日本裁判官ネットワークブログ
日本裁判官ネットワークのブログです。
ホームページhttp://www.j-j-n.com/も御覧下さい。
 



 お久しぶりです。情けないことになにか目前のことばかりに追われて,ついご無沙汰しておりました。
 さて最近読んだ本に「ダンゴ虫に心はあるのか」があります。奇抜な題名に惹かれて買ったのですが,ダンゴ虫に想定外の障害を,たとえば水に囲まれた板の上に置くとか,複雑な迷路に置くとかすると,ダンゴ虫のうち一部は水に飛び込んだり,高いところによじ登ったりという,ダンゴ虫にとって生死にかかわるよう決死的行動にでる,という実験結果から,そのような行動をとることは通常のダンゴ虫の生活では抑制され,表面化しないが,想定外の環境に置かれると,そのような普段は表面化しない,ある意味で理解しがたい行動を決断する場合があり,それがダンゴ虫の心といえるのではないか,という内容でした
 心の意味をそのように定義してしまうことには大変疑問を持ちました。
 ところが相前後して,供述心理学の権威・浜田寿美男氏の「自白の研究」という著書を読み,重大事件について虚偽自白をしてしまった被疑者は,そうでなくても非日常的な拘禁状態の中で,さらに取調官から強く自白を迫られ,自分の弁解を信用してもらえない絶望感や家族等を守りたいなどの気持ちでいったん自白すると,その後はいろいろな情報をもとにストーリーを取調官とともに作りあげることがあるのではないか,との心理学的分析があることを知りました。
 人間も非日常的な異常な環境に置かれ,そこから脱却できない絶望感を感じると,普段は考えられない行動,すなわち虚偽のストーリーを捜査官との協働により作りあげる,というような行動に出ることがひょっとするとあるのかも知れない,と両書籍に奇妙な符合を感じた次第です。
                    
                                   心について研究中の「花」



コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )