日本裁判官ネットワークブログ
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 先日このブログに書いた「メディア・アンビシャス」に入会し,そのメーリングリスト上で色んな情報を提供されることもあって,ドキュメンタリー番組を視聴する機会が増えた。中でも日曜日夜10時からNHK教育テレビで放送されている「ETV特集」は極めて良質な番組を作り続けている。
 今月7日に放送された「あるダムの履歴書」は,北海道のアイヌ民族の聖地に作られた二風谷ダム問題を長年追い続けた作品で,深い感銘を受けた。大量の土砂を堆積させるダムの根源的な問題,ダム建設に関して小自治体が国や北海道開発局に依存せざるを得ない実態,行政の審議会の実態,アイヌ民族差別の実態,森林の荒廃の問題,色んな問題が重奏的に決して告発調に過ぎることも,晦渋になることもなく描かれている点が素晴らしいと思った。ダム用地収用に対して現地で抗議が行われる91年は,私が判事補として北海道に赴任した年であり,ダムを違法とする札幌地裁判決は,私が裁判官を辞めて北海道で弁護士をはじめる直前のタイミングだった。私の同時代史と重なったところに,流れる時間軸の重さをそうした意味で実感し得たところに,重い感銘が残った。
 今週14日の夜は同じ枠で「裁判員へ 元死刑囚・免田栄の旅」が放送される。
 http://www.nhk.or.jp/etv21c/update/2010/0214.html
 免田さんに関しては,ご紹介するまでもない。80歳を超えられた今も精力的な講演活動を続けておられ,上記ホームページを見る限りでは,足利事件の菅家さんとの対話もされているようだ。最近も熊本日日新聞社編「検証・免田事件」の新版が,現代人文社から刊行されており,そこではまさに「メディアリテラシー」の問題にも触れられている。熊本・人吉市民の中には未だに免田さんを犯人視する意識が残っていることを示したアンケート結果も収録されている。
 免田さんから,将来の裁判員候補の皆さんにどのようなメッセージが発せられるのか,注視したい。
(くまちん)


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