弁護士任官の窓」というコーナーで紹介されている。ただ、制度の立て付け上、基本的に調停を主宰するだけであり、従来の裁判官以上に調停に主体的に関わることは可能としても、家事審判法23条、同24条等の一部の例外を除いて審判(家事事件での判決に当たるもの)が書けるわけではないので、判断者としての醍醐味を味わうには物足りない面があったことは否め無い。

 しかし、来年1月施行の家事事件手続法によって、家事調停官の仕事の魅力・やり甲斐が大きく広がる可能性が出てきた。家事審判法24条の調停に代わる審判という制度は、家事調停官でも審判ができる数少ない場面だが、その活用できる範囲は狭く、乙類事件という家事事件の中でも中心的な部分では使えない制度だった。しかし、新法284条以下で新たに規定された調停に代わる審判は、その範囲を大きく拡大し、別表第2事件(乙類事件にほぼ相当)全般で活用が可能になった。この審判は、当事者が異議を申し立てると効力を失ってしまうので、その点は弱い制度ではあるのだが、労働審判が確定する確率が高いことなども考えれば、その活用によって審判による早期解決の余地が大いに広がる可能性が出てきた。具体的には、当事者側の事情でごく細部の詰めが合意できない事件で、家庭裁判所が審判を出すことで異議が出ずに解決するような局面が考えられる。

 この制度の活用いかんによって、家事調停官に魅力を感じて任官してくれる人、更にはそれをステップに本格的な弁護士任官を志す人が増えてくれれば幸いである。

                                                              (くまちん)



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